上 下
143 / 175

救助

しおりを挟む
 辺りに木々の燃える臭いが立ち込めている。プリシラは我慢できずに大声で叫んだ。

「チコ!サラ!プッチ!ティア!」

 頭上に煙の柱が登っている。あの下にチコたちがいるはずだ。プリシラは力のかぎり走った。森の木々を抜けると平地だった。そこには六人のローブを着た男たちと、プリシラたちが探し求めていた人たちがいた。チコとサラだ。チコとサラを守るようにミニチュアダックスのティアが彼女たちの前にいた。プッチはチコの肩に乗っているのだろう。

「皆!無事?!」

 チコとサラがプリシラを振り向いた。彼女たちは泣き出しそうな笑顔になった。六人のローブを着た魔法使いは、プリシラたちに気づき、攻撃魔法を放った。

「タップ!風防御魔法!」
『はいよ!』

 プリシラたちに氷の刃が当たる直前、見えない壁によってはばまれた。タップの風防御魔法は強力で、魔力を制限されているようには見えなかった。プリシラはチコとサラに駆け寄った。

「あーん、プリシラ!怖かったよぉ」
「プリシラ、タップ。ありがとう」

 チコとサラが泣きながらプリシラに抱きついた。プリシラは彼女たちの無事を確認した安どから、目の前の魔法使いたちに視線をうつし怒りが湧いた。プリシラはチコたちの前に立つと、大声で言った。

「あなた達は何故、私の友達を傷つけようとするのですか?!」

 六人の魔法使いの一人が口を開いた。どうやらこの一団のリーダー格のようだ。

「先ほどの魔法は霊獣の力を借りたものだな。貴様は魔力の弱い無力な娘だ。魔力の強い乙女はどこにいる?」

 魔法使いのリーダーは、プリシラの質問には答えず、質問をぶつけてきた。プリシラが魔法使いたちをにらみながらいぶかしんでいると、サラがおずおずとプリシラに囁いた。

「プリシラ、あのね。魔法使いたちは魔力の強い女の子を探しているんだって。私たちをこのドームの中に閉じ込めて、言ったの。魔力の強い乙女を差し出せば命は助けてやるって」
「それでね、私たち、怖くて言っちゃったのよ。プリシラのお姉さんの事を」

 プリシラの姉エスメラルダは確かに、他の追随を許さない優秀な魔女だ。この魔法使いたちはなぜ魔力の強い娘を探しているのだろうか。プリシラはさぐりを入れるために言った。

「この子たちが言っている人物は私の姉です。貴方たちはなぜ姉を連れて来いというのですか?」
「魔力の弱い人間は知らなくてよい事だ。早くその姉を呼べ」

 魔法使いのリーダーは取りつく島もなかった。魔力の弱い人間を見下す目。プリシラはこの目をする両親にいつも怯えていた。

 だがプリシラはもう小さな子供ではない。魔力の強さ弱さなどで、その人間を評価するのは愚かな事だと知っている。プリシラはしっかりとした声で言った。

「ええ、わかったわ。でもこの結界内では通信魔法具が使えないわ?」

 魔法使いのリーダーは、しばらく考えるそぶりをしてから、右手をサッとあけた。すると上空をおおっていたドームが消えていった。

 どうやらドームを形成していたのは後ろの五人の魔法使いのようだ。

 プリシラの背後にいるサラが震える声で言った。

「ごめんなさい、プリシラ。私たちのせいでお姉さんを危険な目にあわせてしまって」

 プリシラはサラに視線だけ向けて小声で言った。

「いいえ。お姉ちゃんは呼ばないわ」

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最初から私を殺す気だったんですね...

真理亜
恋愛
ルージュ・バレンタイン公爵令嬢は婚約者である王太子ロベルト・シュタイナーから婚約破棄を告げられる。その傍らにはここ最近、ロベルトのお気に入りの男爵令嬢マリアンヌの姿があった。理由は嫉妬に駆られてマリアンヌを虐めたからだと言う。ルージュに身に覚えはなく冤罪なのだが、ロベルトはそんなことはどうでも良く、それは単なるきっかけに過ぎず、ロベルトに最初から婚約破棄した後に殺す気だったと言われた。あまりにも勝手過ぎるロベルトの言い分に抗議しようとするルージュだったが、それより先にルージュの援護に回ったのは..

スキル「緊急回避」で無敵スローライフ

あるまん
ファンタジー
 「わりかしスローライフ、わりかしハーレム、わりかしどうなるかわからない」  異世界転生した主人公・アヤカート。スローライフを目指そうと選んだ危険を回避する能力「緊急回避」……実は攻撃も移動も出来る万能スキルだった?  黒髪ショートの活発娘、合法のじゃロリ白狼人族、公爵令嬢で魔法使いなお嬢様、皆でラブラブエッチに大冒険♪  ※大体週2回更新です。  第一部完結いたしました♪皆様応援ありがとうございます♪  第二部開始いたしました!!

えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?

真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。

究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平
ファンタジー
 パティは教会に捨てられた少女。パティは村では珍しい黒い髪と黒い瞳だったため、村人からは忌子といわれ、孤独な生活をおくっていた。この世界では十歳になると、神さまから一つだけ魔法を授かる事ができる。パティは神さまに願った。ずっと側にいてくれる友達をくださいと。  神さまが与えてくれた友達は、犬、猫、インコ、カメだった。友達は魔法でパティのお願いを何でも叶えてくれた。  パティは友達と一緒に冒険の旅に出た。パティの生活環境は激変した。パティは究極の妹属性だったのだ。冒険者協会の美人受付嬢と美女の女剣士が、どっちがパティの姉にふさわしいかケンカするし、永遠の美少女にも気に入られてしまう。  ぼっち少女の愛されまくりな旅が始まる。    

殿下、人違いです。殿下の婚約者はその人ではありません

真理亜
ファンタジー
第二王子のマリウスが学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付けた相手は人違いだった。では一体自分の婚約者は誰なのか? 困惑するマリウスに「殿下の婚約者は私です」と名乗り出たのは、目も眩まんばかりの美少女ミランダだった。いっぺんに一目惚れしたマリウスは、慌てて婚約破棄を無かったことにしようとするが...

クラス転移で追放された俺はスキル『ぎじんか』を使って楽園を造りあげる!!え?魔王討伐?そんなの知るか!!

蒼色ノ狐
ファンタジー
※この作品は「カクヨム」にて投稿されているモノと同じです。 突如クラス全員が異世界『ルーンベル』に転移される。 そして召喚した『ルーンベル』の王国の一つ、『グリムガル』の王は皆に魔王討伐を命じる。 代わりに一人に一つ『スキル』をランダムに与えると言う。 拒否権などある訳もなく皆が『スキル』を与えられる中ぼっちの男子高校生『葉山 与人』は謎の『スキル』である『ぎじんか』を与えられる。 使い道の分からない『スキル』をもった与人をクラスメイトは『スキル』を使い何処かへと追放する。 その先で『ぎじんか』の使い方を覚えた与人は決心をする。 「どうせ追放されたんならこの『スキル』を使って思う存分楽しく生きてやる!!」 果たして彼は本当に楽園を造り上げる事は出来るのか? 迫り来る困難に男子高校生がドラゴンなどを始めとしたモンスターや聖剣などの非生物な擬人化ヒロインと共に乗り越えていく話です。 こんな感じのタイトルですが話はシリアス方面に寄るかも知れません。 出てくる擬人化ヒロインは十を軽く越える予定です。 皆さん是非見にいらしてください。 21話までは5,000文字ほどですが、それ以降は2,500文字ほどです。

100倍スキルでスローライフは無理でした

ふれっく
ファンタジー
ある日、SNSで話題に上がっていた [ Liberty hope online ] 通称リバホプと呼ばれているMMORPGのオンラインゲームが正式にサービスを開始した。 そのプレイヤーの一人である月島裕斗は、誰も倒す事が出来なかった期間限定のボスモンスターに挑み続け、長期にわたる激戦の末に勝利する。しかしその直後、過度な疲労によって深い眠りへと落ちてしまった。 次に目を覚ますと、そこは見知らぬ世界。さらにはゲームで使っていたアバターの身体になっていたり、桁違いなステータスやらおかしなスキルまで……。 これは、 美少女として異世界に転生した彼(?)のほのぼのとした日常……ではなく、規格外な力によって様々な出来事に巻き込まれる物語である。 ※表紙イラストはテナ様より。使用、転載の許可は事前に得ています。

激レア種族に転生してみた(笑)

小桃
ファンタジー
平凡な女子高生【下御陵 美里】が異世界へ転生する事になった。  せっかく転生するなら勇者?聖女?大賢者?いやいや職種よりも激レア種族を選んでみたいよね!楽しい異世界転生ライフを楽しむぞ〜 【異世界転生 幼女編】  異世界転生を果たしたアリス.フェリシア 。 「えっと…転生先は森!?」  女神のうっかりミスで、家とか家族的な者に囲まれて裕福な生活を送るなんていうテンプレート的な物なんか全く無かった……  生まれたばかり身一つで森に放置……アリスはそんな過酷な状況で転生生活を開始する事になったのだった……アリスは無事に生き残れるのか?

処理中です...