最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる

プリシラの友達

　ある日リベリオはプリシラに呼び出された。リベリオはプリシラに、友情の証として、通信魔法具の指輪をプレゼントした。

　プリシラは恐ろしい姉のエスメラルダからもらった、サファイアのペンダントの通信魔法具を身につけている。サファイアの通信魔法具にリベリオの魔力を吹き込んで、リベリオと共用で通信魔法具として使う事もできるが、サファイアのペンダントにリベリオの魔力が入っている事にエスメラルダが気づけば激怒するはずた。

　それにリベリオは、ずっとプリシラに贈り物がしたかったのだ。友達という間柄になって、初めてプリシラは指輪を受け取ってくれた。ゴールドの指輪にアクアマリンの宝石が入っている。

　本当は左手の薬指につけてほしかったが、それはまだ早いので、左手の小指につけてもらった。リベリオもおそろいの指輪を左手の小指につけている。

　リベリオがアクアマリンの指輪に話しかければ、プリシラが返事をしてくれるはずだ。だが、リベリオが通信魔法具の指輪に話しかけて、プリシラが忙しかったら、迷惑かもしれないと思うと、自分から連絡する事ができなかった。

　そんな時にプリシラから連絡があったのだ。リベリオは天にも昇る気持ちではせさんじた。もしかしたらデートの誘いだろうか。

　リベリオは友達になりたいと言ったが、本心ではプリシラの恋人になりたいのだ。プリシラも本当は、リベリオの気持ちに気づいてくれているのではないか。そんな気持ちで、空間魔法でプリシラに会いに行くと、自分の考えが間違いだとすぐに理解した。

　ニコニコと笑うプリシラのとなりには二人の女の子がいた。二人はプリシラの親友だという。何の事はない、リベリオは友達の食事会に呼ばれただけだった。

　プリシラの友達はチコとサラと言った。チコは鼻の上にそばかすのある小柄な女の子で、サラは真面目そうな女の子だった。

　食堂の外にあるテラス席に座り、料理が運ばれてきてから、リベリオが自己紹介をすると、チコが顔を乗り出して叫んだ。

「ええ？！リベリオさんって伯爵さまなの？ねぇねぇ！イケメンの貴族紹介して？！」

　チコの性格に、リベリオは少なからず驚いた。チコとサラも、プリシラと同じ召喚士だという。リベリオの知識では、召喚士とはとても心の綺麗な人間がなれるものだと思っていた。そう、リベリオの愛してやまないプリシラのような人だと。

　チコは何というか、俗物的で召喚士らしくなかった。サラはイケメンイケメンとうるさいチコを無理矢理座らせてから、厳しい表情で言った。

「リベリオさん。それで、うちのプリシラとはどう言う関係なんですか？」

　まるで娘が初めて連れてきたボーイフレンドを値ぶみするような視線だ。プリシラがニコニコ笑いながら言った。

「サラ、こないだ言ったじゃないリベリオはお友達なのよ？」

　サラはプリシラににこやかな笑顔を向けてから、キッととなりに座るリベリオをにらんだ。リベリオはうわずった声で言った。

「お義母さ、じゃなかった。サラさん、俺はプリシラと真剣に友達付き合いをしているんです」
「そう。時にリベリオさん、貴方恋人はいらっしゃるの？」
「リベリオは恋人たくさんいるものね？」

　空気の読めないプリシラがニコニコと発言した。

「ヒィッ。プリシラ、前にちゃんと言ったじゃないか。俺はこれまで付き合った女の子たちと和解して別れたって」

　プリシラは、そういえばそうだったわね。と、特に気にした様子もなかった。サラがギロリとリベリオをにらみ、地をはうような低い声で言った。

「そのようなふしだらな男が、うちのプリシラの友達だと？」
「お義母さ、じゃない、サラさん！俺は今後一切、プリシラ以外の女の子とは友達になりません！」

　サラは疑わしそうな目でリベリオをにらんだ。チコはこの状況を理解したうえでニヤニヤと笑っている。テーブルの上では、ネズミと犬と小人が果物をむさぼり食べている。リベリオはここから早く帰りたかった。