127 / 175
急展開
しおりを挟む
マージとガイオはスキーラ子爵の屋敷の地下にある牢屋に入れられた。ガイオは呪いの首輪の呪文を唱えなければけろりとしていた。
例の魔法使いは、牢屋の外で、ギロリとガイオをにらんでいる。ガイオは魔法使いを完全に無視して、痛ましそうにマージの顔を見て言った。
「すまなかった、マージ。俺のせいでひどい目にあわせてしまって」
ガイオの心配顔を見ると、大柄な男に叩かれた頬が相当腫れているのだろう。マージは痛む顔で無理に笑って言った。
「大丈夫よ、これくらいたいした事ないわ」
「エレナだったらそんな傷すぐに治せるんだがな」
「へぇ。ガイオの娘さんは本当にすごいんだねぇ」
「ああ、俺の娘にしては、美人で気立てもいいんだ。きっと女房に似たんだな!」
ガイオは娘の事をたくさん話してくれた。マージも甥のトビーの事を話した。話していないと恐怖で震えてしまいそうだったからだ。
マージはとても怖かった。これから自分はどうなってしまうのだろうか。無事にここから出て、再びトビーに会えるのだろうか。
トビー。マージがこの世で一番大切な可愛いトビー。早くトビーに会いたかった。
魔法使いはガイオがおとなしくしているのを確認したようだ。二人のガラの悪い部下に何か言って、牢屋から離れてしまった。
ガイオはしばらく雑談を続けてから、ゆっくりと立ち上がった。牢屋の鉄格子に寄りかかって、見張りの男たちに声をかけた。
「なぁ、あのクソチビの魔法使いはどこに行ったんだよ」
「スキーラさまに報告に行ったんだよ。おとなしくしてろ」
「ふうん。そう、」
ガイオはそう呟くと、おもむろに両手で鉄格子を掴んだかと思うと、驚いた事に鉄格子を素手でひん曲げてしまった。
「貴様!何をする!」
驚いた二人の見張りはガイオを取り押さえようとするが、ガイオは瞬時に二人の見張りを手刀を入れて昏倒させてしまった。
一連の行動を、マージは口を開けて見ていた。ガイオがマージに手を差しのべて言った。
「マージ、逃げるぞ!」
スキーラ子爵の地下道は、まるで迷路のようだった。ガイオは地下道の順路を知っているようで、スタスタと進んでいる。ガイオは正面をにらみながらマージに言った。
「マージ。これからお前を、この屋敷から逃す。会社には戻らないで、どこか安全な場所に隠れていてくれないか?」
「ええ、わかったわ。でもガイオはどうするの?」
「俺は、城下町の中に隠れる」
マージはわかったとうなずいた。しばらく地下道を歩くと、反響する誰かの声が聞こえた。最初はスキーラ子爵の部下たちの声かと思って身がまえたが、よくよく耳をすますと、高い子供の声のようだった。その声は、お父さんと呼んでいた。
例の魔法使いは、牢屋の外で、ギロリとガイオをにらんでいる。ガイオは魔法使いを完全に無視して、痛ましそうにマージの顔を見て言った。
「すまなかった、マージ。俺のせいでひどい目にあわせてしまって」
ガイオの心配顔を見ると、大柄な男に叩かれた頬が相当腫れているのだろう。マージは痛む顔で無理に笑って言った。
「大丈夫よ、これくらいたいした事ないわ」
「エレナだったらそんな傷すぐに治せるんだがな」
「へぇ。ガイオの娘さんは本当にすごいんだねぇ」
「ああ、俺の娘にしては、美人で気立てもいいんだ。きっと女房に似たんだな!」
ガイオは娘の事をたくさん話してくれた。マージも甥のトビーの事を話した。話していないと恐怖で震えてしまいそうだったからだ。
マージはとても怖かった。これから自分はどうなってしまうのだろうか。無事にここから出て、再びトビーに会えるのだろうか。
トビー。マージがこの世で一番大切な可愛いトビー。早くトビーに会いたかった。
魔法使いはガイオがおとなしくしているのを確認したようだ。二人のガラの悪い部下に何か言って、牢屋から離れてしまった。
ガイオはしばらく雑談を続けてから、ゆっくりと立ち上がった。牢屋の鉄格子に寄りかかって、見張りの男たちに声をかけた。
「なぁ、あのクソチビの魔法使いはどこに行ったんだよ」
「スキーラさまに報告に行ったんだよ。おとなしくしてろ」
「ふうん。そう、」
ガイオはそう呟くと、おもむろに両手で鉄格子を掴んだかと思うと、驚いた事に鉄格子を素手でひん曲げてしまった。
「貴様!何をする!」
驚いた二人の見張りはガイオを取り押さえようとするが、ガイオは瞬時に二人の見張りを手刀を入れて昏倒させてしまった。
一連の行動を、マージは口を開けて見ていた。ガイオがマージに手を差しのべて言った。
「マージ、逃げるぞ!」
スキーラ子爵の地下道は、まるで迷路のようだった。ガイオは地下道の順路を知っているようで、スタスタと進んでいる。ガイオは正面をにらみながらマージに言った。
「マージ。これからお前を、この屋敷から逃す。会社には戻らないで、どこか安全な場所に隠れていてくれないか?」
「ええ、わかったわ。でもガイオはどうするの?」
「俺は、城下町の中に隠れる」
マージはわかったとうなずいた。しばらく地下道を歩くと、反響する誰かの声が聞こえた。最初はスキーラ子爵の部下たちの声かと思って身がまえたが、よくよく耳をすますと、高い子供の声のようだった。その声は、お父さんと呼んでいた。
0
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
やり直し令嬢の備忘録
西藤島 みや
ファンタジー
レイノルズの悪魔、アイリス・マリアンナ・レイノルズは、皇太子クロードの婚約者レミを拐かし、暴漢に襲わせた罪で塔に幽閉され、呪詛を吐いて死んだ……しかし、その呪詛が余りに強かったのか、10年前へと再び蘇ってしまう。
これを好機に、今度こそレミを追い落とそうと誓うアイリスだが、前とはずいぶん違ってしまい……
王道悪役令嬢もの、どこかで見たようなテンプレ展開です。ちょこちょこ過去アイリスの残酷描写があります。
また、外伝は、ざまあされたレミ嬢視点となりますので、お好みにならないかたは、ご注意のほど、お願いします。
魔法適性ゼロと無能認定済みのわたしですが、『可視の魔眼』で最強の魔法少女を目指します!~妹と御三家令嬢がわたしを放そうとしない件について~
白藍まこと
ファンタジー
わたし、エメ・フラヴィニー15歳はとある理由をきっかけに魔法士を目指すことに。
最高峰と謳われるアルマン魔法学園に入学しましたが、成績は何とビリ。
しかも、魔法適性ゼロで無能呼ばわりされる始末です……。
競争意識の高いクラスでは馴染めず、早々にぼっちに。
それでも負けじと努力を続け、魔力を見通す『可視の魔眼』の力も相まって徐々に皆に認められていきます。
あれ、でも気付けば女の子がわたしの周りを囲むようになっているのは気のせいですか……?
※他サイトでも掲載中です。
前世は大聖女でした。今世では普通の令嬢として泣き虫騎士と幸せな結婚をしたい!
月(ユエ)/久瀬まりか
ファンタジー
伯爵令嬢アイリス・ホールデンには前世の記憶があった。ロラン王国伝説の大聖女、アデリンだった記憶が。三歳の時にそれを思い出して以来、聖女のオーラを消して生きることに全力を注いでいた。だって、聖女だとバレたら恋も出来ない一生を再び送ることになるんだもの!
一目惚れしたエドガーと婚約を取り付け、あとは来年結婚式を挙げるだけ。そんな時、魔物討伐に出発するエドガーに加護を与えたことから聖女だということがバレてしまい、、、。
今度こそキスから先を知りたいアイリスの願いは叶うのだろうか?
※第14回ファンタジー大賞エントリー中。投票、よろしくお願いいたします!!
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!
カエデネコ
ファンタジー
日本のとある旅館の跡継ぎ娘として育てられた前世を活かして転生先でも作りたい最高の温泉地!
恋に仕事に事件に忙しい!
カクヨムの方でも「カエデネコ」でメイン活動してます。カクヨムの方が更新が早いです。よろしければそちらもお願いしますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる