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崩壊

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 ベルニ子爵はうなり声をあげて黙った。はたして本当にそうなのだろうか。プリシラの親権を主張する事はできないのだろうか。

 いいや、プリシラは確かに妻が産んだ娘だ。召喚士養成学校に入学させた事実が無くても、ベルニ子爵の娘にかわりはない。しかも生まれてから十三歳まで衣食住を面倒見てやったのだ。プリシラは自分の娘だと主張してよいはずだ。

 もし召喚士養成学校の件を追求されたら、ロナルドがプリシラを誘拐したとでっち上げたってかまわない。ロナルドは平民で、ベルニ子爵は貴族なのだから、どうにでもする事ができるのだ。

 ベルニ子爵は思考がまとまると、余裕の笑みを浮かべた。エスメラルダが役に立たなければ、別な手段を考えるまでだ。

 そうこうしているうちに、社交界は終わりをむかえた。最後にウィード国王のお言葉を賜るのだ。

 ウィード国王は、国にいる貴族たちの働きをおおいに讃えた後、最後に厳しい顔になって口を開いた。

「我が娘ドリスから、聞き捨てならない事を聞いた。貴族の中に、生まれた子供の魔力が少ないといって、子供を捨てるという愚かな貴族がいると。余は娘から、その話しを聞いて憤慨した。子供とは、天より授かる賜り物だ。大切に育てなければならない。余はウィード国にいるすべての貴族の貴族年鑑を調べ直し、魔力の少ない子供を虐待、ないしは捨てるというような事実を見つけ次第、厳重に処罰する。皆、心して待つように」

 それだけ言うと、ウィード国王は席を立ち、退室した。

 ベルニ子爵はぼう然とその場に立ちつくした。妻が卒倒したのか、ベルニ子爵にもたれかかってきたが、支えてやる事すらできなかった。

「あら、お父さま。大変ですね、これでベルニ子爵はお終いかもしれませんね?」

 娘のエスメラルダがちっとも困った様子もなく、明るい声で言った。

 先ほどのパルヴィス公爵の剣幕を目にした時に気づくべきだった。パルヴィス公爵ならば、プリシラがどこの家の出か、調べる事などたやすいはずだ。きっとパルヴィス公爵夫妻はプリシラから、ベルニ子爵夫妻から捨てられた事を聞いていたのだろう。

 ベルニ子爵は判断を間違えたのだ。出来損ないの娘は次女ではなく、長女のエスメラルダだった。

 プリシラはベルニ子爵が捨てても、パルヴィス公爵の養女になり、王女と友人になり、国王からも信頼される人物になったのだ。

 プリシラは金の卵を産むめんどりだったのだ。

 ベルニ子爵は、これまで必死に築き上げてきたものが、ガラガラと崩れる音を聞いた気がした。
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