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パルヴィス公爵5
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パルヴィス公爵はいまだ決断がつきかねている表情だった。プリシラは公爵の枯れ木のような手を握りしめて言った。
「公爵さま。私は先ほど初めて奥さまにお会いしました。わずかな間、奥さまと接した私でも、奥さまが公爵さまを深く愛していらっしゃる事がわかりました。公爵はずるいです」
「・・・。何だと?」
「奥さまからばかり愛情をもらって。公爵さまも奥さまに愛情を返すべきです。奥さまは、公爵さまが他人に自分の姿を見られたくないと言えば、一人で公爵さまのお世話をかってでました。公爵さまが、奥さまに最期を看取ってほしいと願ったから、奥さまはひたすらがまんして受け入れたのですよ?」
「・・・。がまん、だと?」
「はい。奥さまは、本当はもっと公爵さまと一緒に生きたいのです。奥さまは公爵さまが元気になる手段を探したいのです。そして、公爵さまにも生きたい、と願ってほしいのです。公爵さま、元気になられたら奥さまに何をして差し上げますか?」
「・・・。ああ、サスキアと、もう一度、海を見たい。若い頃、サスキアと共に見たのだ。海に沈む夕陽の美しかった事。もう一度見ようと二人で約束したのだ」
「ええ、きっと。その時は、私とタップもお供させてください。公爵さま、人間には願いを実現させる力が備わっています。必ずできると信じれば、願いは実現します。さぁ、声に出して誓ってください。言葉には力が宿ります。心からの願いを言葉に出せば、実現するのです」
「わしは、生きる。サスキアと共に、」
プリシラは公爵の気持ちが熟したのを見てとった。小さな声でタップに言った。
「タップ、お願い」
『どうにでもなれ、チクショウ!プリシラは後ろにさがってろ。じじぃの魔法が暴発して、とばっちり食うかもしれねぇぞ?』
「タップ、お願い。このままで」
『たく、がんこ者』
タップの言葉はどこか嬉しげだった。タップが目をつむると、公爵の胸の宝石が鈍く光ったと思うと、急に宝石が浮き上がった。宝石は公爵の身体に根づいているので、公爵は弱々しく悲鳴をあげた。
ぶちぶちと肉が引きちぎれるような嫌な音が辺りに響き渡る。プリシラは必死に公爵の手を握りしめていた。
魔法石の暴走だろうか、公爵の周りにはたくさんの攻撃魔法が出現し、プリシラたちめがけて飛んできた。
だがプリシラの身には、一つも攻撃魔法は当たらなかった。タップが風防御魔法で守ってくれているのだ。
ぶちんと何かがちぎれた音がすると、公爵の胸元から噴水のように血が吹き出した。
すかさずタップが治癒魔法で胸の大きな傷口をふさぐ。公爵の身体が輝きだした。空中に浮き上がった黒い宝石は、サラサラと砂になり、消えてしまった。
「公爵さま!」
プリシラはつぶさに公爵の顔に近づいて、呼吸を確認した。弱々しいが、確かに規則正しい呼吸をしている。公爵は助かったのだ。
「タップ!ありがとう」
『まぁ、ひとまずってとこだ。このじじぃはすこぶる弱っている。これから体力を回復させなくちゃいけねぇ』
「ええ。これから公爵さまがお元気になられるまで、毎日回復魔法をしましょう。タップ、お願いできる?」
『たくよぉ、縁もゆかりもねぇじじぃによくそこまでできるよな』
「そんな事言って、タップは付き合ってくれるんでしょ?」
『仕方ねぇだろ?おせっかいのプリシラは、俺の契約者なんだから』
プリシラはとタップは顔を見合わせて笑った。
「公爵さま。私は先ほど初めて奥さまにお会いしました。わずかな間、奥さまと接した私でも、奥さまが公爵さまを深く愛していらっしゃる事がわかりました。公爵はずるいです」
「・・・。何だと?」
「奥さまからばかり愛情をもらって。公爵さまも奥さまに愛情を返すべきです。奥さまは、公爵さまが他人に自分の姿を見られたくないと言えば、一人で公爵さまのお世話をかってでました。公爵さまが、奥さまに最期を看取ってほしいと願ったから、奥さまはひたすらがまんして受け入れたのですよ?」
「・・・。がまん、だと?」
「はい。奥さまは、本当はもっと公爵さまと一緒に生きたいのです。奥さまは公爵さまが元気になる手段を探したいのです。そして、公爵さまにも生きたい、と願ってほしいのです。公爵さま、元気になられたら奥さまに何をして差し上げますか?」
「・・・。ああ、サスキアと、もう一度、海を見たい。若い頃、サスキアと共に見たのだ。海に沈む夕陽の美しかった事。もう一度見ようと二人で約束したのだ」
「ええ、きっと。その時は、私とタップもお供させてください。公爵さま、人間には願いを実現させる力が備わっています。必ずできると信じれば、願いは実現します。さぁ、声に出して誓ってください。言葉には力が宿ります。心からの願いを言葉に出せば、実現するのです」
「わしは、生きる。サスキアと共に、」
プリシラは公爵の気持ちが熟したのを見てとった。小さな声でタップに言った。
「タップ、お願い」
『どうにでもなれ、チクショウ!プリシラは後ろにさがってろ。じじぃの魔法が暴発して、とばっちり食うかもしれねぇぞ?』
「タップ、お願い。このままで」
『たく、がんこ者』
タップの言葉はどこか嬉しげだった。タップが目をつむると、公爵の胸の宝石が鈍く光ったと思うと、急に宝石が浮き上がった。宝石は公爵の身体に根づいているので、公爵は弱々しく悲鳴をあげた。
ぶちぶちと肉が引きちぎれるような嫌な音が辺りに響き渡る。プリシラは必死に公爵の手を握りしめていた。
魔法石の暴走だろうか、公爵の周りにはたくさんの攻撃魔法が出現し、プリシラたちめがけて飛んできた。
だがプリシラの身には、一つも攻撃魔法は当たらなかった。タップが風防御魔法で守ってくれているのだ。
ぶちんと何かがちぎれた音がすると、公爵の胸元から噴水のように血が吹き出した。
すかさずタップが治癒魔法で胸の大きな傷口をふさぐ。公爵の身体が輝きだした。空中に浮き上がった黒い宝石は、サラサラと砂になり、消えてしまった。
「公爵さま!」
プリシラはつぶさに公爵の顔に近づいて、呼吸を確認した。弱々しいが、確かに規則正しい呼吸をしている。公爵は助かったのだ。
「タップ!ありがとう」
『まぁ、ひとまずってとこだ。このじじぃはすこぶる弱っている。これから体力を回復させなくちゃいけねぇ』
「ええ。これから公爵さまがお元気になられるまで、毎日回復魔法をしましょう。タップ、お願いできる?」
『たくよぉ、縁もゆかりもねぇじじぃによくそこまでできるよな』
「そんな事言って、タップは付き合ってくれるんでしょ?」
『仕方ねぇだろ?おせっかいのプリシラは、俺の契約者なんだから』
プリシラはとタップは顔を見合わせて笑った。
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