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ゴンザの家族

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 ゴンザはだいぶ空を飛ぶのに慣れたのか、自分の事を話すようになった。ゴンザの妻は、機織りが得意で、妻の作った織物を定期的に城下町に売りに来ているのだそうだ。

 息子はマルコと言って、トビーよりも二つ下の十歳なのだそうだ。ゴンザが家を出る時には、とても元気で見送ってくれた。それなのに、ゴンザが城下町でいつも泊まる宿屋についた手紙には、マルコが病気になったから、早く帰って来てと書いてあったのだ。

 ゴンザは話しているうちに、だんだんと不安になってきたようで、抱きしめているトビーの腕の力が強くなった。

 トビーはゴンザの手を軽くたたいて大丈夫だと言った。

 タップはついにゴンザの家に到着した。ゴンザはタップの背中から飛び降りると、家のドアを激しく叩いた。

「ネア!俺だ!開けてくれ!」

 ドアが開くと、焦燥しきった女性が出て来た。きっとゴンザの妻なのだろう。

「遅いじゃない!マルコが大変だって時に!」

 ゴンザの妻ネアは激しく怒り出したかと思うと、シクシク泣き出した。ゴンザはネアの肩を抱くと、トビーと小さくなったタップを抱っこしたプリシラを視線で、中に入るよううながした。

 ベッドの上に小さな少年が寝ていた。激しく汗をかいていて、呼吸が荒く浅かった。ゴンザはくずれるようにベッドの側にしゃがみ込んだ。

「マルコ!マルコ!父ちゃんだぞ?」

 だがマルコは父の声かけには答えなかった。ゴンザは不安そうにネアを見た。なぜ息子がこのようになってしまったのか知りたかったからだろう。ネアは泣きながら言った。

「一週間前、マルコは友だちと遊んでいて、泣きながら帰って来た。何でもヘビに噛まれたって。その後から、どんどん具合が悪くなって。お医者さんにも来てもらったけど、傷口の消毒だけして、後はマルコの体力次第だって、」

 ネアはそれだけいうと、うめくように号泣した。ゴンザは震える手で、マルコがかけている毛布をめくると、マルコの左足は、右足の二倍以上に腫れていた。

 トビーも小さい頃から、母に言われていた。森の草深いところには入らないように、と。毒ヘビに噛まれてしまうかもしれないからだ。

 毒ヘビに噛まれた場合。安静にして毒が抜けるのを待つしかないのだ。トビーは泣き出しそうな顔でプリシラを見上げた。

 プリシラは厳しい顔でうなずくと、タップを抱いたまま、ベッドに近寄った。

「ゴンザさん。タップに息子さんを見させてくれませんか?」

 息子の汗だらけの頭を撫でていたゴンザは、ハッとして立ち上がった。プリシラはタップをマルコの腫れた足元におろした。

『どうやら、クサリヘビに噛まれたみてぇだな。まぁ大した毒じゃなさそうだ。だけど、こいつガキだから、相当体力が弱ってるな』
「タップ、この子を治せる?」
『当たり前だろ?俺は高貴な霊獣だ!』
「タップ、お願い。この子を助けて?」

 プリシラはタップにお願いした。するとマルコの身体が輝き出した。パンパンに腫れていた左足はみるみる元の細さになり、少年はパチリと目を開けた。少年はぼんやりと辺りを見回して、父の姿を目にすると、微笑んで言った。

「父ちゃん?お帰り」

 ゴンザは息子にとりすがって泣き出した。妻も息子に駆け寄って泣いていた。

 ゴンザの息子は助かったのだ。ほほえましい家族の姿を見て、トビーは嬉しくなった。気づくと、タップを片手で抱っこしたプリシラが、トビーの肩を抱いて微笑んでいた。

 トビーは姉のプリシラを笑顔で見上げた。

 
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