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トビーの冒険

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 トビーは自慢の風飛行魔法で、大空を縦横無尽に飛んでいた。トビーは嬉しくて仕方なかったのだ。風魔法の師匠であるプリシラの指導により、トビーの風魔法は格段に上達したのだ。

 以前のトビーは、自分自身が空を飛ぶ事しかできなかった。だが現在は、大きな荷物も、風浮遊魔法で持ち上げて、安全に運ぶ事ができるようになった。

 これにより、マージ運送会社は仕事のはばを広げられるようになった。

 プリシラはトビーの事をとても心配して、風攻撃魔法や、風防御魔法も教えてくれた。

 トビーは習った攻撃魔法や防御魔法を使ってみたくて仕方なかった。だが師匠であるプリシラと固い約束があった。

 自分の身に危険がふりかかった時と、誰かを守る時以外、攻撃魔法は使わないと。

 トビーは配達の仕事を終え、会社に戻る道すがら、何気なく地上を見下ろした。

 地上は一面の森で、馬車の行き交う長い馬車道が伸びている。この道を使って、馬車は遠くまでの道のりを走り、人や物を運ぶのだ。

 トビーは空が飛べるので、馬車よりも格段に早く目的地に着く事ができる。トビーは人とは違う。人よりも秀でた存在なのだ。そんな自分が誇らしかった。

 トビーが馬車の道に視線を向けながら飛んでいると、何やら数人の人たちがいた。何をしているのだろうか。

 トビーは飛ぶ速度をゆるめて、地上の人物たちの行動を見つめた。よく見ると、一人の男に三人の男たちがよってたかって暴力をふるっているのだ。

 強盗だ。トビーは瞬時に理解し、背中が泡立った。これからトビーは、初めて攻撃魔法を使うのだ。

 トビーはゆっくりと高度を下げ、男たちの頭上までやってきた。

「おい!一人のおっちゃんによってたかって暴力を振るうのは、お前たち悪い奴らだな!この俺が成敗してやる!」
「なんだクソガキ!」
「降りて来やがれ!」

 男に暴力を振るっていた三人の男たちは、口々にののしりの声をあげた。悪人の中の一人の男は注意深げに言った。

「待て、このガキは空を飛んでいる。魔法使いかもしれない。油断するな」

 男の胸ぐらを掴んで今にも殴りかかろうとしていた男は、ポケットからナイフを取り出し、男の首に押し付けて笑った。

「ガキ。ちょっとでも動いてみろ。この男は死ぬぞ?」

 トビーは焦った。だが冷静にこの状況を考えた。

 三人の悪人たちは、トビーがあらゆる魔法を使う魔法使いだと考えているようだ。それならば、ナイフを押し付けている男は、トビーの魔法を抑止させる人質のはずだ。殺すはずがない。トビーはニヤリと笑った。
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