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戦闘開始

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 プリシラが慣れないテントで眠れぬ夜を過ごした翌朝、捕虜だったドワーフが戻って来た。

 予想通りドワーフとエルフの連合軍は対話を拒否、これから戦闘が始まると告げられた。

 西の森の入り口の平原には、ウィード国軍の兵士が二百人、騎兵が三十人待機していた。本来ならばウィード国軍を指揮するのは、将軍なのだが、今回にかぎってはエスメラルダの指名で、騎士であるネリオが取る事になった。

 将軍とは、ドリスがテントで最初に会った男だった。将軍はドリスと共に馬に乗っていた。ドリスは乗馬があやしいため、ドリスの後ろに将軍が乗る事になったのだ。

 ネリオは馬上から、声高らかに宣言した。

「勇敢なるウィード国の兵士たちよ!我らはこれからドワーフとエルフの連合軍と剣を交える!我らがドリス女王は、連合軍との対話がお望みである。したがって、鉄の剣は使用できない。皆が手にしている木の剣で相手を拘束しなければならない!だが恐れる事は無い!我らには強大な魔力を有する四人の乙女たちがついている。彼女たちが我らを勝利に導いてくれる!」

 ネリオの声に、兵士たちの声が上がる。ウィード国に勝利を。ドリス女王のみこころのままに。

 プリシラは大きくなったタップの背中に乗りながら、これから戦う相手を見つめた。西の森を守るように隊列を組んでいるドワーフとエルフの連合軍は百人にも満たない人数だった。だが彼らは怒りに満ちていた。自分たちの連合軍の二倍以上の人間の大軍を目の当たりにして、士気はおとろえる事はなかった。

 プリシラはブルリと身体を震わせてから願った。どうか誰もケガをしないように。プリシラの背中に温かい手が置かれた。プリシラの後ろにはチコと、彼女の肩に乗ったプッチが、その後ろにはティアを抱っこしたサラが乗っていた。

 プリシラが振り向くと、チコいつもの茶めっけたっぷりの笑顔をしていた。

「だぁいじょうぶ!プリシラ、きっとすべてうまく行くわ」

 チコはとても楽観的だ。プリシラはチコのこの性格に何度も救われていた。チコの後ろからサラが顔を出した。

「ええ、きっと大丈夫。誰もケガしないでこの戦いを終わらせましょう」
「ええ、そうね」

 きっと大丈夫。プリシラは決意を新たにした。プリシラがふと上空を見上げると、姉のエスメラルダが浮遊魔法で空中にとどまり、じっと地上の様子を見ていた。

 突然、辺りにつの笛の音が鳴り響いた。ドワーフとエルフ軍の戦い開始の合図だ。

 ドワーフとエルフの連合軍は、一斉に駆け出した。呼応するかのように、ウィード国軍も行軍し出した。

 

 
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