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ドリスの正体
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最初は上空を飛ぶ事を怖がっていたドリスだが、次第に飛ぶ事に慣れてきたようだ。プリシラはマージ運送会社の前に着地した。プリシラとタップが戻って来た事に気づいたマージとトビーが会社から出て来た。プリシラはタップの背中からヒラリと降りた。
「お帰り、プリシラ、タップ。楽しかったかい?」
「ただいま戻りました。マージさん、トビー。ええ、皆元気でした。マージさん、ちょっとこれから友達を送って行く事になったので、先に寝ててもらえますか?」
マージはそこで初めて、タップの背中にフードをかぶった人物がいる事に気づいたようだ。マージは依頼人のドリスに気さくに声をかけた。
「あら、プリシラのお友達?あいさつをさせてちょうだい」
マージの親しげな申し出にプリシラは冷や汗をかいた。ドリスはプリシラの依頼人であって友達ではない。しかも高貴な令嬢らしいのだ。
プリシラが固まっていると、ドリスはプリシラにスッと右手を差し出した。気づいたプリシラが彼女の手を掴むと、ドリスはスルリとタップの背中から降り、マージとトビーの前に立つと、フードをおろして言った。
「夜遅く申し訳ありません、ドリスと申します。プリシラの優しさに甘えてしまいました。これから彼女をお借りします」
「ええ、ドリスさん。プリシラとタップがいつもお世話になってます。道中お気をつけて」
プリシラは驚いた表情でドリスを凝視してしまった。ドリスはマージたちにプリシラの友人としてあいさつしてくれたのだ。
ドリスは、少し目の吊り上がった意志の固い顔立ちの女性だった。化粧っけがまるでなく、化粧をほどこせば美しくなりそうだった。
マージはドリスににこやかにあいさつをしてから、プリシラに向かって言った。
「じゃあプリシラ。貴女の部屋の窓のカギを開けておくわね?」
「すみませんマージさん。でも心配だわ。夜に窓のカギを開けておくなんて。泥棒が入ったらどうしましょう」
「あはは。うちには盗られるような物なんて無いわよ」
心配するプリシラに、マージは豪快に笑った。
「心配するなよ、プリシラ。もし悪い奴が家に入って来たら、俺が風攻撃魔法で退治して、マージおばちゃんを守ってやる」
トビーが胸を張ってプリシラに言った。プリシラはクスリと笑って、トビーの目線になって答えた。
「トビー、よろしくね?」
「おう!プリシラ、タップ。気をつけてな」
プリシラはタップの背に乗ると、ドリスを前に乗せてから、夜の空に飛び立った。
ドリスはマージたちにあいさつした後、再びすぐにフードをまぶかにかぶってしまった。だがプリシラは、ドリスがフードを外した姿をしっかりと見たのだ。
ドリスは身体中に魔法具の宝飾品をつけていた。これは貴族の令嬢では珍しくない。護身用に身につけているのだ。
魔法具とは、魔法を収納しておける器で、値段はとても高価だ。プリシラが身につけている通信魔法具は、姉のエスメラルダと話ができる魔法が入っている。
きっとドリスの身につけている、指輪やブレスレットやペンダントには、身を守るための魔法が入っているのだろう。
プリシラはたくさんの指輪の中に、ドリスの正体に関係する物を見つけてしまった。
それは、女性の指にはやや大きめの金の指輪で、横向きになったライオンの姿が細かく彫刻されていた。
ライオンの紋章。この紋章は、この国の人間ならば子供だって知っている。これはウィード国の王家の紋章だ。
つまりドリスという女性は、ウィード国の王家の人間という事になる。これはドリスを目的地に連れて行って帰ってくるだけでは済まないのではないか。プリシラは不安な気持ちになった。
「お帰り、プリシラ、タップ。楽しかったかい?」
「ただいま戻りました。マージさん、トビー。ええ、皆元気でした。マージさん、ちょっとこれから友達を送って行く事になったので、先に寝ててもらえますか?」
マージはそこで初めて、タップの背中にフードをかぶった人物がいる事に気づいたようだ。マージは依頼人のドリスに気さくに声をかけた。
「あら、プリシラのお友達?あいさつをさせてちょうだい」
マージの親しげな申し出にプリシラは冷や汗をかいた。ドリスはプリシラの依頼人であって友達ではない。しかも高貴な令嬢らしいのだ。
プリシラが固まっていると、ドリスはプリシラにスッと右手を差し出した。気づいたプリシラが彼女の手を掴むと、ドリスはスルリとタップの背中から降り、マージとトビーの前に立つと、フードをおろして言った。
「夜遅く申し訳ありません、ドリスと申します。プリシラの優しさに甘えてしまいました。これから彼女をお借りします」
「ええ、ドリスさん。プリシラとタップがいつもお世話になってます。道中お気をつけて」
プリシラは驚いた表情でドリスを凝視してしまった。ドリスはマージたちにプリシラの友人としてあいさつしてくれたのだ。
ドリスは、少し目の吊り上がった意志の固い顔立ちの女性だった。化粧っけがまるでなく、化粧をほどこせば美しくなりそうだった。
マージはドリスににこやかにあいさつをしてから、プリシラに向かって言った。
「じゃあプリシラ。貴女の部屋の窓のカギを開けておくわね?」
「すみませんマージさん。でも心配だわ。夜に窓のカギを開けておくなんて。泥棒が入ったらどうしましょう」
「あはは。うちには盗られるような物なんて無いわよ」
心配するプリシラに、マージは豪快に笑った。
「心配するなよ、プリシラ。もし悪い奴が家に入って来たら、俺が風攻撃魔法で退治して、マージおばちゃんを守ってやる」
トビーが胸を張ってプリシラに言った。プリシラはクスリと笑って、トビーの目線になって答えた。
「トビー、よろしくね?」
「おう!プリシラ、タップ。気をつけてな」
プリシラはタップの背に乗ると、ドリスを前に乗せてから、夜の空に飛び立った。
ドリスはマージたちにあいさつした後、再びすぐにフードをまぶかにかぶってしまった。だがプリシラは、ドリスがフードを外した姿をしっかりと見たのだ。
ドリスは身体中に魔法具の宝飾品をつけていた。これは貴族の令嬢では珍しくない。護身用に身につけているのだ。
魔法具とは、魔法を収納しておける器で、値段はとても高価だ。プリシラが身につけている通信魔法具は、姉のエスメラルダと話ができる魔法が入っている。
きっとドリスの身につけている、指輪やブレスレットやペンダントには、身を守るための魔法が入っているのだろう。
プリシラはたくさんの指輪の中に、ドリスの正体に関係する物を見つけてしまった。
それは、女性の指にはやや大きめの金の指輪で、横向きになったライオンの姿が細かく彫刻されていた。
ライオンの紋章。この紋章は、この国の人間ならば子供だって知っている。これはウィード国の王家の紋章だ。
つまりドリスという女性は、ウィード国の王家の人間という事になる。これはドリスを目的地に連れて行って帰ってくるだけでは済まないのではないか。プリシラは不安な気持ちになった。
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