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依頼人
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チコの急な依頼発言に、プリシラたちが困惑していると、テーブルの前にローブをまぶかにかぶった人物があらわれた。その人物は、プリシラたちのテーブルにバンッと大きく手をついて叫んだ。
「チコ!よくもわたくしを散々待たせたな!」
プリシラたちが驚いて身体を固くしていると、チコはうっとうしそうにフードの人物をにらんで言った。
「うるさいわね。友達との時間を優先させなさいよ。ドリス」
「うぬぬ。紹介料をふんだくっておいてその言い草!チコ、不敬であるぞ!」
どうやらこのフードの人物が、プリシラとタップの依頼人らしい。プリシラは立ち上がってドリスと呼ばれた人物に座るよう促してから口を開いた。
「お客さま、お待たせして申し訳ありません。チコが申していたのがわたくしどもです。わたくしどもがお客さまを現地にお連れいたします」
ドリスはプリシラの席にドカリと腰を下ろすと、プリシラのへりくだった態度にやっと溜飲がさがったのか、横柄な態度で答えた。
「うむ、少しは話しのわかるやつだの。わたくしは急いでいる。これから出発しなさい」
ドリスの発言にプリシラは困ってしまった。プリシラは今夜、マージたちに友達と夕食をとるとだけ伝えていた。これから人を連れて遠くまで飛んでいては帰りが遅くなってしまう。
プリシラが困っていると、今度はチコが勢いよく立ち上がり、テーブルをドンと叩いた。
「ちょっと、ドリス!私の友達に何て口の聞き方するのよ!それにプリシラにも都合ってものがあるんだから、また後日にしなさいよ!」
「何だと?!人を一週間も待たせて、まだ待てというのか!そもそもチコ、お前の態度が悪いのだ。わたくしはとても高貴な家柄なのだ。この者の態度が正しいのだ」
「はん!ならどこのご令嬢か言ってみなさいよ!どうせどこかの没落貴族の出戻り令嬢なんでしょ?」
「ぐぬぬ。言わせておけば、ぬけぬけと。本来ならば手打ちにしてくれるところだが、わたくしは心が広いのだ。すぐさま出発すればお前の無礼は水に流してやろう」
チコとドリスのやり取りに、プリシラはだんだん嫌な予感がしてきた。ドリスという女性の態度。命令しなれている不遜な態度からして、どうやら良いところ令嬢のようだ。しかもこの場では身分を明かせないときている。
プリシラは仕方なく、マージの会社までの同行を提案した。マージに事情を話しておけば心配させないと考えたからだ。
依頼人はプリシラの提案を受け入れてくれた。プリシラはタップに大きくなってもらうと、タップの背中にまたがり、依頼人に手を差し伸べる。彼女の細い右手を掴むと、勢いよくタップの背中に引っ張りあげた。
プリシラは依頼人を背後から抱きしめるように固定すると、彼女の腰の細さが際立っていた。
チコとサラはしきりにプリシラとタップの心配をしていた。チコは依頼人をキッとにらんで言った。
「ドリス、いい事?絶対にプリシラとタップを無事に帰すのよ?変な事に巻き込んだら承知しないからね」
チコの剣幕を、ドリスはフンと鼻息一つで無視した。横にいたサラも依頼人をにらんで言った。
「私も同じ意見です。貴女が何をしようと勝手ですが、プリシラとタップの安全を最優先に行動してください。さもないと私たちも黙っていませんよ?」
プリシラは少し驚いた。いつも冷静なサラが依頼人を警戒して怒っているのだ。
「ああ、うるさいのぉ!わかっておる。わたくしが目的地に着いたら、プリシラたちはすぐに解放しよう」
依頼人はお手上げだといいたげに、両手をあげて答えた。プリシラは苦笑してから友人たちに言った。
「チコ、プッチ、サラ、ティア。私たちは大丈夫よ?じゃあ、またね?」
プリシラはあいさつを終えると、タップに合図して上空に飛び上がった。
「チコ!よくもわたくしを散々待たせたな!」
プリシラたちが驚いて身体を固くしていると、チコはうっとうしそうにフードの人物をにらんで言った。
「うるさいわね。友達との時間を優先させなさいよ。ドリス」
「うぬぬ。紹介料をふんだくっておいてその言い草!チコ、不敬であるぞ!」
どうやらこのフードの人物が、プリシラとタップの依頼人らしい。プリシラは立ち上がってドリスと呼ばれた人物に座るよう促してから口を開いた。
「お客さま、お待たせして申し訳ありません。チコが申していたのがわたくしどもです。わたくしどもがお客さまを現地にお連れいたします」
ドリスはプリシラの席にドカリと腰を下ろすと、プリシラのへりくだった態度にやっと溜飲がさがったのか、横柄な態度で答えた。
「うむ、少しは話しのわかるやつだの。わたくしは急いでいる。これから出発しなさい」
ドリスの発言にプリシラは困ってしまった。プリシラは今夜、マージたちに友達と夕食をとるとだけ伝えていた。これから人を連れて遠くまで飛んでいては帰りが遅くなってしまう。
プリシラが困っていると、今度はチコが勢いよく立ち上がり、テーブルをドンと叩いた。
「ちょっと、ドリス!私の友達に何て口の聞き方するのよ!それにプリシラにも都合ってものがあるんだから、また後日にしなさいよ!」
「何だと?!人を一週間も待たせて、まだ待てというのか!そもそもチコ、お前の態度が悪いのだ。わたくしはとても高貴な家柄なのだ。この者の態度が正しいのだ」
「はん!ならどこのご令嬢か言ってみなさいよ!どうせどこかの没落貴族の出戻り令嬢なんでしょ?」
「ぐぬぬ。言わせておけば、ぬけぬけと。本来ならば手打ちにしてくれるところだが、わたくしは心が広いのだ。すぐさま出発すればお前の無礼は水に流してやろう」
チコとドリスのやり取りに、プリシラはだんだん嫌な予感がしてきた。ドリスという女性の態度。命令しなれている不遜な態度からして、どうやら良いところ令嬢のようだ。しかもこの場では身分を明かせないときている。
プリシラは仕方なく、マージの会社までの同行を提案した。マージに事情を話しておけば心配させないと考えたからだ。
依頼人はプリシラの提案を受け入れてくれた。プリシラはタップに大きくなってもらうと、タップの背中にまたがり、依頼人に手を差し伸べる。彼女の細い右手を掴むと、勢いよくタップの背中に引っ張りあげた。
プリシラは依頼人を背後から抱きしめるように固定すると、彼女の腰の細さが際立っていた。
チコとサラはしきりにプリシラとタップの心配をしていた。チコは依頼人をキッとにらんで言った。
「ドリス、いい事?絶対にプリシラとタップを無事に帰すのよ?変な事に巻き込んだら承知しないからね」
チコの剣幕を、ドリスはフンと鼻息一つで無視した。横にいたサラも依頼人をにらんで言った。
「私も同じ意見です。貴女が何をしようと勝手ですが、プリシラとタップの安全を最優先に行動してください。さもないと私たちも黙っていませんよ?」
プリシラは少し驚いた。いつも冷静なサラが依頼人を警戒して怒っているのだ。
「ああ、うるさいのぉ!わかっておる。わたくしが目的地に着いたら、プリシラたちはすぐに解放しよう」
依頼人はお手上げだといいたげに、両手をあげて答えた。プリシラは苦笑してから友人たちに言った。
「チコ、プッチ、サラ、ティア。私たちは大丈夫よ?じゃあ、またね?」
プリシラはあいさつを終えると、タップに合図して上空に飛び上がった。
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