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探し物

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 プリシラはタップを抱っこしながらデムーロ伯爵家の長い廊下を歩いていた。腕の中のタップがプリシラに言った。

『なぁプリシラ。何でデムーロの女房が、デムーロの事好きだなんて言ったんだよ?もし女房がやっぱりデムーロを恨んでいたらどうすんだよ?』
「ねぇ、タップ。好きの反対は何だかわかる?」
『?。好きの反対は嫌いだろ?』
「ううん。違うのよ」

 プリシラはクスリと笑った。好きの反対は無関心だ。プリシラは心から愛していた両親から、まるでいない者のように扱われた。だからわかるのだ。デムーロ伯爵の妻は、デムーロ伯爵の事が心から好きだったから憎んだのだ。

 プリシラはこれからデムーロ伯爵の妻が、彼を愛している証拠を探さなければいけない。そのためには協力者が必要だ。プリシラは長い廊下の天井を見上げて言った。

「リベリオさま。出て来てくださいませんか?」

 突然、プリシラたちの目の前に空間の入り口が出現した。入り口からは、伯爵の息子リベリオが優雅に現れた。リベリオは高等魔法である空間魔法も扱えるようだ。

「プリシラの方から俺に会いたいと言ってくれるなんて光栄だね?」
「リベリオさま。私に協力していただけませんか?」

 プリシラはリベリオに、母親が父親を愛しているという証拠を探したいと言った。リベリオは渋い顔をした。

「母上が父親を愛している証拠?ムダだとおもうけどね?だけど他ならないプリシラの頼みだ。俺は何をしたらいい?」
「お母さまの部屋の入室の許可をいただけませんか?」

 リベリオはうなずき、プリシラが私服のまま、伯爵の妻の部屋をうろついていては目立つからと、魔法でプリシラの地味なドレスをメイドドレスに変えてくれた。

「やぁ、プリシラ。クラシックなメイドドレスも似合ってるね?このまま、俺つきの専属メイドになってくれないかな?」

 プリシラは真顔でお断りしますと答えてから、伯爵の妻の部屋へ急いだ。

 デムーロ伯爵の妻の部屋は、亡くなった時のままにされているという。いつ主人が帰って来てもよいように室内は綺麗に整っていた。

 プリシラはまず本棚を調べた。日記のようなものがないかと考えたのだ。だが本棚の本は、だいたいがファッションについての本で、日記の類いは見つからなかった。

 その日は夕方までかかって探したが、妻がデムーロ伯爵を愛している証拠は見つからなかった。

 プリシラはリベリオに、再度探し物の約束をして、屋敷を後にした。
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