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会社の規則
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プリシラはタップを抱っこしながら、重い足取りでマージ運送会社に帰り着いた。ドアを叩くと、心配顔のマージとトビーが飛び出してきた。
「プリシラ、タップ。良かった、帰りが遅いから心配したわ?」
「プリシラ、タップ。遅せぇよ!」
プリシラはマージとトビーに帰りが遅くなった事をわびてから、深々と頭を下げて言った。
「マージさん、申し訳ありませんでした。私たちは会社の規則をやぶって、品物だけではなくおばあさんを一緒に連れてきてしまいました」
マージは慌ててプリシラに頭をあげさせてから、トビーと苦笑し合って言った。
「昨日依頼人の奥さんが苦情を言いに来たのよ。娘の晴れ舞台が台無しだって。詳しく話しを聞いてすぐにわかったわ?ああ、プリシラとタップはおばあさんを一緒に連れて行こうとしているんだって。だから私、怒っている奥さんに言ったのよ。うちの従業員は必ず娘さんの結婚式に間に合います。だから待っていてくださいって」
マージの言葉に、プリシラは目がしらが熱くなった。マージはプリシラとタップが間に合うと信じてくれていたのだ。下を向いているプリシラに、マージは優しい声で言葉を続けた。
「プリシラ、タップ。私は風魔法が使えないから、会社で事務仕事をしているだけだけど。私は荷物を運んでいるとは考えていないわ。私はね、お客さんの心を運んでいるつもりで働いているの」
「お客さんの心?」
プリシラは顔をあげてマージを見つめた。マージはゆっくりうなずいてから答えた。
「ええ。大切な人に会いたい、だけど会えないから、思いをこめて手紙を送ったり、贈り物をしたりするの。だから現場にいるトビーやプリシラやタップが、お客さんの気持ちをくんで、こうした方がいいと考えるなら、実行しなさい」
プリシラは、えっと小さく声を出してから聞いた。
「マージさん、私たちのおとがめは、」
「無いわよ、そんなの。さぁプリシラ、タップ。初仕事疲れたでしょう?夕飯にしましょう?」
プリシラは胸がカァッと熱くなった。もしかしたら解雇されるかもしれないと思いながら告白したのだ。プリシラはマージという雇い主に出会えた事を心から感謝した。
プリシラはマージとトビーにうながされ、りんごはあるか?とうるさいタップをたしなめながら家に入った。
「プリシラ、タップ。良かった、帰りが遅いから心配したわ?」
「プリシラ、タップ。遅せぇよ!」
プリシラはマージとトビーに帰りが遅くなった事をわびてから、深々と頭を下げて言った。
「マージさん、申し訳ありませんでした。私たちは会社の規則をやぶって、品物だけではなくおばあさんを一緒に連れてきてしまいました」
マージは慌ててプリシラに頭をあげさせてから、トビーと苦笑し合って言った。
「昨日依頼人の奥さんが苦情を言いに来たのよ。娘の晴れ舞台が台無しだって。詳しく話しを聞いてすぐにわかったわ?ああ、プリシラとタップはおばあさんを一緒に連れて行こうとしているんだって。だから私、怒っている奥さんに言ったのよ。うちの従業員は必ず娘さんの結婚式に間に合います。だから待っていてくださいって」
マージの言葉に、プリシラは目がしらが熱くなった。マージはプリシラとタップが間に合うと信じてくれていたのだ。下を向いているプリシラに、マージは優しい声で言葉を続けた。
「プリシラ、タップ。私は風魔法が使えないから、会社で事務仕事をしているだけだけど。私は荷物を運んでいるとは考えていないわ。私はね、お客さんの心を運んでいるつもりで働いているの」
「お客さんの心?」
プリシラは顔をあげてマージを見つめた。マージはゆっくりうなずいてから答えた。
「ええ。大切な人に会いたい、だけど会えないから、思いをこめて手紙を送ったり、贈り物をしたりするの。だから現場にいるトビーやプリシラやタップが、お客さんの気持ちをくんで、こうした方がいいと考えるなら、実行しなさい」
プリシラは、えっと小さく声を出してから聞いた。
「マージさん、私たちのおとがめは、」
「無いわよ、そんなの。さぁプリシラ、タップ。初仕事疲れたでしょう?夕飯にしましょう?」
プリシラは胸がカァッと熱くなった。もしかしたら解雇されるかもしれないと思いながら告白したのだ。プリシラはマージという雇い主に出会えた事を心から感謝した。
プリシラはマージとトビーにうながされ、りんごはあるか?とうるさいタップをたしなめながら家に入った。
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