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マージ運送会社

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 トビーはズカズカと屋内に入り、大声で叫んだ。

「おばちゃん!マージおばちゃん!」
「うるさいねぇ!トビー!大声出さなくても聞こえるよ!」

 トビーに負けないくらい大きな声を出して、四十代くらいの女性が飛び出してきた。トビーは女性の苦言などどこ吹く風で言った。

「マージおばちゃん。就職希望者」

 マージと呼ばれた女性は、プリシラを驚いた表情で見てから言った。

「お嬢さん。うちで働きたいだなんて、本気ですか?」
「はい!精一杯働きますのでよろしくお願いします!」

 プリシラは、ここで断られたら路頭に迷うと思い、心から頼み込んだ。マージはここでは何だからと、室内に入れてくれた。

 室内は会社というには雑然としていた。マージはプリシラをイスに座らせてくれた。自身は向いに座る。

「私はここの運送会社の主人をしているマージです。と言っても、働いているのは私と甥のトビーだけなの。それで、」

 マージは言いにくそうに話した。この運送会社は、始めたばかりの零細企業なのだそうだ。だからプリシラを雇っても、十分な給料は払えないというのだ。プリシラはそれでも構わないと言って食い下がった。

 プリシラは自分は現在無職で、住むところすらない状態である事を伝えると、マージはホッとした表情で答えた。

「それなら家に住めばいいわ。物置がわりにしている使ってない部屋があるから。給料はあまり払えないけど、食、住だけなら提供できるわ?」
「あ、ありがとうございます!」

 プリシラはどうやら今日の寝ぐらは確保できたようだ。マージはプリシラにお茶をふるまってくれた。プリシラのひざの上に乗っているタップは、トビーが買ってくれたりんごをガシガシ食べている。

 プリシラがマージと世間話をしていると、どこかに行っていたトビーが、肩がけカバンをさげて戻って来た。

「マージおばちゃん。行ってくる」
「気をつけるんだよ?いってらっしゃい」

 マージの言葉に、トビーはコクリとうなずくと、部屋を出た。マージが席を立って窓の前に立つ。プリシラもつられてタップを抱っこしながら立ち上がった。

 窓の外にはトビーがいた。トビーは叔母に手を振ると、フワリと身体を浮かせた。トビーはそのまま空を飛んでどこかに行ってしまった。プリシラは思わず感嘆の声をあげた。

「わぁ、トビーは飛行魔法が上手なんですね?」
「ええ、トビーは小さな頃から飛行魔法が得意だったわ。だから、トビーが自分を誇りに思ってくれるような仕事をして欲しかったの」
 
 マージは寂しそうに笑った。トビーはマージの妹の子供で、妹が亡くなって身寄りがなくなったので、マージが引き取ったのだという。

 プリシラは幼いトビーの過酷な身の上に、顔を曇らせた。それを見たマージが明るい声で言った。

「トビーは飛行魔法で早く荷物を届ける事ができるわ!今はまだ依頼が少ないし、トビーは小さな物しか運べないけど、これからこの会社をどんどん大きくしていくわ!プリシラにも働いてもらうわよ?」

 プリシラは元気よく返事をした。

 
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