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辰治対エグモント

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 辰治はエグモントに向かって刀を振り下ろした。主人に対して歯向かうなんて考えられない事だった。だが辰治のもう一人のご主人であるジュリアが危険なのだ。

 エグモントはジュリアを抱いているため両手が使えない。エグモントは悔しそうに辰治に言った。

「辰治、主人に逆らうとは覚悟はできているのだろうな」
「覚悟?ええ、勿論できてますよ。吸血鬼になった時からね。俺も言いましたよね?姐さんは俺の命の恩人です。いくらご主人さまでも姐さんを傷つける事は許せません」

 エグモントは辰治の反抗的な態度に腹を立てたのか、顔をしかめて辰治の左手を掴んだ。それに対して辰治はニヤリと笑った。辰治は右手でジュリアの腕を引っ張って木の下に落として叫んだ。

「響!受け取れ!」

 地上にいた響はジュリアを受け取った。辰治はほうっと息を吐いた。何とかジュリアを救出した。残りは目の前のエグモントを何とかしなければいけない。

 エグモントは怒りに頬を震わせていた。辰治は瞬間的に悟った。自分は殺される。だがただでは殺されない。響とジュリアのために少しでもエグモントを弱らせなければいけない。

 辰治は刀を構え直した。エグモントは日本刀の斬れ味を知らないだろう。エグモントは辰治を捕まえようと右手を伸ばした。辰治はためらいなく日本刀を振り下ろし、エグモントの右手を切断した。

 エグモントは痛みと怒りに咆哮した。エグモントはさすがの回復力で右手を再生させた。辰治は木の枝を器用に飛んで、エグモントに斬りつけ続けた。

 エグモントは辰治を捕まえたいのに、日本刀を警戒して手が出せないようだった。辰治はなおもエグモントに斬りかかろうとして、枝から足を踏み外した。エグモントはニヤリと笑って辰治に飛びかかろうとした。

 辰治は木の枝から落ちる瞬間、ニャッと笑った。これは辰治がエグモントに仕掛けた罠だったのだ。エグモントは辰治を下に見ているので、辰治がわざと足を踏み外した事に気づいていないのだ。

 辰治は木の幹に掴まり、落下を止めた。その後をエグモントが降りて来る。辰治は日本刀を勢いよく振るった。エグモントの両足が切断された。エグモントは驚いた顔のまま、木の下に落下していった。辰治は叫んだ。

「響!今だ!」

 エグモントは木の下に落下し、座り込んでしまっていた。まだ足を再生できないのだ。響はクロスボウを構えて矢を発射した。響の矢は見事エグモントの胸に刺さった。刺さった矢には小さな麻袋が結びつけられていた。

 響は続けてクロスボウの矢を放った。二本目の矢は麻袋を突き刺した。直後エグモントが爆発した。

 麻袋には火薬が入っていた。矢が当たった衝撃で爆発を起こしたのだ。

 

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