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辰治のご主人
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新しいアパートに引っ越してやっと落ち着いたある夜、辰治がふらりとやって来た。響とジュリアについてくるように言うのだ。
嫌がるジュリアに、辰治はこう言った。いずれ会わなければいけないのだから、早いか遅いかの問題だと。ジュリアはグッと黙ってしまった。
響には何の事やらさっぱりわからなかった。家を出る時、ジュリアは響の目を見てこん願するように言った。
「響、約束して。これから何があっても、絶対に私の側から離れちゃだめよ?」
「?。わかった、約束する」
響の答えに、ジュリアは弱々しく笑った。辰治は地面をけって、民家の屋根の上に登った。響とジュリアもそれに続く。
辰治は響たちを、どこかに連れて行こうとしていた。辰治は一定の距離を保って屋根の上を飛んでいる。響は横を飛ぶジュリアに聞いた。
「ジュリアは辰治がこれから行こうとしている場所がわかるの?」
「・・・。場所はわからない。だけど辰治の要件はわかる」
「?。辰治の要件って?」
「・・・。辰治のご主人のいる場所に、私たちを連れて行こうとしているのよ」
辰治のご主人。純血の吸血鬼。辰治は自分の主人の事を恐ろしい吸血鬼と言っていた。その吸血鬼が、響たちになんの用なのだろうか。
辰治は住宅街から離れた山の中腹に響たちを案内した。辰治はおもむろに片膝をついて言った。
「ご主人さま。純血の吸血鬼を連れてまいりました」
すると、響たちの背後に突然気配がした。響が慌てて振り向くと、そこには一人の男が立っていた。月明かりに照らされたその容貌は、まるで彫刻のように美しかった。
響がポカンと口を開けていると、ジュリアは響を守るように立ちはだかって言った。
「私たちを呼び出したのはどういうつもり?」
美しい男は目を細めてジュリアを見て言った。
「美しい。貴女のお名前を教えてくださいませんか?」
「相手に名前を聞く時は、自分から名乗るのが礼儀でしょ?」
「これは失礼。私はエグモントと申します」
嫌がるジュリアに、辰治はこう言った。いずれ会わなければいけないのだから、早いか遅いかの問題だと。ジュリアはグッと黙ってしまった。
響には何の事やらさっぱりわからなかった。家を出る時、ジュリアは響の目を見てこん願するように言った。
「響、約束して。これから何があっても、絶対に私の側から離れちゃだめよ?」
「?。わかった、約束する」
響の答えに、ジュリアは弱々しく笑った。辰治は地面をけって、民家の屋根の上に登った。響とジュリアもそれに続く。
辰治は響たちを、どこかに連れて行こうとしていた。辰治は一定の距離を保って屋根の上を飛んでいる。響は横を飛ぶジュリアに聞いた。
「ジュリアは辰治がこれから行こうとしている場所がわかるの?」
「・・・。場所はわからない。だけど辰治の要件はわかる」
「?。辰治の要件って?」
「・・・。辰治のご主人のいる場所に、私たちを連れて行こうとしているのよ」
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