ひよっこ召喚師モフモフの霊獣に溺愛される

ユリスの修行の成果

　ユリスがぼう然と立っていると、フィンとブランがしきりにセミルに抗議していた。

「セミル！僕たちセミルに何も教わってないよ？！」
「ニャッ」
「えぇ？ユリスが教えてくれただろ？ユリスの説明の方が俺よりわかりやすいぜ？」
「そうなんだ、それなら良かった。ユリスありがとう！」

　フィンとブランは納得したのかユリスに笑顔で礼を言った。ユリスは引きつった笑顔であいまいに答えた。ユリスの表情を見たセミルがニヤつきながら言った。

「何だ？不満顔だなユリス」
「はい師匠。僕はもっと師匠に魔法を習いたいんです」
「よし、いいだろう。ここは森の中だ、森を破壊しないように空中でやるぞ？」
「？。何をするんですか？師匠」
「俺との魔法戦に決まってんだろ？」

　ユリスは驚いた。赤髪のセミルといえば、隣国のシュロムでもその名をとどろかせる悪名高い魔法使いだ。若輩者のユリスにかなうわけがない。ユリスが戸惑っていると、セミルはフィンとブランに向き直って言った。

「空中魔法戦だから地上のお前らに危険は無いと思うが、万一攻撃魔法が流れてきたらブランは鉱物防御魔法を張って、ここいらを守ってくれよ？」
「ニャッニャッ」
「？。フィン、ブラン何て言ったんだ？」
「そんな事言われなくてもわかってるわよ。だって」
「ホント可愛くねぇなぁ」

　セミルはため息をついてから浮遊魔法で空に舞い上がった。ユリスも慌ててそれに続く。

　セミルはユリスに一定の距離を保ちながら言った。

「よし！俺は本気でお前に魔法攻撃するから、ユリスも俺を殺す気で来い」
「そ、そんな事できませ、」

　ユリスが言葉を言い終わらないうちに、セミルの魔法攻撃が開始された。セミルはカミナリのヤリを何本も出現させ、ユリスに放った。ユリスは慌てて自身を風防御ドームで守った。ユリスの防御ドームにカミナリのヤリが突き刺さる。このままでは防御ドームが破られてしまう。ユリスは空間魔法を発動させ、空間の穴に飛び込んだ。

　出口の先は、セミルの背後だ。ユリスは空間魔法から出ると、セミルの背中に強力な炎攻撃魔法を放った。だがユリスの攻撃は読まれていたとみえ、セミルは風防御魔法でユリスの炎魔法を防いだ。

　セミルはゆっくりとユリスに振り向くと、笑顔でユリスに片手を向けた。突然ユリスがまとっていた浮遊魔法が解除された。ユリスは重力にしたがって身体が落下するのを感じた。この高さから落ちれば即死してしまう。

　ユリスが目を閉じて身体を固くすると、硬い何かの上に落ちた。おそるおそる目を開けると、ユリスは透明な丸い球体の中に閉じ込められていた。

　セミルの防御魔法、すなわちセミルの結界内だ。セミルの結界内に閉じ込められたせいで、ユリスの魔法が無力化されてしまったのだ。

　防御魔法の外のセミルは笑顔で首をかしげている。これからどうするのか、と言っているようだ。ユリスはせんりつした。ユリスから魔法を取ったら、ただのひ弱な子供でしかないのだ。ユリスは震えながら己の無力さを痛感した。