ひよっこ召喚師モフモフの霊獣に溺愛される

魔法修行２

　セミルはユリスの指導をフィンに任せてどこかに行ってしまった。ユリスが途方に暮れていると、フィンがニコニコしながら言った。

「セミルがユリスに武闘を教えてやれだって。だから僕が教えてあげるね？」

　フィンはそう言ってから、まずはランニングだと走り出した。ユリスは慌ててフィンの背中を追って走り出した。

　自慢ではないがユリスはこれまで運動というものをほとんどした事がなかった。ユリスは小さい頃すぐに熱を出して寝込んでいた。他の兄弟たちは剣の師について技術をみがいていたというのに。

　ユリスは広いベッドの上でいつも考えていた。病気にならない身体になってめいいっぱい身体を動かしたいと。成長して夢が叶った。だが身体を動かすという事はとても大変な事だった。

　ユリスは口から心臓が飛び出しそうなほど激しく呼吸をした。目の前のフィンを見ると、もう姿形も見えなかった。フィンとはぐれてしまったのだ。

　ユリスは膝に手を置いて肩で息をした。ユリスがその場に動けないでいると、フィンが戻って来てくれて言った。

「ユリス大丈夫？」
「フ、フィン。ごめん」
「僕こそごめんね？ランニングの距離は少しずつ伸ばしていこう」

　フィンはそう言ってから、武闘の型を教えてくれた。こぶしの握り方、ケリの出し方、身体の姿勢。フィンは型の一つ教えるのに、何度も姿勢を直してくれる。ユリスは何分も同じ姿勢でいなければいけなかった。

　フィンは武闘の型の指導を永遠と続けた。ユリスはもうこれ以上続いたら倒れてしまいそうだった。ユリスが限界に近づいた時、フィンが言った。

「お日さまがま上になったらセミルが戻って来なさいって。ユリス、ランニングしてテントまで帰ろう」

　フィンはそう言うとものすごい速さで走り出した。ユリスは自分も行かなければと思い一歩足を踏み出したが、そのまま倒れてしまった。

　ユリスは、戻って来てくれたフィンにおんぶされてテントまで戻った。テントの前では、セミルとブランが待っていた。彼らの前には木のテーブルがあり、テーブルの上には山盛りのサンドイッチやオレンジジュース、ボウルに入ったサラダが置いてあった。セミルが機嫌悪そうに言った。

「遅ぇぞ！フィン！ユリス！手ぇ洗ってうがいをしたらとっとと昼飯を食え」

　フィンは嬉しそうにしていたが、ユリスは慣れない運動をしたため全く食欲がわかなかった。

　サンドイッチはハムとレタスとチーズ、鳥の照り焼きとスライスして玉ねぎ、ポテトサラダがはさまっていた。フィンは嬉しそうにサンドイッチを食べている。

　セミルがフィンとユリスにミネストローネのスープのマグカップを置いてくれた。セミルはユリスの食事がすすんでいない事に気づいて言った。

「なんだユリス、俺の作ったメシが食えないのか！」
「・・・。いいえ違います師匠。食事はとても美味しいのですが、疲れすぎて食事がのどを通らないんです」
「だからお前はやせぎすなんだ！無理矢理食え、はいてでも食え！そしてフィン！生野菜も食べなさい！」

　フィンはふてくされた顔でポテトサラダとレタスは食べていると答えて、セミルにポテトサラダは炭水化物だからだめだと怒られていた。どうやらフィンは生野菜が苦手らしい。