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潜在魔力

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 セミルは急にできた自分の弟子、シュロム国の王子ユリスをチラリと見つめた。おっとりとした雰囲気、オドオドとした態度。およそ王子には見えない。彼は幼い頃から卑下されて育ったように見えた。

 外国の王族など、セミルは極力関わり合いになりたくないのが本音だ。セミルは王族や貴族の権力者を憎んでいる。だがユリスはフィンの友達だ。フィンはセミルにとって恩人なのだ。母国を出る事にふんぎりがつかなかったセミルに、国を出るきっかけを作ってくれた。

 フィンはセミルの願いを聞き入れ、王都の騎士団にセミルが死んだと報告してくれた。おかげでセミルは外国で暮らす事ができたのだ。フィンはセミル討伐で受けた報酬を、ランスの町に全て渡してくれた。セミルはフィンの恩に報いなければならないのだ。セミルはユリスに声をかけた。

「よし、ユリス。これからお前の潜在魔力の限界を見る。ついて来い」

 セミルは自身と、ブランを抱っこしたフィンに風魔法をかけて、宙に浮いた。ユリスもそれにならう。セミルはうなずいて高度を上げると、早い速度で空を飛んだ。フィンとブランは速すぎると叫んでいるが無視する。ユリスはセミルの速度にしっかりついてきている。魔法のセンスは悪くないようだ。

 セミルは森を抜けて、大きな平野に降り立った。フィンたちに振り向いて言った。

「おい。あまり役に立たないと思うが耳ふさいでろ」

 フィンとユリスが耳をふさぐ。白猫のブランも前足で自分の耳を折り曲げてるのがちょっと可愛い。セミルはうなずくと、辺り一帯に特殊な周波数を出す魔法を発動させた。ここらに住んでいる動物たちをおっぱらうためだ。キィーンと鋭い音がする。

 しばらくして周波数を止め、セミルは大きな防御ドームを作った。フィンたちはセミルが何をしようとわからないようでキョロキョロしていた。セミルはユリスに振り向き厳しい声で言った。

「ユリス、これからお前の実力を見る。相手はフィンとブランだ」
「えっ!フィンとブランに攻撃するなんて、僕にはできません!」
「僕たちだってイヤだよ!セミル!」
「ニャッニャッ」

 ユリスの言葉にフィンとブランも乗っかってくる。セミルは怖い顔で答えた。

「俺はユリスの潜在魔力がどのくらいあるのか知りてぇの!この防御ドームはお前たちの魔法が周りに危害を及ぼさない意味もあるが、このドームは俺の結界内なの。もしお前らに危険な事があれば、魔法を強制停止する事ができるからグダグダ言わずにやりなさい!」

 フィンはセミルの考えに不満らしく、ふてくされた顔をしている。ユリスは青ざめた顔だ。ブランは何を言っているかわからないがシャーッシャーッと怒っていた。
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