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三人組のその後
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ユリスは喜んで叫んだ。
「ヤンさん!貴方があの飾り箱を彫ったんですね?!とても素敵な作品でした!」
ヤンは興奮して話すユリスをにらんで叫んだ。
「何が作品だ!オヤジには見向きもされなかったよ!俺の作った物は銅貨一枚にもならないって!」
ヤンの悲痛な叫びに、フィンたちは黙ってしまった。トグサとヤン親子の間にはかくしつがあるのだろう。
フィンたちは三人の山賊もどきを許すにあたって、タジの村人たちに謝る事を条件にした。フィンたちは渋るゴイたちを村まで連れて行き、タジの村の村長の家に行った。
村長はゴイたちを見るとハァッと深いため息を吐き、フィンたちに向かって深々と頭を下げて言った。
「まことに申し訳ありませんでした、冒険者さま方。山賊だと思ったのは村のおろか者たちでした」
村長の言葉を聞いたユリスはかぶりを振って答えた。
「いいえ、村長さん。それは違います。ゴイさんとトンさんとヤンさんは自分の進むべき道を見いだせなくてもがいていただけなんです」
村長にはユリスの言葉の意味がよくわからなかったようだ。ゴイたちはタジの村の人たちに謝り、冒険者協会に出した依頼を取り下げてもらった。フィンたちは依頼料を受け取るつもりは無かったが、村長はユリスに小さな麻袋を手渡した。ユリスは自分で初めてお金を稼いだのだ。
ゴイとトンは王都に出稼ぎに出る事になった。ユリスはゴイには大工の棟梁への紹介状。トンには食堂のコックへの紹介状を手渡した。ユリスはゴイとトンの二人に、修行は辛いだろうが自分を信じれば必ず道は開けると伝えた。ゴイたちは自分よりはるかに年下のユリスの言葉にとても感激しているようだった。
最後に残ったヤンは、ふてくされた顔でつっ立っていた。ユリスはヤンに優しく声をかけた。
「ヤンさん、お父さんが待ってます。一緒に帰りましょう」
「嫌だね!オヤジの所に帰ったら俺は殺されちまう!」
「大丈夫ですよ。お父さんがヤンさんを殺そうとしたら僕が止めますから」
「・・・。うん」
フィンたちはヤンを連れてトグサのいる小屋に帰る事にした。ヤンは道すがらトグサへの不満を並べていた。
「オヤジは俺に、イスやテーブルを作れって言うが、俺は俺の作りたい物を作りたいんだ。だけど、俺の作った物はガラクタなんだよな」
ヤンはうなだれて黙った。フィンはヤンの背中に手を置いて言った。
「ヤンさん。僕らが作業場に入らせてもらった時、トグサさんはヤンさんの飾り箱を棚に置いてました。一つ一つ大切に飾っているように見えました。トグサさんはヤンさんの作った物を認めてくれていると思います。でも、ヤンさんの作った物が売れないと困るから、トグサさんは別な物も作ってほしいと思っているんじゃないでしょうか?」
ヤンは顔をあげて、フィンの目を見た。何と答えていいのかわからない表情を浮かべていた。
フィンたちがトグサの家に着くと、トグサはヤンに激怒した。
「お前は村の人たちに迷惑をかけて!二度と俺の前に顔を見せるな!」
あまりの怒りっぷりに、フィンはたじろいだ。売り言葉に買い言葉で、ヤンも返した。
「ああ!クソオヤジ!二度と帰らないからな!」
フィンは二人をどうなだめてよいかわからず途方にくれていると、ユリスは何故かニコニコしていた。トグサとヤンのケンカを無視して会話に入っていった。
「お取り込み中失礼します。僕にトグサさんのイスとヤンさんの飾り箱を売ってくれませんか?」
トグサとヤンは、ユリスの場違いな申し出に毒気を抜かれて黙ってしまった。
「ヤンさん!貴方があの飾り箱を彫ったんですね?!とても素敵な作品でした!」
ヤンは興奮して話すユリスをにらんで叫んだ。
「何が作品だ!オヤジには見向きもされなかったよ!俺の作った物は銅貨一枚にもならないって!」
ヤンの悲痛な叫びに、フィンたちは黙ってしまった。トグサとヤン親子の間にはかくしつがあるのだろう。
フィンたちは三人の山賊もどきを許すにあたって、タジの村人たちに謝る事を条件にした。フィンたちは渋るゴイたちを村まで連れて行き、タジの村の村長の家に行った。
村長はゴイたちを見るとハァッと深いため息を吐き、フィンたちに向かって深々と頭を下げて言った。
「まことに申し訳ありませんでした、冒険者さま方。山賊だと思ったのは村のおろか者たちでした」
村長の言葉を聞いたユリスはかぶりを振って答えた。
「いいえ、村長さん。それは違います。ゴイさんとトンさんとヤンさんは自分の進むべき道を見いだせなくてもがいていただけなんです」
村長にはユリスの言葉の意味がよくわからなかったようだ。ゴイたちはタジの村の人たちに謝り、冒険者協会に出した依頼を取り下げてもらった。フィンたちは依頼料を受け取るつもりは無かったが、村長はユリスに小さな麻袋を手渡した。ユリスは自分で初めてお金を稼いだのだ。
ゴイとトンは王都に出稼ぎに出る事になった。ユリスはゴイには大工の棟梁への紹介状。トンには食堂のコックへの紹介状を手渡した。ユリスはゴイとトンの二人に、修行は辛いだろうが自分を信じれば必ず道は開けると伝えた。ゴイたちは自分よりはるかに年下のユリスの言葉にとても感激しているようだった。
最後に残ったヤンは、ふてくされた顔でつっ立っていた。ユリスはヤンに優しく声をかけた。
「ヤンさん、お父さんが待ってます。一緒に帰りましょう」
「嫌だね!オヤジの所に帰ったら俺は殺されちまう!」
「大丈夫ですよ。お父さんがヤンさんを殺そうとしたら僕が止めますから」
「・・・。うん」
フィンたちはヤンを連れてトグサのいる小屋に帰る事にした。ヤンは道すがらトグサへの不満を並べていた。
「オヤジは俺に、イスやテーブルを作れって言うが、俺は俺の作りたい物を作りたいんだ。だけど、俺の作った物はガラクタなんだよな」
ヤンはうなだれて黙った。フィンはヤンの背中に手を置いて言った。
「ヤンさん。僕らが作業場に入らせてもらった時、トグサさんはヤンさんの飾り箱を棚に置いてました。一つ一つ大切に飾っているように見えました。トグサさんはヤンさんの作った物を認めてくれていると思います。でも、ヤンさんの作った物が売れないと困るから、トグサさんは別な物も作ってほしいと思っているんじゃないでしょうか?」
ヤンは顔をあげて、フィンの目を見た。何と答えていいのかわからない表情を浮かべていた。
フィンたちがトグサの家に着くと、トグサはヤンに激怒した。
「お前は村の人たちに迷惑をかけて!二度と俺の前に顔を見せるな!」
あまりの怒りっぷりに、フィンはたじろいだ。売り言葉に買い言葉で、ヤンも返した。
「ああ!クソオヤジ!二度と帰らないからな!」
フィンは二人をどうなだめてよいかわからず途方にくれていると、ユリスは何故かニコニコしていた。トグサとヤンのケンカを無視して会話に入っていった。
「お取り込み中失礼します。僕にトグサさんのイスとヤンさんの飾り箱を売ってくれませんか?」
トグサとヤンは、ユリスの場違いな申し出に毒気を抜かれて黙ってしまった。
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