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ギリム
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ギリムは内心はらわたが煮えくりかえりそうだった。大事な商品がなくなってしまったからだ。納期が迫っている、早く新たな商品を探し出さなければいけない。
ギリムは生まれついての悪党だと自負していた。生まれてこの方悪い事をしたと、後悔した事は一度もなかった。ギリムは常に人を騙して金を得ていた。騙した人間をあわれんだ事は一度もない。だまされる方が悪いのだ。
そろそろ仲間が商品に目をつけている頃だ。ギリムが街の市場をブラブラ歩いていると、若い女のかん高い声が聞こえた。
「ですから、先ほどから謝っているではありませんか」
「お嬢さん。謝って済む問題じゃないんだよ。かわいそうに弟がこんなに痛がっているじゃないか」
「ちょっとぶつかっただけでケガをするなんておかしいです!」
ギリムが市場の道の真ん中にできた人だかりをのぞくと、まさに仲間が商品を品定めしている所だった。ガラの悪い二人組が、美しい娘にいんねんをつけている。街の人々は、関わり合いになりたくないとみえる。だが事のなり行きが気になって、チラチラと男二人組と美しい娘を見ていた。
ギリムはやじ馬を押しのけて輪の中に入ると、明るい声で言った。
「アイリンここにいたのか。探したぞ?」
ギリムはさも美しい娘の身内であるかのように、困っている娘の肩を抱いて言った。
「私の姪があなた方に何か失礼をいたしましたでしょうか?」
「なに!お前の姪だと!この娘が俺にぶつかってケガをさせたのだ!」
「それは大変失礼をいたしました。ではこれから私が医者にご案内いたします。診療代は勿論お支払いさせていただきます」
男二人組は苦い顔をしてから、気をつけろよ。と叫んで行ってしまった。困っていた娘はホッと息をついてからギリムに言った。
「危ない所を助けていただきありがとうございました」
ギリムは娘に振り向くと柔和な笑顔で答えた。
「ええ、たいした事ありませんよ。お嬢さんが無事でようございました」
ギリムの武器は笑顔だ。この笑顔で娘はすぐに安心して心を開いてしまう。先ほど娘にいんねんをつけた二人組はギリムの仲間だ。いい商品を見つけると、いんねんをふっかける。それを、偶然通りかかったギリムが仲裁して娘の警戒心をとくのだ。
ギリムはぜげんだった。美しい娘をさらって、娼館に売るのだ。元手がかからず大金が稼げる、こんなうまい商売は他にない。
ギリムはあらためてしげしげと商品の娘を見てため息をついた。とても美しい娘だった。髪はカラスの濡れ羽のように黒く、瞳は黒曜石のように輝き、肌は雪のように白く、くちびるはバラのように赤くうるおっていた。これは上ものだ。
ギリムはつとめて優しく聞いた。
「お嬢さん、お名前は?」
「はい。リリーと申します」
ギリムは生まれついての悪党だと自負していた。生まれてこの方悪い事をしたと、後悔した事は一度もなかった。ギリムは常に人を騙して金を得ていた。騙した人間をあわれんだ事は一度もない。だまされる方が悪いのだ。
そろそろ仲間が商品に目をつけている頃だ。ギリムが街の市場をブラブラ歩いていると、若い女のかん高い声が聞こえた。
「ですから、先ほどから謝っているではありませんか」
「お嬢さん。謝って済む問題じゃないんだよ。かわいそうに弟がこんなに痛がっているじゃないか」
「ちょっとぶつかっただけでケガをするなんておかしいです!」
ギリムが市場の道の真ん中にできた人だかりをのぞくと、まさに仲間が商品を品定めしている所だった。ガラの悪い二人組が、美しい娘にいんねんをつけている。街の人々は、関わり合いになりたくないとみえる。だが事のなり行きが気になって、チラチラと男二人組と美しい娘を見ていた。
ギリムはやじ馬を押しのけて輪の中に入ると、明るい声で言った。
「アイリンここにいたのか。探したぞ?」
ギリムはさも美しい娘の身内であるかのように、困っている娘の肩を抱いて言った。
「私の姪があなた方に何か失礼をいたしましたでしょうか?」
「なに!お前の姪だと!この娘が俺にぶつかってケガをさせたのだ!」
「それは大変失礼をいたしました。ではこれから私が医者にご案内いたします。診療代は勿論お支払いさせていただきます」
男二人組は苦い顔をしてから、気をつけろよ。と叫んで行ってしまった。困っていた娘はホッと息をついてからギリムに言った。
「危ない所を助けていただきありがとうございました」
ギリムは娘に振り向くと柔和な笑顔で答えた。
「ええ、たいした事ありませんよ。お嬢さんが無事でようございました」
ギリムの武器は笑顔だ。この笑顔で娘はすぐに安心して心を開いてしまう。先ほど娘にいんねんをつけた二人組はギリムの仲間だ。いい商品を見つけると、いんねんをふっかける。それを、偶然通りかかったギリムが仲裁して娘の警戒心をとくのだ。
ギリムはぜげんだった。美しい娘をさらって、娼館に売るのだ。元手がかからず大金が稼げる、こんなうまい商売は他にない。
ギリムはあらためてしげしげと商品の娘を見てため息をついた。とても美しい娘だった。髪はカラスの濡れ羽のように黒く、瞳は黒曜石のように輝き、肌は雪のように白く、くちびるはバラのように赤くうるおっていた。これは上ものだ。
ギリムはつとめて優しく聞いた。
「お嬢さん、お名前は?」
「はい。リリーと申します」
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