ひよっこ召喚師モフモフの霊獣に溺愛される

勝利

　領主の屋敷を守る用心棒たちは一斉に大声をあげ、門からなだれ込んで来る悪漢たちと剣を交えた。キィーン、キィーンと剣の打ち合う音が響く。フィンは足元の霊獣ブランに叫んだ。

「ブラン！植物拘束魔法！」
『ええ！』

　ブランの足元から勢いよくツタが伸び出し、悪漢たちをグルグル巻きにして拘束していく。悪漢は全員で八人いた。それを見た用心棒たちは皆ポカンと口を開けていた。

　悪漢たちは口々に悪たいをつきだした。

「きたねぇぞ！魔法使いがいるなんて聞いてねぇぞ！」
「おい！この縄をほどきやがれ！」

　フィンはグルグル巻きにされ、転がっている悪漢たちに言った。

「僕たちは貴方たちに危害を加えたいわけではありません。フティの人たちの依頼を放棄してもらえませんか？」

　フィンの言葉に、悪漢のリーダーらしき男が吐き捨てるように言った。

「俺たちは受けた依頼は必ずやりとげる。そうでねぇと今後の依頼にさしつかえるからな。俺たちは負けた、殺すなり騎士団に突き出すなりしろってんだ！」

　フィンはクスリと笑った。見た目は恐ろしい犯罪者集団だが、彼らには彼らなりの美学があるようだ。フィンはおだやかに言った。

「では僕から依頼をしていいですか？貴方たちに領主の殺しを依頼したフティの人たちに伝言を頼みたいんです。領主の罪は、僕たちが必ず明らかにします。どうかもう少し待ってください。と伝えてくれませんか？」

　フィンはポケットに入れっぱなしだった、武闘大会の賞金、金貨二枚を取り出して言った。

「僕あまりお金持ってなくて、このお金でいいですか？」

　悪漢のリーダーは、ふてくされたような顔で答えた。

「そんなはした金いらねぇ。タダでいい」
「それはいけません。依頼は依頼です」
「・・・。わかった、金貨二枚で依頼を受けてやる」

　フィンは微笑んでブランに植物拘束魔法を解いてもらった。


　フィンたちは悪漢の集団が帰って行くのを見ていた。やっと我に返ったモノリがフィンに言った。

「フィン、一体これはどういう事なんだ？」
「モノリさんたちもフティの人たちも争わなくていいという事です。僕たちが倒すべきは領主ただ一人です」

　フィンの言葉に用心棒たちは喜んではやしたてた。ベノーがフィンに聞いた。

「でもよぉ、フィン。領主の悪事の証拠をあばくなんてどうしたらいいんだ？」
「エメリンお嬢さんが教えてくれたんです。税金の横領をした裏帳簿は、領主の部屋の金庫の中にあるって。その裏帳簿を騎士団に提出すれば、領主は言い逃れできないはずです」
「フィン。情けねぇ話だか、フティの街の騎士団はすでに領主に懐柔されているんだ。訴え出たって相手になんかしてくれねぇよ」
「いいえ。フティの騎士団ではありません、王都の騎士団に来てもらいます」
「何だって！王都の騎士団だって？！」
「はい。王都の騎士団長ランハートさまは、立派な方だと兄が言ってました。税金の横領は国王に対する反逆罪です。きっと厳しい処置をしてくれます」
「わかった、フィン。俺たちも協力するぜ。どうしたらいい？」
「ありがとうございます。ベノーさん、皆さん。僕に考えがあります」

　フィンは用心棒たちに領主の裏帳簿を奪う作戦を話した。