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夜襲

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「起きろ!フィン」

 ベノーの大声に、フィンはベッドから飛び起きた。フィンは目をこすりながらベノーに聞いた。

「屋敷が攻撃されているんですか?」
「ああ。今用心棒の連中が全員出ている。フィン、これを着ろ」

 ベノーが鎧のような物を手渡した。フィンは手に持ってみて、異変に気づいて叫んだ。

「何だこれ。竹でできてる!」

 フィンがベノーから手渡された鎧は、何と小さく切った竹を組み合わせて作った鎧だった。こんな装備だからホーンも弓矢を防げなかったのだろう。

 ベノーはもたつくフィンに鎧を着せた。ベノーが厳しい表情でフィンの足元の白猫のブランを見て言った。

「フィン、ブランは危険だから置いていけ」
「大丈夫です。ブランはとっても強いんです!」
「大きくなって敵に襲いかかるのか?やめとけ、弓矢の的になるだけだ」

 ベノーはブランの事も心配してくれているようだ。フィンは微笑んでベノーに言った。

「僕とブランは一心同体なんです」

 ベノーはため息をついて、フィンとブランをうながした。


 フィンとブランが屋敷の外に出てみると、状況が一変していた。屋敷の周りにはかがり火が焚かれていて、屋敷を照らしていた。用心棒たちが木の板を盾がわりにして、飛び込んでくるおびただしい数の弓矢を防いでいた。ベノーは叫んだ。

「もうすぐ敵が門を破って中に入って来る。入って来た奴らを剣で確実にしとめろ!」
「おう!」

 用心棒たちは口々に呼応の声をあげた。フィンはゴクリとツバを飲んだ。これから戦いが始まる。もしかすると、誰かが命を落とすかもしれないのだ。ベノーはフィンにも木の板と、真剣を持たせて厳しい顔で言った。

「敵が来たらためらわずに斬れ。でないと死ぬぞ」
「・・・。はい。」

 フィンは木の板で雨のように降ってくる弓矢を防いだ。ドンッドンッと弓矢が板に当たる衝撃を感じた。フィンは木の板を支えながらブランに言った。

「ブラン。弓矢を放っている敵を植物拘束魔法で捕まえられないかな?」
『敵の場所が遠すぎるだわよ。敵が侵入して来て目視できたら可能なのさ』
「わかった。それまで敵の弓矢に耐えなきゃね?」

 そこでフィンの持っている木の板に異変が起きた。おびただしい数の弓矢を受け、木の板が真っ二つに割れてしまったのだ。フィンはしまったと思い胸元の魔法具のペンダントに触れて、防御魔法を発動させようとした。突然何かがフィンにおおいかぶさった。その何かに容赦なく弓矢が刺さる。

「ベノーさん!」

 フィンを弓矢から守ったのはベノーだった。ベノーの背中には二本の矢が深々と刺さっていた。すぐに弓矢を引き抜いて、ブランの治癒魔法をほどこさなければ危険だ。フィンはブランに鉱物防御魔法で自分たちを守るよう指示した。

 ベノーは息も絶え絶えな声でフィンに言った。

「フィン、俺の稼いだ金を、息子に。アレンに渡してくれ。それから、愛してるって伝えてくれ」
「ベノーさん!死んじゃダメだ!息子さんには自分で気持ちを伝えて!ベノーさん、ゆっくり息を吸って、ゆっくり息を吐いて、」

 フィンの言葉に、ベノーはかんまんな動作でしたがった。ゆっくりと息を吸い、ゆっくりと息を吐いた。その瞬間、フィンは二本の弓矢をむんずと掴み、引き抜いた。

「ブラン!」
『ええ。任せて!』

 フィンのかけ声に、ブランが治癒魔法を発動させた。ベノーの身体が輝き出す。ベノーの背中の傷口はみるみるふさがった。

「ベノーさん。痛みはありませんか?」

 フィンの言葉に、ベノーは不思議そうに身体を起こし、自分を弓矢から守ってくれている透明な鉱物を見て言った。

「フィン。これは一体どういう事なんだ?」
「ベノーさん、僕の事を助けてくれてありがとう。ブランは霊獣なんだ、色んな魔法が使えるんです」

 フィンがベノーに説明をしていると、屋敷の門が破られ、悪漢たちがなだれ込んで来た。
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