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ドミニクとエメリン
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大きなブランに乗ったフィンとエメリンは、しばらくしてフティの街に到着した。市場はすでに閉まっていたが、酒場からもれ出る灯りは、赤々と輝いていた。
フィンはエメリンとブランを酒場の外に待たせて酒場に入っていった。機嫌良く酒を飲んでいる手近な男性に声をかける。
「こんばんわ。いい夜ですね?」
「なんだガキがこんな時間に酒場に来るもんじゃねぇ。帰んな!」
「はい。用事が済んだらすぐに。おじさん、ドミニクの家知ってますか?」
酔っ払った中年男は、ドミニクの家の詳しい場所は知らなかったが、知っている酔客を連れて来てくれた。酔客はろれつの回らない口でドミニクの家の場所を説明してくれた。フィンは親切な酔っ払いたちにていねいに礼を言って酒場を出た。
フィンはエメリンと共に、大きなブランに乗って走り出した。ドミニクの家はフティの街の外の高台にあるらしい。目的の高台に、粗末なほったて小屋が立っていた。火の気はない。きっとドミニクは眠っているのだろう。フィンはドアをノックして言った。
「ドミニク、真夜中にすみません。僕は武闘大会で対戦したフィンです」
しばらくすると、ほったて小屋の中がゴゾゴソと物音がして、静かにドアが開いた。フィンは明るいランプに目を細めた。ドミニクはランプをかざしてフィンの顔を確認して言った。
「ああ、あの時の小僧。何だ夜中に」
「ドミニク、貴方に会いたいという人がいるんです」
フィンは背後にいる、フードをまぶかにかぶったエメリンの背中を押した。エメリンはためらいがちにドミニクの前に立つと、ゆっくりした動作でフードを下ろした。ドミニクは驚きの表情で言った。
「君は、エメリン?」
ドミニクの言葉に、エメリンは大きな瞳からポロポロと涙を流して答えた。
「ドミニク。最後に一目だけ会いたかった。ラナおばさんの事、本当にごめんなさい」
「エメリンのせいじゃないよ」
「いいえ、私のせい。お父さまを説得できなかったバカな私の」
「メイドのおばさんが言ってたよ。エメリンは領主に母さんに医者を呼んでくれと頼んでくれたんだってね。だけど領主が怒ってエメリンを部屋に閉じ込めてしまったんだって」
「あの時、ドアをけやぶってでも、窓から飛び降りてでもお父さまを説得すべきだったわ」
「エメリン、よく聞いてくれ。母さんは、エメリンが医者を呼んでくれと頼んでくれた事を聞いてとても喜んでいたよ?死ぬ間際までエメリンの事を心配していた。母さんはね、エメリンの事を自分の娘のようだって言っていたよ」
ドミニクの優しい告白に、エメリンは顔をくしゃくしゃにして言った。
「私も、私もラナおばさんが大好き。ラナおばさんが本当のお母さんなら良かったってずっと思ってた。ラナおばさんとドミニクが屋敷を出てから、毎日毎日願ってた。ラナおばさんとドミニクに会いたいって」
「俺もだよエメリン。ずっと会いたいかった。母さんが死ぬ間際に言ったんだ。エメリンを守ってあげてって。俺は何としてもエメリンの側に行きたくて、何度も用心棒になろうとしたけど、領主に警戒されてとうしてもなれなかった」
「ドミニク、ドミニク」
エメリンは子供のように泣きじゃくった。ドミニクはエメリンを優しく抱きしめた。
フィンはエメリンとブランを酒場の外に待たせて酒場に入っていった。機嫌良く酒を飲んでいる手近な男性に声をかける。
「こんばんわ。いい夜ですね?」
「なんだガキがこんな時間に酒場に来るもんじゃねぇ。帰んな!」
「はい。用事が済んだらすぐに。おじさん、ドミニクの家知ってますか?」
酔っ払った中年男は、ドミニクの家の詳しい場所は知らなかったが、知っている酔客を連れて来てくれた。酔客はろれつの回らない口でドミニクの家の場所を説明してくれた。フィンは親切な酔っ払いたちにていねいに礼を言って酒場を出た。
フィンはエメリンと共に、大きなブランに乗って走り出した。ドミニクの家はフティの街の外の高台にあるらしい。目的の高台に、粗末なほったて小屋が立っていた。火の気はない。きっとドミニクは眠っているのだろう。フィンはドアをノックして言った。
「ドミニク、真夜中にすみません。僕は武闘大会で対戦したフィンです」
しばらくすると、ほったて小屋の中がゴゾゴソと物音がして、静かにドアが開いた。フィンは明るいランプに目を細めた。ドミニクはランプをかざしてフィンの顔を確認して言った。
「ああ、あの時の小僧。何だ夜中に」
「ドミニク、貴方に会いたいという人がいるんです」
フィンは背後にいる、フードをまぶかにかぶったエメリンの背中を押した。エメリンはためらいがちにドミニクの前に立つと、ゆっくりした動作でフードを下ろした。ドミニクは驚きの表情で言った。
「君は、エメリン?」
ドミニクの言葉に、エメリンは大きな瞳からポロポロと涙を流して答えた。
「ドミニク。最後に一目だけ会いたかった。ラナおばさんの事、本当にごめんなさい」
「エメリンのせいじゃないよ」
「いいえ、私のせい。お父さまを説得できなかったバカな私の」
「メイドのおばさんが言ってたよ。エメリンは領主に母さんに医者を呼んでくれと頼んでくれたんだってね。だけど領主が怒ってエメリンを部屋に閉じ込めてしまったんだって」
「あの時、ドアをけやぶってでも、窓から飛び降りてでもお父さまを説得すべきだったわ」
「エメリン、よく聞いてくれ。母さんは、エメリンが医者を呼んでくれと頼んでくれた事を聞いてとても喜んでいたよ?死ぬ間際までエメリンの事を心配していた。母さんはね、エメリンの事を自分の娘のようだって言っていたよ」
ドミニクの優しい告白に、エメリンは顔をくしゃくしゃにして言った。
「私も、私もラナおばさんが大好き。ラナおばさんが本当のお母さんなら良かったってずっと思ってた。ラナおばさんとドミニクが屋敷を出てから、毎日毎日願ってた。ラナおばさんとドミニクに会いたいって」
「俺もだよエメリン。ずっと会いたいかった。母さんが死ぬ間際に言ったんだ。エメリンを守ってあげてって。俺は何としてもエメリンの側に行きたくて、何度も用心棒になろうとしたけど、領主に警戒されてとうしてもなれなかった」
「ドミニク、ドミニク」
エメリンは子供のように泣きじゃくった。ドミニクはエメリンを優しく抱きしめた。
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