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乗り合い馬車と盗賊
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ソフィアの側に、いつの間にか少年が立っていた。少年は、今まさにソフィアの手を掴もうとしていた盗賊の右腕を掴んでいる。
ソフィアはまずいと思った。盗賊は背の高い大柄の男だった。だが少年は、ソフィアより少し身長が高いくらいの小柄な体格だ。少年は盗賊をにらみながらソフィアに言った。
「お姉さん、ゆっくり後ろにさがってください」
ソフィアは仕方なく後ろにさがった。盗賊は相手が少年だとわかると、なめきったような顔になった。だがおかしな事に、盗賊が少年に掴まれた腕を振りはらおうとしてもビクともしないのだ。
しびれをきらした盗賊は、自由になる左手の剣で少年に斬りかかった。ソフィアはキャッと悲鳴をあげた。なんと少年は右腕で剣を受けたのだ。ソフィアは少年の腕が斬り落とされてしまったと思い、きつく目を閉じた。
だが、キィンと高い金属音がした。ソフィアがおそるおそる目を開いて少年の右腕を見ると、少年は右手に手甲をしていた。これで盗賊の剣を防御したのだろう。
盗賊は少年が掴んでいる腕を放させようとやっきになっているようだが、盗賊と少年はびどうだにしなかった。驚いた事にこの小柄な少年は盗賊と同じくらい、いや盗賊以上に力が強いようだ。
盗賊と少年の攻防を、ソフィアがハラハラしながら見守っていると、突然少年が身体の力を抜いた。すると、最大限の力を入れていた盗賊が、バランスを崩した。すかさず少年が右のこぶしで、盗賊の左頬を殴った。
身体の大きな盗賊は、倒れて動かなくなった。仲間を倒された二人の盗賊は、怒って少年に斬りかかろうとした。少年がするどい声で叫んだ。
「ブラン!」
すると、ソフィアたちの後ろにいた銀髪の美少女が一回転した。驚いた事に、美少女が白猫に変わったのだ。白猫の足元から、突然植物のツタが伸び出した。そのツタはまるで意志を持っているように二人の盗賊に巻きついた。
この白猫は霊獣だ。ソフィアは白猫の強力な魔力を目の当たりにして気づいた。だとすると、目の前のこの少年は召喚士なのだろう。話には聞いた事がある、人間が霊獣と契約すると、ものすごい魔力を操る事ができるのだ。
ソフィアがぼう然としている間に、状況は一変していた。少年召喚士と美少女になる霊獣が、盗賊を制圧したのだ。
少年召喚士は、ソフィアたちに振り向くと、優しい声で言った。
「皆さん、安心してください。僕たちは馬車を襲う盗賊を捕まえにやって来た冒険者です」
乗客たちからは、ホゥッと安どのため息がもれた。少年召喚士は殴り倒した盗賊の胸元から金の入った袋を出すと、商人の男に手渡していた。商人の男は嬉しそうに礼を言っていた。
少年召喚士は次に連れてきていたハトを鳥かごから出し、空に放った。少年召喚士の行動をソフィアが不思議そうに見つめていると、少年召喚士がニコリと笑って言った。
「あのハトは伝書バトなんです。僕たちが盗賊を捕まえた場所を騎士団に連絡したんです。だから皆さん、騎士団が到着するまでこの場で待機してください」
どうやら騎士団が到着するまで、ソフィアたちはこの場を動けないらしい。ソフィアは仕方ないと待つ事にした。
だが突然の悲鳴でソフィアはビクリと後ろを振り向いた。悲鳴の主は、子連れの母親だった。母親は悲痛そうに叫んでいた。
「キャアッ!ラナ!ラナ!しっかりして?!」
ソフィアが親子を見ると、馬車の中でぐずっていた娘がグッタリしていた。どうやら体調が悪いらしい。少年召喚士は娘の側に近寄ってから、白猫に言った。
「ブラン、お願い。この女の子を治して?」
少年召喚士の願いに、白猫の霊獣はしきりにニャッニャッと言っている。どうやらできないと言っているようだ。ソフィアはたまらず叫んだ。
「私に診させてください!私は薬師です!」
ソフィアは歩み出て、娘の容態を診た。娘は荒い息をしてグッタリしていた。ソフィアは娘のおでこに手をおいて言った。
「ひどい熱!早くどこかで治療しないと」
ソフィアはまずいと思った。盗賊は背の高い大柄の男だった。だが少年は、ソフィアより少し身長が高いくらいの小柄な体格だ。少年は盗賊をにらみながらソフィアに言った。
「お姉さん、ゆっくり後ろにさがってください」
ソフィアは仕方なく後ろにさがった。盗賊は相手が少年だとわかると、なめきったような顔になった。だがおかしな事に、盗賊が少年に掴まれた腕を振りはらおうとしてもビクともしないのだ。
しびれをきらした盗賊は、自由になる左手の剣で少年に斬りかかった。ソフィアはキャッと悲鳴をあげた。なんと少年は右腕で剣を受けたのだ。ソフィアは少年の腕が斬り落とされてしまったと思い、きつく目を閉じた。
だが、キィンと高い金属音がした。ソフィアがおそるおそる目を開いて少年の右腕を見ると、少年は右手に手甲をしていた。これで盗賊の剣を防御したのだろう。
盗賊は少年が掴んでいる腕を放させようとやっきになっているようだが、盗賊と少年はびどうだにしなかった。驚いた事にこの小柄な少年は盗賊と同じくらい、いや盗賊以上に力が強いようだ。
盗賊と少年の攻防を、ソフィアがハラハラしながら見守っていると、突然少年が身体の力を抜いた。すると、最大限の力を入れていた盗賊が、バランスを崩した。すかさず少年が右のこぶしで、盗賊の左頬を殴った。
身体の大きな盗賊は、倒れて動かなくなった。仲間を倒された二人の盗賊は、怒って少年に斬りかかろうとした。少年がするどい声で叫んだ。
「ブラン!」
すると、ソフィアたちの後ろにいた銀髪の美少女が一回転した。驚いた事に、美少女が白猫に変わったのだ。白猫の足元から、突然植物のツタが伸び出した。そのツタはまるで意志を持っているように二人の盗賊に巻きついた。
この白猫は霊獣だ。ソフィアは白猫の強力な魔力を目の当たりにして気づいた。だとすると、目の前のこの少年は召喚士なのだろう。話には聞いた事がある、人間が霊獣と契約すると、ものすごい魔力を操る事ができるのだ。
ソフィアがぼう然としている間に、状況は一変していた。少年召喚士と美少女になる霊獣が、盗賊を制圧したのだ。
少年召喚士は、ソフィアたちに振り向くと、優しい声で言った。
「皆さん、安心してください。僕たちは馬車を襲う盗賊を捕まえにやって来た冒険者です」
乗客たちからは、ホゥッと安どのため息がもれた。少年召喚士は殴り倒した盗賊の胸元から金の入った袋を出すと、商人の男に手渡していた。商人の男は嬉しそうに礼を言っていた。
少年召喚士は次に連れてきていたハトを鳥かごから出し、空に放った。少年召喚士の行動をソフィアが不思議そうに見つめていると、少年召喚士がニコリと笑って言った。
「あのハトは伝書バトなんです。僕たちが盗賊を捕まえた場所を騎士団に連絡したんです。だから皆さん、騎士団が到着するまでこの場で待機してください」
どうやら騎士団が到着するまで、ソフィアたちはこの場を動けないらしい。ソフィアは仕方ないと待つ事にした。
だが突然の悲鳴でソフィアはビクリと後ろを振り向いた。悲鳴の主は、子連れの母親だった。母親は悲痛そうに叫んでいた。
「キャアッ!ラナ!ラナ!しっかりして?!」
ソフィアが親子を見ると、馬車の中でぐずっていた娘がグッタリしていた。どうやら体調が悪いらしい。少年召喚士は娘の側に近寄ってから、白猫に言った。
「ブラン、お願い。この女の子を治して?」
少年召喚士の願いに、白猫の霊獣はしきりにニャッニャッと言っている。どうやらできないと言っているようだ。ソフィアはたまらず叫んだ。
「私に診させてください!私は薬師です!」
ソフィアは歩み出て、娘の容態を診た。娘は荒い息をしてグッタリしていた。ソフィアは娘のおでこに手をおいて言った。
「ひどい熱!早くどこかで治療しないと」
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