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防御魔法具
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バレットは黙ったまま口を聞かないアレックスに、再度聞いた。
「いいだろ?アレックス。俺はフィンを武闘家にする。アレックス、手伝ってくれ」
アレックスは苦虫を噛み潰したような顔になりながらうめくようにいった。
「フィンに武闘の才能があるのは認める。だがやはり危険すぎる。想定される敵は剣を持っていたり、強力な魔法を使うかもしれないんだぞ?」
バレットはアレックスの不安な疑問に対して、噛んでふくめるように丁寧に答えた。
「確かに剣の達人が相手だったら危険だ。だがそれはフィンが剣の道を歩み続けていても同じ事だ。それにな、魔法は基本的に遠距離攻撃だ。フィンのように間合いに入って肉弾戦に持ち込んだ方が勝機につながりやすい」
アレックスはなおも顔をしかめている。アレックスはとにかくフィンの事が心配なのだろう。フィンに危険な事をさせてケガをさせたくないのだ。だがアレックスの言い分ももっともだと思い、バレットは遠くでフィンを見守っていた彼の契約霊獣のブランに質問した。
「おいブラン。もしフィンが接近戦で戦っている時、危険になったら防御魔法で助ける事はできるか?」
白猫のブランは、しきりにニャッニャッと答えた。フィンが通訳する。
「ブランが言うには、自分が近くにいて、僕が止まっている状態だったら防御魔法を発動できるって。だけど僕が動いているなら的確に防御魔法を使うのは難しいって」
ブランの言葉を聞いてバレットはふむとあごに手を置いて考えた。バレットは魔法使いなので、接近戦の場でも器用に防御魔法を使う事ができる。だがフィンが自分で使える魔法は鉱物精製魔法だ。自分が攻撃されそうになった時、盾を精製しても間に合うかどうか。バレットが思案していると、アレックスが口をはさんだ。
「それならフィンに魔法具を持たせりゃいいじゃねぇか」
そこでバレットはハッとした。そうかその手があったか。フィンが魔法具を持って、危険があれば自分で防御魔法を発動させればいいのだ。バレットはうなずいてから、腰にさげていた麻袋の中からゴソゴソと何かを取り出した。アレックスとフィンがのぞきこんでくる。アレックスがすっとんきょうな声をあげた。
「なんだこの気味の悪いペンダントは?!」
バレットはアレックスをにらみながら答えた。
「アレックスが言ったんじゃねぇか。いつもお世話になっているリタに感謝の贈り物をしろって。だからリタにこれを持っていったら、ゴミを見るような目でにらまれて、いらないと言われた」
バレットの言葉にアレックスは盛大にため息をつきながら言った。
「バレット、お前女の子にプレゼンを買う時には俺もついて行くぞ。こんな呪いのアイテムみたいなの買ったら怒るに決まってるだろう」
「はぁ?何で俺が女なんかにプレゼントしなけりゃいけないんだよ!」
「・・・バレット、お前モテないだろう」
「お前だってモテねぇだろ!アレックス!」
「いいんですぅ!俺には美人で優しい嫁さんがいるんですぅ!」
バレットとアレックスが不毛な言い合いをしていると、フィンが口をはさんだ。
「へぇ、アレックスは奥さんがいるの?」
そこでバレットはまずい、と思ってアレックスの顔を見た。アレックスは驚いた顔をしてから、穏やかに微笑んでからフィンに言った。
「ああそうだよフィン。俺には故郷に嫁さんがいるんだ」
「そうなんだ。ならアレックスはよく故郷に帰っているんだね?」
「ああ、そうだな」
アレックスの穏やかな表情を見て、バレットはハッと息をついた。そして、手の中にある魔法具のペンダントをしげしげと眺めた。そんなに悪い品物だろうか。太めの鎖にペンダントトップは大きめの黒メノウだ。黒い艶やかな宝石の中に、白い網目の模様がまるで目と口のようで、どことなくドクロを思わせる。バレットは自身の手の中を覗き込んできたフィンが見やすいように手の中のペンダントを見せてやった。
「わぁ、まるでドクロみたいだ。面白いねぇ」
「そうだろ?面白いだろ!」
フィンはバレットのペンダントの良さをわかってくれたようだ。アレックスは渋い顔で小言を言う。
「なんで面白いペンダントをプレゼントしたらリタが喜ぶと思ったんだ?」
「ん?何となく。でも後でメチャクチャ高い宝石買わされたぜ?こんなちっちぇえのに!」
バレットは親指と人差し指で小さな幅を作りながら言った。アレックスがなおもため息をついているのが面白くない。バレットはフィンに向き直って言った。
「フィンはこのペンダント気に入ったよな?」
「うん、僕見た目なんてどうでもいい」
「なんかトゲのある言い方だなぁ。まぁいいや、パンター」
バレットは気を取り直して自身の契約霊獣を呼んだ。木の下で昼寝をしていた黒ヒョウのパンターはバレットの側まで近寄ってきた。バレットはパンターに黒メノウのペンダントに風魔法を入れてほしいと頼んだ。パンターはうなずいてペンダントトップに鼻をチョンと押し付けた。するとペンダントが輝き出す。風属性の霊獣の強大な魔法が吹き込まれたのだ。
バレットはペンダントをフィンの首につけてやってから言った。
「よしフィン、これから俺は剣でお前を斬る。フィン、お前はこの魔法具のペンダントの防御魔法を使いながら剣を受けるんだ」
バレットの言葉にフィンは真剣な表情でうなずいた。バレットは間髪入れずにフィンに斬りかかった。フィンはペンダントに軽く触れた。すると、バレットの一太刀はフィンの側近くで止まった。バレットはニヤリと笑ってからアレックスを見た。アレックスは仕方なさそうにうなずいた。
「いいだろ?アレックス。俺はフィンを武闘家にする。アレックス、手伝ってくれ」
アレックスは苦虫を噛み潰したような顔になりながらうめくようにいった。
「フィンに武闘の才能があるのは認める。だがやはり危険すぎる。想定される敵は剣を持っていたり、強力な魔法を使うかもしれないんだぞ?」
バレットはアレックスの不安な疑問に対して、噛んでふくめるように丁寧に答えた。
「確かに剣の達人が相手だったら危険だ。だがそれはフィンが剣の道を歩み続けていても同じ事だ。それにな、魔法は基本的に遠距離攻撃だ。フィンのように間合いに入って肉弾戦に持ち込んだ方が勝機につながりやすい」
アレックスはなおも顔をしかめている。アレックスはとにかくフィンの事が心配なのだろう。フィンに危険な事をさせてケガをさせたくないのだ。だがアレックスの言い分ももっともだと思い、バレットは遠くでフィンを見守っていた彼の契約霊獣のブランに質問した。
「おいブラン。もしフィンが接近戦で戦っている時、危険になったら防御魔法で助ける事はできるか?」
白猫のブランは、しきりにニャッニャッと答えた。フィンが通訳する。
「ブランが言うには、自分が近くにいて、僕が止まっている状態だったら防御魔法を発動できるって。だけど僕が動いているなら的確に防御魔法を使うのは難しいって」
ブランの言葉を聞いてバレットはふむとあごに手を置いて考えた。バレットは魔法使いなので、接近戦の場でも器用に防御魔法を使う事ができる。だがフィンが自分で使える魔法は鉱物精製魔法だ。自分が攻撃されそうになった時、盾を精製しても間に合うかどうか。バレットが思案していると、アレックスが口をはさんだ。
「それならフィンに魔法具を持たせりゃいいじゃねぇか」
そこでバレットはハッとした。そうかその手があったか。フィンが魔法具を持って、危険があれば自分で防御魔法を発動させればいいのだ。バレットはうなずいてから、腰にさげていた麻袋の中からゴソゴソと何かを取り出した。アレックスとフィンがのぞきこんでくる。アレックスがすっとんきょうな声をあげた。
「なんだこの気味の悪いペンダントは?!」
バレットはアレックスをにらみながら答えた。
「アレックスが言ったんじゃねぇか。いつもお世話になっているリタに感謝の贈り物をしろって。だからリタにこれを持っていったら、ゴミを見るような目でにらまれて、いらないと言われた」
バレットの言葉にアレックスは盛大にため息をつきながら言った。
「バレット、お前女の子にプレゼンを買う時には俺もついて行くぞ。こんな呪いのアイテムみたいなの買ったら怒るに決まってるだろう」
「はぁ?何で俺が女なんかにプレゼントしなけりゃいけないんだよ!」
「・・・バレット、お前モテないだろう」
「お前だってモテねぇだろ!アレックス!」
「いいんですぅ!俺には美人で優しい嫁さんがいるんですぅ!」
バレットとアレックスが不毛な言い合いをしていると、フィンが口をはさんだ。
「へぇ、アレックスは奥さんがいるの?」
そこでバレットはまずい、と思ってアレックスの顔を見た。アレックスは驚いた顔をしてから、穏やかに微笑んでからフィンに言った。
「ああそうだよフィン。俺には故郷に嫁さんがいるんだ」
「そうなんだ。ならアレックスはよく故郷に帰っているんだね?」
「ああ、そうだな」
アレックスの穏やかな表情を見て、バレットはハッと息をついた。そして、手の中にある魔法具のペンダントをしげしげと眺めた。そんなに悪い品物だろうか。太めの鎖にペンダントトップは大きめの黒メノウだ。黒い艶やかな宝石の中に、白い網目の模様がまるで目と口のようで、どことなくドクロを思わせる。バレットは自身の手の中を覗き込んできたフィンが見やすいように手の中のペンダントを見せてやった。
「わぁ、まるでドクロみたいだ。面白いねぇ」
「そうだろ?面白いだろ!」
フィンはバレットのペンダントの良さをわかってくれたようだ。アレックスは渋い顔で小言を言う。
「なんで面白いペンダントをプレゼントしたらリタが喜ぶと思ったんだ?」
「ん?何となく。でも後でメチャクチャ高い宝石買わされたぜ?こんなちっちぇえのに!」
バレットは親指と人差し指で小さな幅を作りながら言った。アレックスがなおもため息をついているのが面白くない。バレットはフィンに向き直って言った。
「フィンはこのペンダント気に入ったよな?」
「うん、僕見た目なんてどうでもいい」
「なんかトゲのある言い方だなぁ。まぁいいや、パンター」
バレットは気を取り直して自身の契約霊獣を呼んだ。木の下で昼寝をしていた黒ヒョウのパンターはバレットの側まで近寄ってきた。バレットはパンターに黒メノウのペンダントに風魔法を入れてほしいと頼んだ。パンターはうなずいてペンダントトップに鼻をチョンと押し付けた。するとペンダントが輝き出す。風属性の霊獣の強大な魔法が吹き込まれたのだ。
バレットはペンダントをフィンの首につけてやってから言った。
「よしフィン、これから俺は剣でお前を斬る。フィン、お前はこの魔法具のペンダントの防御魔法を使いながら剣を受けるんだ」
バレットの言葉にフィンは真剣な表情でうなずいた。バレットは間髪入れずにフィンに斬りかかった。フィンはペンダントに軽く触れた。すると、バレットの一太刀はフィンの側近くで止まった。バレットはニヤリと笑ってからアレックスを見た。アレックスは仕方なさそうにうなずいた。
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