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新人召喚士ライラ
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フィンたちはティナに連れられて依頼人である教頭に引き合わせてくれた。教頭は五十代くらいのがっしりとした男性だった。教頭は、フィンとリリーを見てあからさまに嫌な顔をして言った。
「君たちはまだ新人召喚士だね?私は依頼要項に戦士か魔法使いとしていたんだが」
フィンたちはまたもや依頼人に渋い顔をされてしまった。フィンの横にいたティナが口ぞえをしてくれた。
「教頭先生!フィンとリリーは新人召喚士だけど、とっても強いんです。私たちの事も助けてくれたんですよ?!」
教頭はティナと肩に乗ったタップをギロリとにらんだ。ティナがギクリと固まる。教頭は地をはうような低い声で言った。
「ティナ、タップあれだけ霊獣ハンターを捕まえに行くなと言ったはずだ。お前たちには厳しい処分をくだすからな?」
ティナとタップはうつむいて黙ってしまった。すると、教頭室のドアがノックもなく開いた。そしてものすごい勢いで少女が飛び込んで来た。
「ティナ!タップ!」
少女はティナに気づくと勢いよくティナに抱きついていった。
「ティナ!なんて無茶な事したの?!ケガはない?」
「心配かけてごめんなさいライラ。私とタップは大丈夫、この人たちが助けてくれたから」
ティナはそう言ってフィンたちにライラと呼ばれた少女を紹介してくれた。ライラは長い髪をおさげにした優しげな少女だった。ライラは、霊獣ハンターに襲われ契約霊獣を奪われた被害者だったのだ。ライラはフィンたちに頭を下げて丁寧にお礼を言った後、教頭室の隅で小さくなっている霊獣ハンターたちをキッとにらんだ。そしてツカツカと彼らに歩み寄ると、手前の男のえり首をものすごい力で持ち上げて大声で叫んだ。
「私のリナリアはどこなの?!早く言いなさい!」
ライラは男を激しくゆさぶった。男は悲鳴をあげている。見かねたティナがライラを霊獣ハンターの男から引き離した。ライラの顔は怒りに紅く染まっていた。その顔がゆがむと大声で泣きだした。おそらく彼女の契約霊獣の名前だろう。リナリア、リナリアと悲しげに呼んでいた。ティナはライラをギュッと抱きしめた。
フィンはライラの事が可哀想でならなかった。契約者と契約霊獣の関係はとても固いきずなで結ばれている。その相手と一緒にいられないという事はこの上もない苦しみだ。フィンは教頭を強い瞳で見つめて言った。
「教頭先生!確かに僕たちはティナと同じように新人召喚士です。ですが、理不尽な暴力で召喚士と契約霊獣が引き離される事は許せません。僕らは必ず霊獣たちを救出します。どうかこの依頼を受けさせてください」
教頭はこわばった顔でフィンたちを見つめたが、やがて大きなため息をついて言った。
「わかった。君たちに依頼をお願いしよう」
フィンは嬉しくなってティナとライラを見た。ティナは笑顔でフィンを見返した。ライラは泣きはらした顔でポカンとフィンを見ていた。
フレイヤはホッと息をついた。どうやらリリーたちは依頼を受ける事ができるようだ。フレイヤはふと教頭が自分を見ている事に気がついた。フレイヤは首をかしげた。この男とどこかで会った事があるだろうか。フレイヤには記憶がなかった。フィンたちはライラから霊獣ハンターたちにどうやって捕まったのかを詳しく聞いていた。
ライラは思い出しても口惜しいようで、ハンカチを握りしめて泣きながら話しだした。
「私はリナリアと依頼を終えて学校に帰ろうとしていたの。だけどその途中で、具合が悪そうに倒れている男の人がいたわ。リナリアは治癒魔法も得意だから私はその男の人に声をかけたわ。どうしましたかって。その男は私が近づいた途端、ガバリと起き上がって私を羽交い締めにしたわ。そして首にナイフをつきつけられたわ。リナリアは美しいカナリヤの霊獣なの、彼女はすぐに私を助けようとしてくれたわ。でも私につきつけられたナイフを見て攻撃魔法を断念したの。林の奥から二人の男がやって来てリナリアに言ったわ。契約者の命を助けて欲しければこの魔法具の鳥かごに入れと。私は、リナリアと別れるくらいなら死んだ方がマシだった。だけどリナリアは私の命と引き換えに捕まってしまったの」
ライラはそれだけ言うと、またシクシクと泣き出してしまった。ティナが気づかわしげにライラの背中を撫でていた。それを聞いたフィンが叫んだ。
「許せない!そんな巧妙な罠でリナリアを捕まえたなんて!」
フィンの言葉にリリーも大きくうなずいている。その言葉を聞いたフレイヤはハァッと大きなため息をついて片手で目をおおった。召喚士とはこのような人間なのだ。とにかく純真で疑う事を知らないのだ。これでは悪い人間にすぐに騙されてしまう。フレイヤが教頭を見ると、教頭も両手で目をおおってため息をついていた。おそらく教頭は召喚士ではないのだろう。教頭もバカ正直な召喚士が心配でならないのだろう。
「君たちはまだ新人召喚士だね?私は依頼要項に戦士か魔法使いとしていたんだが」
フィンたちはまたもや依頼人に渋い顔をされてしまった。フィンの横にいたティナが口ぞえをしてくれた。
「教頭先生!フィンとリリーは新人召喚士だけど、とっても強いんです。私たちの事も助けてくれたんですよ?!」
教頭はティナと肩に乗ったタップをギロリとにらんだ。ティナがギクリと固まる。教頭は地をはうような低い声で言った。
「ティナ、タップあれだけ霊獣ハンターを捕まえに行くなと言ったはずだ。お前たちには厳しい処分をくだすからな?」
ティナとタップはうつむいて黙ってしまった。すると、教頭室のドアがノックもなく開いた。そしてものすごい勢いで少女が飛び込んで来た。
「ティナ!タップ!」
少女はティナに気づくと勢いよくティナに抱きついていった。
「ティナ!なんて無茶な事したの?!ケガはない?」
「心配かけてごめんなさいライラ。私とタップは大丈夫、この人たちが助けてくれたから」
ティナはそう言ってフィンたちにライラと呼ばれた少女を紹介してくれた。ライラは長い髪をおさげにした優しげな少女だった。ライラは、霊獣ハンターに襲われ契約霊獣を奪われた被害者だったのだ。ライラはフィンたちに頭を下げて丁寧にお礼を言った後、教頭室の隅で小さくなっている霊獣ハンターたちをキッとにらんだ。そしてツカツカと彼らに歩み寄ると、手前の男のえり首をものすごい力で持ち上げて大声で叫んだ。
「私のリナリアはどこなの?!早く言いなさい!」
ライラは男を激しくゆさぶった。男は悲鳴をあげている。見かねたティナがライラを霊獣ハンターの男から引き離した。ライラの顔は怒りに紅く染まっていた。その顔がゆがむと大声で泣きだした。おそらく彼女の契約霊獣の名前だろう。リナリア、リナリアと悲しげに呼んでいた。ティナはライラをギュッと抱きしめた。
フィンはライラの事が可哀想でならなかった。契約者と契約霊獣の関係はとても固いきずなで結ばれている。その相手と一緒にいられないという事はこの上もない苦しみだ。フィンは教頭を強い瞳で見つめて言った。
「教頭先生!確かに僕たちはティナと同じように新人召喚士です。ですが、理不尽な暴力で召喚士と契約霊獣が引き離される事は許せません。僕らは必ず霊獣たちを救出します。どうかこの依頼を受けさせてください」
教頭はこわばった顔でフィンたちを見つめたが、やがて大きなため息をついて言った。
「わかった。君たちに依頼をお願いしよう」
フィンは嬉しくなってティナとライラを見た。ティナは笑顔でフィンを見返した。ライラは泣きはらした顔でポカンとフィンを見ていた。
フレイヤはホッと息をついた。どうやらリリーたちは依頼を受ける事ができるようだ。フレイヤはふと教頭が自分を見ている事に気がついた。フレイヤは首をかしげた。この男とどこかで会った事があるだろうか。フレイヤには記憶がなかった。フィンたちはライラから霊獣ハンターたちにどうやって捕まったのかを詳しく聞いていた。
ライラは思い出しても口惜しいようで、ハンカチを握りしめて泣きながら話しだした。
「私はリナリアと依頼を終えて学校に帰ろうとしていたの。だけどその途中で、具合が悪そうに倒れている男の人がいたわ。リナリアは治癒魔法も得意だから私はその男の人に声をかけたわ。どうしましたかって。その男は私が近づいた途端、ガバリと起き上がって私を羽交い締めにしたわ。そして首にナイフをつきつけられたわ。リナリアは美しいカナリヤの霊獣なの、彼女はすぐに私を助けようとしてくれたわ。でも私につきつけられたナイフを見て攻撃魔法を断念したの。林の奥から二人の男がやって来てリナリアに言ったわ。契約者の命を助けて欲しければこの魔法具の鳥かごに入れと。私は、リナリアと別れるくらいなら死んだ方がマシだった。だけどリナリアは私の命と引き換えに捕まってしまったの」
ライラはそれだけ言うと、またシクシクと泣き出してしまった。ティナが気づかわしげにライラの背中を撫でていた。それを聞いたフィンが叫んだ。
「許せない!そんな巧妙な罠でリナリアを捕まえたなんて!」
フィンの言葉にリリーも大きくうなずいている。その言葉を聞いたフレイヤはハァッと大きなため息をついて片手で目をおおった。召喚士とはこのような人間なのだ。とにかく純真で疑う事を知らないのだ。これでは悪い人間にすぐに騙されてしまう。フレイヤが教頭を見ると、教頭も両手で目をおおってため息をついていた。おそらく教頭は召喚士ではないのだろう。教頭もバカ正直な召喚士が心配でならないのだろう。
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