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バレットの心
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バレットたちは捕らえた盗賊たちを王都まで連れて行く事にした。バレットはフィンも一緒に行くものと思っていたが、フィンは行く所があると言ってバレットたちとは別行動をとる事になった。バレットは、せっかく弟になったフィンと別れがたい気持ちでいっぱいだった。だが寂しそうにするのはプライドが許さないので、表面上は平静を保っていた。
フィンは、盗賊団確保の数日前にブランから話を聞いてとても驚いていた。心配になったバレットがフィンにわけを聞くと、以前捕らえた霊獣ハンターが護送車から脱走したらしい。その事とフィンの間にどんな関係があるのかバレットにはわからないが、フィンがとても動揺しているのは明らかだった。バレットはフィンに何か急用ができたなら、盗賊団確保の依頼から抜けてもいいと提案した。だが頑固なフィンは、受けた依頼は確実にやりとげると言って聞かなかった。
ようやく盗賊団確保の依頼が完了したので、はれてフィンは自由になった。バレットはフィンに依頼の報酬を手渡した。予定よりもだいぶ金額が少なくなってしまつまたが、フィンは喜んで受け取った。
フィンはバレットたちに向かって別れのあいさつをした。
「バレット、アレックス、ドロップありがとう。またね」
アレックスは泣き出さんばかりに顔をゆがめてフィンを強く抱きしめた。どうやらアレックスはフィンの事をとても気に入ってしまったようだ。アレックスの腕の中で、フィンは苦しいともがいた。フィンとブランはアレックスの契約霊獣になったコツメカワウソのドロップにもしきりに話しかけていた。だが霊獣語のわからないバレットにはドロップがキューキュー、ブランがニャーニャー言っているようにしか聞こえない。
フィンは最後にバレットに向き直ると、はにかんだ笑顔で言った。
「ねぇバレット。いい夢を見るおまじないして?」
「何だ?今は夜じゃねぇぞ?」
「いいじゃないか。僕はこれからバレットと離れるんだよ?前倒しでしてよ?」
バレットは苦笑しながらも、身体をかがめ、フィンの形の良いおでこにチュッとキスをした。バレットがフィンから離れると、フィンは自分のおでこを撫でて泣き出しそうな顔で笑った。フィンは霊獣のブランに大きくなってもらい、巨大な白猫の背中に飛び乗った。そしてバレットたちに手を振ると、あっという間に走っていってしまった。
フィンたちを見送ったバレットに、ある変化が起きた。突然胸が苦しくなったのだ。胸が熱くて熱くて仕方なかった。そして目からは涙がボロボロあふれ出てきた。自分に起きた突然の出来事にバレットはうろたえた。となりに立っていたアレックスが、バレットの異常に気づいて慌てて身体を支えてくれた。アレックスはオロオロしながら言った。
「どうしたんだバレット。具合でも悪いのか?」
「・・・、わかんねぇ、フィンのおでこにキスしたら、突然胸が苦しくなったんだ。フィンと別れてまだちょっとしか時間が経っていないのに、フィンの事が心配で仕方ないんだ。フィンが困っているんじゃないか、ゲガをするんじゃないかって。フィンを守ってやりたい。フィンの笑顔を見ていたいんだ。じぃちゃんもそんな気持ちで俺のおでこにキスしてくれたのかなって思ったら、涙が止まらないんだ」
アレックスは、驚いたようにバレットを見つめ、そして優しい笑顔で言った。
「そうだぞバレット。バレットが今感じている気持ちはゾラさんがバレットに抱いている気持ちと同じだ。バレットはフィンの事を愛しているんだ。だから胸が苦しくなるくらい涙が出るんだ」
「・・・。あいしてる?じぃちゃんは俺の事、こんな気持ちを持って側にいてくれたのか?」
バレットは生まれて初めて感じた気持ちを持てあましぎみだったが、嫌な気持ちではなかった。アレックスは大きな手でバレットの頭を優しく撫でてくれた。いつもは恥ずかしくて払い落としてしまう手を、バレットはずっと心地よく感じていた。
フィンは、盗賊団確保の数日前にブランから話を聞いてとても驚いていた。心配になったバレットがフィンにわけを聞くと、以前捕らえた霊獣ハンターが護送車から脱走したらしい。その事とフィンの間にどんな関係があるのかバレットにはわからないが、フィンがとても動揺しているのは明らかだった。バレットはフィンに何か急用ができたなら、盗賊団確保の依頼から抜けてもいいと提案した。だが頑固なフィンは、受けた依頼は確実にやりとげると言って聞かなかった。
ようやく盗賊団確保の依頼が完了したので、はれてフィンは自由になった。バレットはフィンに依頼の報酬を手渡した。予定よりもだいぶ金額が少なくなってしまつまたが、フィンは喜んで受け取った。
フィンはバレットたちに向かって別れのあいさつをした。
「バレット、アレックス、ドロップありがとう。またね」
アレックスは泣き出さんばかりに顔をゆがめてフィンを強く抱きしめた。どうやらアレックスはフィンの事をとても気に入ってしまったようだ。アレックスの腕の中で、フィンは苦しいともがいた。フィンとブランはアレックスの契約霊獣になったコツメカワウソのドロップにもしきりに話しかけていた。だが霊獣語のわからないバレットにはドロップがキューキュー、ブランがニャーニャー言っているようにしか聞こえない。
フィンは最後にバレットに向き直ると、はにかんだ笑顔で言った。
「ねぇバレット。いい夢を見るおまじないして?」
「何だ?今は夜じゃねぇぞ?」
「いいじゃないか。僕はこれからバレットと離れるんだよ?前倒しでしてよ?」
バレットは苦笑しながらも、身体をかがめ、フィンの形の良いおでこにチュッとキスをした。バレットがフィンから離れると、フィンは自分のおでこを撫でて泣き出しそうな顔で笑った。フィンは霊獣のブランに大きくなってもらい、巨大な白猫の背中に飛び乗った。そしてバレットたちに手を振ると、あっという間に走っていってしまった。
フィンたちを見送ったバレットに、ある変化が起きた。突然胸が苦しくなったのだ。胸が熱くて熱くて仕方なかった。そして目からは涙がボロボロあふれ出てきた。自分に起きた突然の出来事にバレットはうろたえた。となりに立っていたアレックスが、バレットの異常に気づいて慌てて身体を支えてくれた。アレックスはオロオロしながら言った。
「どうしたんだバレット。具合でも悪いのか?」
「・・・、わかんねぇ、フィンのおでこにキスしたら、突然胸が苦しくなったんだ。フィンと別れてまだちょっとしか時間が経っていないのに、フィンの事が心配で仕方ないんだ。フィンが困っているんじゃないか、ゲガをするんじゃないかって。フィンを守ってやりたい。フィンの笑顔を見ていたいんだ。じぃちゃんもそんな気持ちで俺のおでこにキスしてくれたのかなって思ったら、涙が止まらないんだ」
アレックスは、驚いたようにバレットを見つめ、そして優しい笑顔で言った。
「そうだぞバレット。バレットが今感じている気持ちはゾラさんがバレットに抱いている気持ちと同じだ。バレットはフィンの事を愛しているんだ。だから胸が苦しくなるくらい涙が出るんだ」
「・・・。あいしてる?じぃちゃんは俺の事、こんな気持ちを持って側にいてくれたのか?」
バレットは生まれて初めて感じた気持ちを持てあましぎみだったが、嫌な気持ちではなかった。アレックスは大きな手でバレットの頭を優しく撫でてくれた。いつもは恥ずかしくて払い落としてしまう手を、バレットはずっと心地よく感じていた。
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