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霊獣ドロップ
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フィンたちは盗賊団の宝物庫に向けて走りだした。フィンの胸はまだドキドキしていた。アレックスと盗賊の真剣での戦いを目の当たりにしたからだ。フィンは興奮しながらアレックスに言った。
「アレックスは剣が強いんだね!」
興奮気味なフィンに対して、アレックスは寂しそうな顔で笑いながら答えた。
「あの男は俺と真剣勝負をしようとしてくれたのに、俺は無粋にも魔法を使ってしまった。真剣に剣を交えてくれた男を裏切ってしまった」
フィンはアレックスと共に走りながら、ジッとアレックスの言葉を聞いていた。フィンは剣の修行をしているが、真剣での殺し合いなんてしたくない。その点でいうと、フィンは真の剣士にはなれないと感じた。フィンはアレックスの言葉の意味をじっくりと考えた上で言った。
「僕はそういう意味では本当の剣士になれないと思う。だけど僕は思うんだ、アレックスとあの盗賊が死ななくて良かったって」
アレックスはフィンを驚いたように見てから、微笑んでありがとうと言った。
フィンたちは以前姿を消して潜入した宝物庫の前に立った。フィンはブランにお願いして、宝物庫のカギを破壊してもらった。アレックスが重厚なドアを開けると、そこにはうず高く積み上げられた宝物があった。フィンたちはポカンと口を開けて、沢山の宝物を見上げていた。するとブランが叫んだ。
『フィン!この中に霊獣がいるわ!閉じ込められて弱ってる!』
ブランの言葉にフィンは驚いた。ブランの指示にしたがって、背の高いアレックスが大きな木箱を床におろした。木箱のフタには宝石が埋め込まれていた。どうやらこの木箱は、霊獣の魔力を封じる魔法具のようだ。その木箱にはしっかりと厳重なカギがかけられていた。フィンは土魔法で短剣を作るとカギを壊した。おそるおそる木箱のフタを開けると、そこにはぐったりとしているコツメカワウソがいた。だがただのカワウソではない。ひたいに小さなツノがある霊獣だ。フィンはゆっくりとコツメカワウソを抱き上げて、声をかけた。
「君、大丈夫?」
『み、水・・・』
コツメカワウソの霊獣はか細い声でつぶやいた。フィンはせっついてアレックスに言った。
「アレックス!水、この子に水をあげて?!」
「あ、ああ」
フィンの剣幕に驚いたアレックスが水魔法で水のかたまりを空中に出現させる。フィンはコツメカワウソの霊獣を、その水のかたまりに入れた。するとコツメカワウソの身体がキラキラと光り出した。アレックスの水治癒魔法だ。コツメカワウソはゆっくりと目を開けて、水のかたまりから顔を出して言った。
『ふぅ、生き返ったぁ。この水とっても優しい水だなぁ、オラ好きだなぁ』
コツメカワウソの霊獣はどうやら元気を取り戻したようだ。フィンは安心して、心配顔のアレックスに通訳した。
「アレックス、この子元気になったよ?ありがとう」
笑顔のフィンに対して、アレックスは苦いものを口に入れたような顔になって言った。
「この霊獣は、人間に捕まってひどい目にあわされたんだろ?すまない事したなぁ」
アレックスはどうやら、コツメカワウソの霊獣をひどい目に合わせた者と、自分が同じ人間である事を申し訳ないと思ったようだ。以前フィンもそういう気持ちになった事があった。霊獣ハンターのひどい所業に心を痛めたのだ。だがその時、ブランたちに言われたのだ。フィンは霊獣ハンターたちとは違う、と。フィンも強くそう思った。フィンは強い口調でアレックスに言った。
「違うよアレックス。アレックスはこの子を閉じ込めてひどい事した奴ら違う!アレックスは優しい人間だよ」
フィンの言葉に、キョトンとした顔でコツメカワウソの霊獣が言った。
『そうだぁ、オラこいつあったかいヤツだから好きだぁ』
コツメカワウソの霊獣は水のかたまりから飛び出すと、アレックスの肩に乗っかった。どうやらアレックスに懐いてしまったようだ。ブランはコツメカワウソの霊獣に聞いた。
『アンタどうして人間なんかに捕まったのさ?』
ブランの質問にコツメカワウソはのんびり答えた。
『オラ川辺で昼寝してたら捕まっただよ』
どうやらこの霊獣はとてものんびりした性格なようだ。コツメカワウソの霊獣はアレックスに懐いて離れないので、そのまま連れて行く事にした。フィンはブランに頼んで、宝物庫の中の宝物を植物ツタ魔法でおおってもらった。こうすれば誰も持ち出す事はできないだろう。フィンたちはバレットと落ち合うべく宝物庫を出た。
「アレックスは剣が強いんだね!」
興奮気味なフィンに対して、アレックスは寂しそうな顔で笑いながら答えた。
「あの男は俺と真剣勝負をしようとしてくれたのに、俺は無粋にも魔法を使ってしまった。真剣に剣を交えてくれた男を裏切ってしまった」
フィンはアレックスと共に走りながら、ジッとアレックスの言葉を聞いていた。フィンは剣の修行をしているが、真剣での殺し合いなんてしたくない。その点でいうと、フィンは真の剣士にはなれないと感じた。フィンはアレックスの言葉の意味をじっくりと考えた上で言った。
「僕はそういう意味では本当の剣士になれないと思う。だけど僕は思うんだ、アレックスとあの盗賊が死ななくて良かったって」
アレックスはフィンを驚いたように見てから、微笑んでありがとうと言った。
フィンたちは以前姿を消して潜入した宝物庫の前に立った。フィンはブランにお願いして、宝物庫のカギを破壊してもらった。アレックスが重厚なドアを開けると、そこにはうず高く積み上げられた宝物があった。フィンたちはポカンと口を開けて、沢山の宝物を見上げていた。するとブランが叫んだ。
『フィン!この中に霊獣がいるわ!閉じ込められて弱ってる!』
ブランの言葉にフィンは驚いた。ブランの指示にしたがって、背の高いアレックスが大きな木箱を床におろした。木箱のフタには宝石が埋め込まれていた。どうやらこの木箱は、霊獣の魔力を封じる魔法具のようだ。その木箱にはしっかりと厳重なカギがかけられていた。フィンは土魔法で短剣を作るとカギを壊した。おそるおそる木箱のフタを開けると、そこにはぐったりとしているコツメカワウソがいた。だがただのカワウソではない。ひたいに小さなツノがある霊獣だ。フィンはゆっくりとコツメカワウソを抱き上げて、声をかけた。
「君、大丈夫?」
『み、水・・・』
コツメカワウソの霊獣はか細い声でつぶやいた。フィンはせっついてアレックスに言った。
「アレックス!水、この子に水をあげて?!」
「あ、ああ」
フィンの剣幕に驚いたアレックスが水魔法で水のかたまりを空中に出現させる。フィンはコツメカワウソの霊獣を、その水のかたまりに入れた。するとコツメカワウソの身体がキラキラと光り出した。アレックスの水治癒魔法だ。コツメカワウソはゆっくりと目を開けて、水のかたまりから顔を出して言った。
『ふぅ、生き返ったぁ。この水とっても優しい水だなぁ、オラ好きだなぁ』
コツメカワウソの霊獣はどうやら元気を取り戻したようだ。フィンは安心して、心配顔のアレックスに通訳した。
「アレックス、この子元気になったよ?ありがとう」
笑顔のフィンに対して、アレックスは苦いものを口に入れたような顔になって言った。
「この霊獣は、人間に捕まってひどい目にあわされたんだろ?すまない事したなぁ」
アレックスはどうやら、コツメカワウソの霊獣をひどい目に合わせた者と、自分が同じ人間である事を申し訳ないと思ったようだ。以前フィンもそういう気持ちになった事があった。霊獣ハンターのひどい所業に心を痛めたのだ。だがその時、ブランたちに言われたのだ。フィンは霊獣ハンターたちとは違う、と。フィンも強くそう思った。フィンは強い口調でアレックスに言った。
「違うよアレックス。アレックスはこの子を閉じ込めてひどい事した奴ら違う!アレックスは優しい人間だよ」
フィンの言葉に、キョトンとした顔でコツメカワウソの霊獣が言った。
『そうだぁ、オラこいつあったかいヤツだから好きだぁ』
コツメカワウソの霊獣は水のかたまりから飛び出すと、アレックスの肩に乗っかった。どうやらアレックスに懐いてしまったようだ。ブランはコツメカワウソの霊獣に聞いた。
『アンタどうして人間なんかに捕まったのさ?』
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『オラ川辺で昼寝してたら捕まっただよ』
どうやらこの霊獣はとてものんびりした性格なようだ。コツメカワウソの霊獣はアレックスに懐いて離れないので、そのまま連れて行く事にした。フィンはブランに頼んで、宝物庫の中の宝物を植物ツタ魔法でおおってもらった。こうすれば誰も持ち出す事はできないだろう。フィンたちはバレットと落ち合うべく宝物庫を出た。
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