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召喚士ゴル

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 ゴルはフィンたちを建物に招き入れると、椅子に座らせ茶をだしねぎらってくれた。フィンは茶を飲みながら、テーブルにあるものを置いた。それは霊獣ハンターたちが使っていた魔法具だ。フィンは厳しい顔でゴルに言った。

「ゴルさん、霊獣ハンターたちは大きな組織だって霊獣たちを狙っているんです。そして優秀な魔法具職人も抱えているようです。それに、ハンターたちは霊獣の言葉がわかる」

 フィンの言葉に、ゴルはピクリと身体を震わせてから大きなため息をついて話しだした。

「少年よ、霊獣ハンターたちが霊獣語を話せる事が不思議なのだろう。ハンターたちはな、お主ら召喚士のなりそこないなのじゃ」

 ゴルの言葉にフィンは驚きを隠せなかった。フィンがいた召喚士養成学校のクラスメイトにも、召喚士になれなかった生徒がいた。彼らは精霊や霊獣に好まれる清い心を持っていなかったのだ。ゴルは弱々しげに微笑んで話を続けた。

「お主たち、わしが霊獣語を話せる事も不思議に思っていたのぉ。お主たちの予想通りわしは元召喚士じゃ。そしてわしは生涯の友と誓った霊獣を裏切ったのじゃ。わしは金のとりこになり、友はわしから去って行った。わしは自らがおかした過ちに気づいたが手遅れじゃった。わしは嘆き悲しみ、そしてしょく罪がしたかった。それが霊獣の保護じゃ」

 ゴルは話終えると深いため息をついてうなだれた。フィンはリリーのとなりに座っている火の精霊フレイヤがビクリと身体を震わせた事に気ついた。フレイヤのおかしな態度に、リリーは心配そうに彼女の手を握りしめた。フィンは視線を、自分の膝の上にいる霊獣ブランに向けた。ブランは深くうなずいている。フィンはきっぱりとした声でゴルに言った。

「ゴルさん!貴方は霊獣たちのために働いてくれる心の綺麗な人です!ブランもフレイヤも、貴方の事を好いています。どうかもう一度召喚の儀式を取り行ってください!」

 フィンの言葉にゴル老人はとても驚いたようで、まぶたが下がって細くなった瞳を大きく見開いていた。我に返ったゴルは弱々しく微笑んで首を振って答えた。

「いくら召喚の儀を行おうとしても無駄じゃ。わしは自身の過ちに気づき、友に詫びたくて何度も召喚の儀を行った。だが友は二度と現れてはくれなかった」

 気弱げなゴルの言葉にフィンは強い口調で言った。

「二度目の召喚の儀を行った貴方は行動がともなっていなかった。ですが今は違います。貴方は霊獣の力を借りないで、人々の心を動かし、霊獣を保護し助ける団体の長になった。今の貴方なら、貴方が生涯の友という存在も現れてくれるはずです!」

 ゴルはフィンが言葉を尽くしても、再び召喚の儀を執り行う勇気が出ないようだった。フィンはゴルの態度に段々腹が立ってきた。フィンは白猫のブランを抱きかかえて椅子から立ち上がると、オロオロしているゴルを見下ろして言った。

「ゴルさん!貴方は霊獣の心を軽んじているのではありませんか?!霊獣は契約した契約者の人間を生涯愛してくれるんですよ?!それが一度の裏切りで貴方を見捨てるとでも思うのですか?僕はブランと契約して、ブランの深い愛情を感じる事ができます。そしてもし僕がブランの悲しむような道に踏み込んだとしても、僕が再び正しい道に戻ればブランはきっと戻ってきてくれます!」

 フィンは言葉を一気にまくし立てたので呼吸か荒くなっていた。フィンの腕の中のブランはうんうんとうなずいてくれる。ゴルはフィンとブランをまぶしそうに見上げ、そして再びこうべをたれて弱々しく言った。

「・・・、召喚の儀の魔法陣の描き方を、もう忘れてしまったのじゃ」

 ゴルの気持ちの変化に気づいたフィンは、喜んで言った。

「はい!それなら僕が描いてあげます!なんたって、つい先日学校の校庭に描いたばかりなんだから」

 フィンは抱いていたブランを自分の肩に乗せると、ゴルのしわくちゃの手をつかんで無理矢理椅子から立ち上がらせた。そしてその手を引っ張って外に出た。ゴルはもう抵抗する事を諦めたのか、大人しく着いてきた。リリーとフレイヤもつられて外に出る。フィンはその場に落ちていた小枝を拾い上げ、大きな円の魔法陣をスラスラと描きあげていった。この魔法陣は、学生のフィンが絶対に霊獣とめぐり合うのだという強い信念の象徴だった。フィンは魔法陣を描き終えると、フゥッと満足そうに息をはいた。そしてジッとして動かないゴルの手を取って魔法陣の真ん中に立たせ、フィンとブランは魔法陣から出て、ゴルが召喚の詠唱を始めるのをジッと待った。
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