ひよっこ召喚師モフモフの霊獣に溺愛される

盛平

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霊獣ハンター

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 フィンたちはピューマの霊獣の話を聞いて怒りがおさまらなかった。ピューマの霊獣に無理矢理魔法具を飲ませ、そして小さな仔犬の霊獣にナイフをつきつけたのだ。フィンは心に誓った、絶対に霊獣ハンターを倒して仔犬の霊獣を助けると。火の精霊フレイヤは、フィンたちの怒りをたしなめた。怒りに我を忘れてはいけないと。

 フィンたちはピューマの霊獣が霊獣ハンターに襲われた水辺までやって来た。水辺は穏やかに日の光を反射して輝いていた。フィンたちは水辺に来た冒険者のフリをして、めいめいに水を飲んだり水筒に水を汲んだりしていた。すると草陰からガサリと音がした。フィンが振り向くと、そこにはガラの悪い男が三人立っていた。男の一人がフィンたちに言った。

「おい、お前たちが連れているのは霊獣と精霊だな?大人しくそいつらを渡せば命だけは助けてやろう」

 フィンたちは一斉に視線で合図をした。この三人の男たちが霊獣ハンターで間違いない。フィンは前に出て声高らかに叫んだ。

「お前たちが霊獣を捕まえている霊獣ハンターだな!即刻捕まえた霊獣たちを解放しろ!さもないと容赦しないぞ!」

 三人の男たちはフィンの啖呵を聞いて笑い出した。

「わはは、とんだお笑いぐさだ。お前たちは学校を卒業したての召喚士だろ?俺たちにかなうわけないだろう」

 フィンは霊獣ハンターたちのざれ言は相手にせず、リリーとフレイヤに視線を送って言った。

「リリーとフレイヤは二人の男をお願い。僕とブランは一人を倒す」

 リリーとフレイヤはうなずいて答えた。

「ええわかったわフィン」
『まかせて!だけとフィン、ブラン注意して。奴らはブランの魔法を封じる魔法具を使うはずよ』

 フィンとブランは大きくうなずいた。リリーとフレイヤは水辺を走り二人の男たちに後を追わせた。フィンはブランと目の前の男をにらんだ。フィンはブランに言った。

「ブラン気をつけて。ピューマの霊獣はパチンコで小型の魔法具を飲まされたからね」
『ええ。わかったわ』
「ブラン!植物ツタ魔法で攻撃!」
『ええ!』

 フィンとブランの足元から巨大な植物のツタが生え出し、目の前の男に襲いかかった。だが男は魔法を使ったのか防御魔法でブランのツタをさえぎった。ツタ魔法ではこの防御魔法は破れない。フィンは新たなにブランに指示を出した。

「ブラン!刃攻撃魔法!」
『わかったわ!』

 ブランは土魔法で沢山の鉄の刃を出現させると、男の防御魔法に一斉に攻撃した。男の防御魔法はガラスが割れるように次々と亀裂が入った。男は自身の魔法が敗れたのにもかかわらず顔には笑みを浮かべていた。そして男は手元から何かを投げつけたのだ。その物体は、クルクルとブーメランのように回転し、ブランの首に巻きついた。ブランは物体がぶつかった衝撃で、ギャッと声をあげて吹っ飛んだ。フィンは慌てて叫ぶ。

「ブラン!大丈夫?!」

 フィンが吹っ飛んだブランに駆け寄ると、彼女の首には金属の首輪がはまっていた。しまった、フィンは直感した。この金属が霊獣の魔力を封じる魔法具なのだ。フィンは急いでブランの首輪を外そうとした。だが首輪は固く、すぐに外す事ができなかった。ブランは弱々しくフィンに言った。

『ごめんなさいフィン、ヘマをしたわ。早く逃げて』
「大丈夫だよブラン。あんな男僕が倒すよ。ブランは後ろに下がってて」

 フィンはブランが止めるのも聞かず男の前に飛び出した。男は霊獣のブランに首輪をつけて安心しきっているようだ。あざけるようにフィンに言った。

「小僧、霊獣を封じればお前は無力だ。もう一度だけチャンスをやろう、その霊獣を渡せば命だけは助けてやるぞ?」

 フィンは厳しい視線を男に向けて言った。

「命を助けるだって?僕の命より大切なものがブラン自身だ!死んだってお前なんかに渡さない!」

 フィンの言葉に、男は怒りで顔を歪めて答えた。

「そうか、じゃあ死ね」

 そういうと男は腰にさげていた剣を抜いて構えた。フィンは自分が使える土魔法を発動させた。フィンの右手が輝き出し、手には大きな剣が握られていた。男はフィンの持っている大剣に眉をひそめたが、ある事に気づき笑い出した。

「ははは、バカな小僧だ。いくら大きな剣でもその剣には刃が無いじゃないか。そんなんじゃ野菜だって切れねえぜ」

 男の言う通りだった。フィンが出現させた大剣には刃が無かった。それではただの鉄の棒でしかない。フィンは大剣を構えて男に言い放った。

「この剣は人を斬るものじゃない。お前みたいな腐った人間の根性を叩きつぶすための剣だ!」

 フィンは大剣を振り上げ男に斬りかかった。フィンは指導官のバレットに、剣の素質がないと言われてしまった。だが二つだけバレットに褒められた事があった。一つは決して剣の道を諦めない心。そしてもう一つは、重い大剣を振り回せるほどの筋力だ。フィンは幼い頃から、召喚士養成学校の学費を稼ぐために小麦粉の工場で、巨大な石臼をひき、小麦を粉にした。そして小麦粉を麻袋に詰め、麻袋を担いで荷馬車に運んだ。フィンは小さい頃からこの生活をずっと続けて来たのだ。そのためフィンは学校では一番背が低かったが、一番の力持ちだった。フィンは手に持った大剣を危なげなく振り回す事ができた。フィンは男に走りよった。男は小柄のフィンに自らの剣を振り下ろした。男の剣はとても遅かった。バレットは時間がある限りフィンに模擬刀での対戦練習を何度もやってくれた。バレットの剣は素早く、フィンは何度となく模擬刀で全身をぶっ叩かれた。だが目の前の男の剣は、バレットのそれに比べればとてものんびりして見えた。フィンは男の振り下ろす剣を大剣で弾き飛ばした。男の剣は手から離れ、クルクルと回転して地面に突き刺さった。焦った男はフィンに背を向けて逃げようとした。フィンは返す刀で男の胴をなぎ払った。ボキッと乾いた音がした。おそらくフィンの大剣が男の肋骨を何本か折ったのだろう。男は大剣になぎはらわれた衝撃で、横にふっとんで動かなくなった。フィンは手に持った大剣を消すと横たわっているブランの側に駆け寄った。ブランは嬉しそうに微笑んで言った。

『すごいわフィン、アタシがいなくても敵を倒しちゃったわ』

 フィンは微笑んで答えた。

「違うよブラン。ブランがいてくれたから僕は土魔法が強くなって敵を倒せたんだ。ブランのおかげなんだよ?」

 フィンはそう言ってから、今度は土魔法で鋭利なナイフを出現させ、ブランの首に巻きついている金属の魔法具を外した。そしてぐったりとしたブランを優しく抱きしめた。
 
 
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