あやかし学園

亜子たち対陰陽師

「変化する人たちは、服とくつを先生にあずけてくださいね？」

　雪奈の声に、音子と清姫、菊花がしたがう。亜子はみなもと目配せしながら陰陽師をにらんだ。

　五人の陰陽師たちは、雪奈の結界内なのに、余裕の表情をくずさなかった。

「これは、あやかしの術の中か」
「何、半妖のガキを数匹捕らえてから。あの女のあやかしを殺せば術は解ける」

　陰陽師たちが雪奈を倒す。雪奈の力を目の当たりにしている亜子は、それが容易ではないと知っているが、陰陽師たちどこまでも落ち着いていた。だが亜子は考える。もし亜子たちが陰陽師たちに捕らわれてしまえば、雪奈は手出しできないかもしれない。

　ここは亜子たちが五人の陰陽師たちを確実に戦闘不能にしなければいけない。こわばっている亜子に、みなもは微笑んで言った。

「大丈夫よ、亜子ちゃん。狐太郎くんから沢山陰陽師の術の事教わったもの。きっと勝てるわ」
「うん！」

　亜子の側には、巨大猫になった音子。大ヘビの姿になった清姫。大グモの姿になった菊花が並んだ。陰陽師たちは亜子たちを見て、あざけるように言った。

「やぁやぁ、バケモノがせいぞろいだ」
「何て醜いんだ」
「人質は二人くらいでいい。残りは殺せ！」

　亜子は陰陽師たちの悪意の言葉を聞いても、動揺しなかった。亜子は自分がひどく冷静になっていくのがわかった。亜子は陰陽師たちに対して口を開いた。

「貴方たちは、私たちの事をバケモノだと言う。それって私たちの事を知らないからそう言えるんじゃないかしら？」
「何だクソガキ！お前たち半妖は、半分は人間だが、半分はバケモノなんだよ！この世界は俺たち人間のモノだ。お前たちは滅びる存在なんだよ！」

　一番背の高い、陰陽師の男が叫んだ。亜子は男があわれに見えて、微笑んで答えた。

「この世界が貴方たち人間のものですって？貴方たちは何てごう慢で無知なのかしら。この世界は貴方たちだけのものじゃない。あやかしや半妖、動物や植物。この世界に生きている全ての者たちのものなの。そんな簡単な事が理解できないなんて、貴方たちは本当の愚か者だわ！」
「ふざけやがって！クソガキ！まずはキサマをなぶり殺しにしてやる！」

　背の高い陰陽師はすばやく呪文と印を結んだ。亜子も胸元から札を取り出し、呪文を唱えた。

　亜子たちの目の前に、透明な防御壁が出現した。背の高い陰陽師の放った炎が、亜子の防御壁に当たり、無効化された。背の高い陰陽師が驚いたように叫んだ。

「何故半妖が陰陽師の術を？！まさか、狐太郎の奴が裏切ったのか？！」

　そこで亜子は疑問に思った。何故背の高い陰陽師が、狐太郎が亜子たちに陰陽師の術を教えた事に驚いたのか。