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あやかしの恋3
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舞台は変わり、狐太郎と清姫は村を追い出され、あてもなく森をさまよった。やっとの事で荒れ寺を見つけ、そこに住む事になった。
人間の狐太郎はどんどん年をとり、やがて布団から起き上がれないほど衰弱した。美しい清姫が狐太郎の枕元で、嬉しそうに話しをする。
「お前さん。今日はとってもいい天気なのよ?花は咲き乱れ、小鳥はさえずっているわ。ねぇ、お前さんもたまには外に出ようよ?」
狐太郎はしわくちゃの顔で微笑んで、清姫に手を差し出した。清姫は彼の手をそっと握りしめる。狐太郎は弱々しい声で言った。
「お清、わしはもうすぐ死ぬ」
清姫の顔は泣きださんばかりに顔をゆがめて言った。
「嫌よ、嫌。お前さんがいなくなったら、私ひとりぼっちになってしまう」
「お清、約束してくれ。わしは必ず、もう一度この世に生まれ変わる。そして、お清、お前をもう一度見つける。その時、またわしとめおとになってくれぬか?」
狐太郎の言葉に、清姫は美しい瞳から涙を流してうなずいた。
「お前さん、約束よ?約束だからね?私をきっと見つけてね?」
狐太郎は、清姫との約束に安心すると、静かに息を引き取った。清姫は狐太郎のむくろにすがりつき、静かに泣き続けた。
舞台が暗くなり、悟のナレーションが入る。
「お清は弥吉を失い、悲しみ続けた。何年も何百年も、弥吉の墓の前を離れなかった。ある日、花の咲き乱れる季節に、お清はふと決心した。生まれ変わった弥吉を探そうと。・・・。人間は増え、文化は発展し、それまで畑だった土地にはビルが建った。お清は人間にまぎれてひたすら弥吉を探し続けた」
亜子たちは急いで、サインペンで書いた顔のシワを落とした。着物を脱ぐと、普通の私服になった。
舞台が明るくなる。亜子と音子とみなもは買い物を楽しむ少女たちとして舞台を歩く。山彦も菊花も、河太郎も、現代の人間として歩いている。
舞台そでから、現代の服を着た清姫が歩いて来た。反対の舞台そでから、現代の服を着た狐太郎が歩いて来る。清姫はハッとした顔になる。
だが狐太郎は、清姫を見る事もなく彼女を通り過ぎて行った。清姫は、がく然とした顔になり、泣き出しそうに顔をゆがめる。その後、少し微笑んだ。
生まれ変わった狐太郎に気づいてもらえなかった悲しみ。だが、愛しい男に会えた喜びがない混ぜになった表情だった。
「あの、」
声をかけられた清姫が、驚いて振り向くと、困った顔の狐太郎が清姫をジッと見つめていた。
「はい、」
清姫が小さな声で答える。狐太郎は勇気を振り絞るような声で言った。
「あの、おかしな事を言うようですが、どこかでお会いした事はありませんか?!」
清姫はポカンとした顔になり、やがて泣き出さんばかりに微笑んで答えた。
「ええ。私も、そんな気がしてならないんです」
狐太郎はホッとした顔になり、ゆっくりと清姫に手を差し出した。清姫は差し出された手を嬉しそうにつないだ。
人間の狐太郎はどんどん年をとり、やがて布団から起き上がれないほど衰弱した。美しい清姫が狐太郎の枕元で、嬉しそうに話しをする。
「お前さん。今日はとってもいい天気なのよ?花は咲き乱れ、小鳥はさえずっているわ。ねぇ、お前さんもたまには外に出ようよ?」
狐太郎はしわくちゃの顔で微笑んで、清姫に手を差し出した。清姫は彼の手をそっと握りしめる。狐太郎は弱々しい声で言った。
「お清、わしはもうすぐ死ぬ」
清姫の顔は泣きださんばかりに顔をゆがめて言った。
「嫌よ、嫌。お前さんがいなくなったら、私ひとりぼっちになってしまう」
「お清、約束してくれ。わしは必ず、もう一度この世に生まれ変わる。そして、お清、お前をもう一度見つける。その時、またわしとめおとになってくれぬか?」
狐太郎の言葉に、清姫は美しい瞳から涙を流してうなずいた。
「お前さん、約束よ?約束だからね?私をきっと見つけてね?」
狐太郎は、清姫との約束に安心すると、静かに息を引き取った。清姫は狐太郎のむくろにすがりつき、静かに泣き続けた。
舞台が暗くなり、悟のナレーションが入る。
「お清は弥吉を失い、悲しみ続けた。何年も何百年も、弥吉の墓の前を離れなかった。ある日、花の咲き乱れる季節に、お清はふと決心した。生まれ変わった弥吉を探そうと。・・・。人間は増え、文化は発展し、それまで畑だった土地にはビルが建った。お清は人間にまぎれてひたすら弥吉を探し続けた」
亜子たちは急いで、サインペンで書いた顔のシワを落とした。着物を脱ぐと、普通の私服になった。
舞台が明るくなる。亜子と音子とみなもは買い物を楽しむ少女たちとして舞台を歩く。山彦も菊花も、河太郎も、現代の人間として歩いている。
舞台そでから、現代の服を着た清姫が歩いて来た。反対の舞台そでから、現代の服を着た狐太郎が歩いて来る。清姫はハッとした顔になる。
だが狐太郎は、清姫を見る事もなく彼女を通り過ぎて行った。清姫は、がく然とした顔になり、泣き出しそうに顔をゆがめる。その後、少し微笑んだ。
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「あの、」
声をかけられた清姫が、驚いて振り向くと、困った顔の狐太郎が清姫をジッと見つめていた。
「はい、」
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「あの、おかしな事を言うようですが、どこかでお会いした事はありませんか?!」
清姫はポカンとした顔になり、やがて泣き出さんばかりに微笑んで答えた。
「ええ。私も、そんな気がしてならないんです」
狐太郎はホッとした顔になり、ゆっくりと清姫に手を差し出した。清姫は差し出された手を嬉しそうにつないだ。
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