37 / 91
休息
しおりを挟む
狼牙が陰陽師を倒したからだろう。亜子たちを取り巻いていた陰陽師の結界は消えていた。そのため担任の雪奈と校長のさわらび童子が異変に気づいたようだ。
しゃがみこんでいる亜子たちの所に、雪奈とさわらび童子が駆け寄って来た。
「皆さん!ケガはないですか?!」
「はい。私たちは大丈夫です。だけど、狐太郎くんが」
亜子は狐太郎に視線を向けた。狐太郎は、先ほどと同じように、意識を失った狼牙をずっと抱きしめていた。
さわらび童子は亜子たちを見回しておごそかに言った。
「お主たちには休息が必要だ。その後話しを聞こう」
さわらび童子は軽く手を振った。すると倒れていた二人の陰陽師が、空中に浮かび上がった。次に、横にいた雪奈が手を振った。すると二人の男の身体のまわりが、氷で固められた。これでこの二人は逃げる事も、術を使う事できなくなった。
雪奈は亜子と音子の肩に優しく手を置いて言った。
「亜子さん、音子さん。食堂に行って、おりんさんにココアを淹れてもらいなさい」
音子はうなずいて、亜子の手を取って引っ張った。早く行こうというのだ。亜子は音子に引きずられながら後ろを振り返った。雪奈とさわらび童子が狐太郎の側に駆け寄って行った。
狐太郎の事は先生たちに任せた方がよさそうだ。
亜子は温かいココアを飲んで、フゥッと息をはいた。やっと実感が湧いてきた。亜子はあの時、殺されるかもしれなかったのだ。
亜子はブルリと身体を震わせた。背中に暖かな手の感触を感じた。横を向くと、となりに座っている音子が微笑んでいた。
音子の優しさに、亜子はそれまでガマンしていたものがあふれ出してしまった。
「音子。私、狼牙くんを止めなきゃって思って。だけど、私がカミナリ落としたら、あの人間は死んじゃうかもって思ったら怖くて。何もできなかった」
音子は亜子を優しく抱きしめてくれた。亜子は音子の温かさを感じた途端、泣き出してしまった。音子は亜子が泣き止むまで、ずっとだまって抱きしめてくれていた。
やっと亜子の涙がひいた後、タイミングをはかっかように雪奈が呼びに来た。
亜子たちは校長室に呼ばれた。校長室とは名ばかりの、小さな和室だった。
さわらび童子は上座に座布団をしいて座っていた。入室した亜子たちを見ると、にっこり笑って座るようにうながした。
亜子たちがかしこまって正座をすると、足をくずくように言われた。亜子と音子は言われた通り、くつろいで座る事にした。
雪奈は亜子たちのななめ後ろで正座をしていた。
しゃがみこんでいる亜子たちの所に、雪奈とさわらび童子が駆け寄って来た。
「皆さん!ケガはないですか?!」
「はい。私たちは大丈夫です。だけど、狐太郎くんが」
亜子は狐太郎に視線を向けた。狐太郎は、先ほどと同じように、意識を失った狼牙をずっと抱きしめていた。
さわらび童子は亜子たちを見回しておごそかに言った。
「お主たちには休息が必要だ。その後話しを聞こう」
さわらび童子は軽く手を振った。すると倒れていた二人の陰陽師が、空中に浮かび上がった。次に、横にいた雪奈が手を振った。すると二人の男の身体のまわりが、氷で固められた。これでこの二人は逃げる事も、術を使う事できなくなった。
雪奈は亜子と音子の肩に優しく手を置いて言った。
「亜子さん、音子さん。食堂に行って、おりんさんにココアを淹れてもらいなさい」
音子はうなずいて、亜子の手を取って引っ張った。早く行こうというのだ。亜子は音子に引きずられながら後ろを振り返った。雪奈とさわらび童子が狐太郎の側に駆け寄って行った。
狐太郎の事は先生たちに任せた方がよさそうだ。
亜子は温かいココアを飲んで、フゥッと息をはいた。やっと実感が湧いてきた。亜子はあの時、殺されるかもしれなかったのだ。
亜子はブルリと身体を震わせた。背中に暖かな手の感触を感じた。横を向くと、となりに座っている音子が微笑んでいた。
音子の優しさに、亜子はそれまでガマンしていたものがあふれ出してしまった。
「音子。私、狼牙くんを止めなきゃって思って。だけど、私がカミナリ落としたら、あの人間は死んじゃうかもって思ったら怖くて。何もできなかった」
音子は亜子を優しく抱きしめてくれた。亜子は音子の温かさを感じた途端、泣き出してしまった。音子は亜子が泣き止むまで、ずっとだまって抱きしめてくれていた。
やっと亜子の涙がひいた後、タイミングをはかっかように雪奈が呼びに来た。
亜子たちは校長室に呼ばれた。校長室とは名ばかりの、小さな和室だった。
さわらび童子は上座に座布団をしいて座っていた。入室した亜子たちを見ると、にっこり笑って座るようにうながした。
亜子たちがかしこまって正座をすると、足をくずくように言われた。亜子と音子は言われた通り、くつろいで座る事にした。
雪奈は亜子たちのななめ後ろで正座をしていた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる