あやかし学園

盛平

文字の大きさ
上 下
34 / 91

亜子の参戦

しおりを挟む
 亜子たちは我が目を疑った。狐太郎が白い巨人と戦っていたのだ。亜子たちが狐太郎を助けに行こうとすると、狐太郎の厳しい声が聞こえた。

「こっちに来るな!先生を呼んで来てくれ!」

 亜子はハッと我に返った。亜子たちが狐太郎を助けに行っても、力になれない。担任の雪奈を呼んでこなければ。亜子は音子と顔を見合わせてから、もと来た道を戻ろうとした。

 突然目の前に、透明な壁が出現した。亜子が狐太郎の方向に振り向くと、校庭全体をドーム状におおっていた。どうやら二人の不審者の術のようだ。

 これで亜子たちはこの場から逃げられなくなってしまった。亜子たちがどうしたよいか分からず固まっていると、狐太郎の声が響いた。

「狼牙!亜子と音子を守れ!」

 その声に亜子は、音子の腕に抱かれている狼牙を見た。狼牙は音子の首に抱きつきながら、機嫌が悪そうに顔をしかめている。いくら亜子と音子といえど、小さな狼牙に助けてもらう事などできない。狼牙は亜子と音子で守らなければ。

 亜子は音子を見た。音子も真剣な目で亜子を見返す。二人の気持ちな同じなのだ。危機的状況なのにも関わらず、亜子は微笑んだ。音子も一緒に笑う。

 亜子は父親からもらった天狗の扇を取り出した。この場にいる大切な人たちを守るためなら、亜子は妖術を使う事をいとわなかった。

 音子は狼牙を地面にゆっくりおろしてから言った。

「狼牙くん。ちょっとここで待ってて。あたしたちは狐太郎くんの加勢に行ってくる」
「や!俺も行く!」
「だめよ?危ないから」

 音子の言葉に、狼牙はぐずるように音子の足にしがみつく。亜子は音子に言った。

「音子。狼牙くんについていてあげて。私は狐太郎くんを助けに行く!」

 亜子はそれだけ言うと、音子の静止を振り切り走り出した。目指すは狐太郎を襲う、白い巨人だ。

 亜子は扇を振り上げると、カミナリ雲を発生させた。白い巨人に狙いを定め、一気に振り下ろした。

 大きなカミナリが白い巨人に直撃し、巨人は燃え尽きてしまった。狐太郎が驚いた顔で亜子を見た。亜子は真剣な顔で狐太郎を見返してから、二人の不審者に向かって叫んだ。

「狐太郎くんは、私たちの大切なクラスメートよ?!絶対傷つけさせない!」

 不審者の男たちは、亜子を見てあざけるように言った。

「ああ、お前この間街にいた半妖だな?ふらふらと人間の世界にやって来やがって、目障りなんだよ!」
「だが、お前たちが間抜けに歩き回るから、この結界の場所を探し当てる事ができたんだ」

 亜子はあ然とした。半妖であるというだけで、人間からこのように敵意を向けられたのは初めての経験だった。その上、この不審者を学園の結界に入れたのは、街に行った亜子たちが原因だったのだ。雪奈が突然態度を変えて、慌てて学園に戻ったのは、こいつらが後をつけていたからなのだ。

 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...