16 / 91
戦闘2
しおりを挟む
これはいける。狐太郎は心の中でつぶやいた。サトリの半妖の悟は、つぶさに敵である亜子たちの作戦を把握し、狐太郎の心に直接知らせてくれる。費やす時間は一秒にも満たない。
狐太郎は悟からの情報を元に、すばやくグループの仲間に対策の指示を出せるのだ。
序盤は河太郎の水攻撃だった。狐太郎はすかさず、同じ水の半妖のみなもに指示を出した。みなもと河太郎の能力はほぼ同じ、均衡状態が続いた。
次に亜子はやまびこの半妖山彦に攻撃を指示した。山彦の妖術は音波によるものだ。まともに食らえばただでは済まない。
だが狐太郎は、悟から事前に攻撃される事を知らされている。ふところに持っている術式の札を取り出し、防御壁の術を使う。
狐太郎の張った防御壁に、山彦の音波攻撃が当たり、目の前の透明な壁は破壊された。だが狐太郎は仲間を守る事に成功したのだ。狐太郎は横目でチラリと悟を見ながら聞いた。
「悟。亜子は攻撃してこないのか?」
今回の戦闘訓練では、相手の手の内を知った者が相対している。つまり敵の手の内が読めた上での戦闘なのだ。だが狐太郎たちには一つの懸念材料があった。それは唯一、手の内がわからない亜子の存在だ。
亜子は天狗の娘、きっとぼう大な妖力を有し、強力な妖術を使うはずだ。しかし亜子は、仲間に指示を出すばかりで、一向に攻撃はしてこなかった。悟は念話ではなく、自身の言葉で言った。
「亜子ちゃんは、妖術を使うのをためらっている。どうやら妖術に自信がないみたいだ」
「ん?妖力が弱いという事か?」
「逆だよ。強すぎて、僕たちを傷つけないか心配しているんだ」
「はっ、たいした自信だな」
「亜子ちゃんはお高くとまってるわけじゃないよ?いつも妖術のコントロールを誤って、お父さんに大ケガさせているらしいんだ」
「・・・。それはまずいな」
狐太郎がぼやくと、それまで穏やかだった悟の顔が鋭くなって叫んだ。
「狐太郎くん!清姫ちゃんが毒攻撃をする!」
「菊花!防御の網を張れ!」
鬼蜘蛛の半妖の菊花は、すぐさまクモの糸で、狐太郎たちを毒から守る網を張った。その直後に、清姫の毒液が網にかかる。
狐太郎の心に、悟の念話が響いた。
亜子ちゃんたちは、僕の妖術で手の内を読まれる事を嫌って、僕に集中して攻撃をしかけてくる。最初は狼牙くん。
狐太郎はチッと舌打ちした。巨大狼になった狼牙はものすごく強い。狐太郎の張った悟の防御結界も壊されてしまうだろう。狐太郎は音子に叫んだ。
「音子!狼牙が来る!行けるか?!」
「ガォ!」
虎ほどの大きさになった音子は、ガォッとうなり声をあげると、狼牙に向かって突進した。
狐太郎は悟からの情報を元に、すばやくグループの仲間に対策の指示を出せるのだ。
序盤は河太郎の水攻撃だった。狐太郎はすかさず、同じ水の半妖のみなもに指示を出した。みなもと河太郎の能力はほぼ同じ、均衡状態が続いた。
次に亜子はやまびこの半妖山彦に攻撃を指示した。山彦の妖術は音波によるものだ。まともに食らえばただでは済まない。
だが狐太郎は、悟から事前に攻撃される事を知らされている。ふところに持っている術式の札を取り出し、防御壁の術を使う。
狐太郎の張った防御壁に、山彦の音波攻撃が当たり、目の前の透明な壁は破壊された。だが狐太郎は仲間を守る事に成功したのだ。狐太郎は横目でチラリと悟を見ながら聞いた。
「悟。亜子は攻撃してこないのか?」
今回の戦闘訓練では、相手の手の内を知った者が相対している。つまり敵の手の内が読めた上での戦闘なのだ。だが狐太郎たちには一つの懸念材料があった。それは唯一、手の内がわからない亜子の存在だ。
亜子は天狗の娘、きっとぼう大な妖力を有し、強力な妖術を使うはずだ。しかし亜子は、仲間に指示を出すばかりで、一向に攻撃はしてこなかった。悟は念話ではなく、自身の言葉で言った。
「亜子ちゃんは、妖術を使うのをためらっている。どうやら妖術に自信がないみたいだ」
「ん?妖力が弱いという事か?」
「逆だよ。強すぎて、僕たちを傷つけないか心配しているんだ」
「はっ、たいした自信だな」
「亜子ちゃんはお高くとまってるわけじゃないよ?いつも妖術のコントロールを誤って、お父さんに大ケガさせているらしいんだ」
「・・・。それはまずいな」
狐太郎がぼやくと、それまで穏やかだった悟の顔が鋭くなって叫んだ。
「狐太郎くん!清姫ちゃんが毒攻撃をする!」
「菊花!防御の網を張れ!」
鬼蜘蛛の半妖の菊花は、すぐさまクモの糸で、狐太郎たちを毒から守る網を張った。その直後に、清姫の毒液が網にかかる。
狐太郎の心に、悟の念話が響いた。
亜子ちゃんたちは、僕の妖術で手の内を読まれる事を嫌って、僕に集中して攻撃をしかけてくる。最初は狼牙くん。
狐太郎はチッと舌打ちした。巨大狼になった狼牙はものすごく強い。狐太郎の張った悟の防御結界も壊されてしまうだろう。狐太郎は音子に叫んだ。
「音子!狼牙が来る!行けるか?!」
「ガォ!」
虎ほどの大きさになった音子は、ガォッとうなり声をあげると、狼牙に向かって突進した。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる