あやかし学園

盛平

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狐太郎たちの戦闘準備

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 担任の雪奈の言葉に、音子と菊花はおもむろに服を脱ぎ出した。狐太郎はあ然とし、悟は彼女たちから顔を背けた。

 彼女たちは、男子がいる場で、何の恥じらいもなく肌をさらす。半妖は幼くても美しい。その容姿で人間の男を魅了するのだ。彼女たちは自身の美しさを熟知している。

 狐太郎は目のやり場に困り、目の前にいる敵の亜子を見た。亜子は他の女子とは違っていた。美しくないわけではないが、まだ幼い普通の少女だった。大きな黒い瞳、つんと上を向いた鼻、小さな口。おそらく、成長すれば美しい女性になるだろう。

 しばらくして狐太郎は、もういいだろうと同じグループのメンバーを見た。音子は愛らしい茶トラの猫になっていた。狐太郎はホッとしてから菊花を見て、ギョッとした。菊花は下半身が蜘蛛だったが、上半身は美しい少女のままだった。

 美しい少女の下半身が恐ろしい蜘蛛なのは、グロテスクな美しさだった。だがこのままでは、目のやり場に困り、狐太郎は菊花に指示を出しにくい。狐太郎は菊花に言った。

「菊花、完全な大クモになる事はできるか?」
 
 菊花はキョトンとした顔をしてから、ふてくされたような顔で答えた。

「ええ、できるわ。でも、この方が可愛くない?私、この姿の方が好きなの」
「うんうん。菊花ちゃん、とっても可愛い!」

 猫の音子を抱っこして頬ずりしていたみなもが、菊花を見てうっとりするように言った。菊花は嬉しそうに、でしょでしょと話している。

 美しい?だろうか。狐太郎にはグロテスクな異形のあやかしにしか見えない。だが本音を菊花に言えば、彼女は怒って連携どころではなくなるだろう。

 ふと悟を見ると、悟は狐太郎をジッと見て、大きくうなずいた。きっと悟は狐太郎の心を読んで、その通りだと言いたいのだろう。悟との意思の疎通はとても便利だ。

 狐太郎はゴクリとツバを飲み込んでから菊花に言った。

「そうだな、菊花。その姿はとても綺麗だ。だが、完全な大グモの姿も綺麗だと思うぞ?」

 菊花はまんざらでもなさそうで、そうかしらと言って、大グモに姿を変えた。みなもは大グモの菊花も綺麗と言ってはしゃいでいた。猫の音子もニャーニャー何か言っている。

 女はすぐに可愛いだの綺麗だのと言葉を連発する。狐太郎にはさっぱり理解できない。だがこれで心置きなく戦える。

 狐太郎は足元に落ちている石を拾い、五芒星を描き、ぐるりと丸で囲った。悟に目配せすると、悟はうなずき狐太郎が描いた五芒星の中に入った。

 狐太郎は素早く口の中で呪文を唱える。五芒星が輝き出す。悟を守るための防御術だ。悟は、相手の心を読めるという強い妖力を持っているが、どうにも戦闘には不向きだ。おそらく亜子たちは最初に悟を狙うだろう。

 悟は狐太郎に振り向き、微笑んで言った。

「やっぱり、亜子ちゃんたちの作戦は、僕を最初につぶすらしい」
「心配するな、悟。この結界はちょっとやそっとの攻撃では破られない」

 悟はうなずいた。これから戦いが始まる。
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