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第5章 婚約破棄編

【閑話】ある冒険者の話し 5

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(ロイドside)

平気な顔をしてワタヌキ君達の前に立っていたが、実はもういっぱいいっぱいだったんだよなぁ……


実は彼の前、襖二枚分くらいしか【光の盾】を展開してなかったんだ。
流石にバターケ全体にとか無理だぜ。


何か上手く勘違いしくれたから、助かったけどな……
いゃあ…マジでヤバかったな。


「き…」

「「き?」」

「今日はこのくらいで勘弁してやる!
覚えてろよ~!!」


へ?
彼は突然、反転して猛スピードで逃走した。
えっマジ?
ここに来て、逃走??
しかも何だよ?あの負けた時の敵役みたいな捨て台詞は!?


今までさんざん、パーティーメンバーだの家族だのと言っておきながら、仲間は置いてきぼりかよ!?


それにあの動き…普通の【身体強化】しか使ってないよなぁ?


確か【神速】ってスキル持ってるって情報だったけど?
俺が疑問に思いながら、彼が去って行った方向を見ていると、ハインツの旦那がその疑問に答えてくれた。


「彼、たぶん剣技にしか【神速】使ってなかったんじゃないか?
他は【身体強化】で補ってる可能性が高い。」

「何じゃそりゃ?普通【神速】の方使わねぇか?」


意味がわからん……


「彼…ラノベ好きみたいだから、全部それを参考にしてたんじゃないのかな?
普通なら誰か師匠について習ったり、似た様なスキル持ちに習うものだけどね。

おそらく教えてくれようとした、男性冒険者の誘いも断ってたんじゃないか?

あの女盗賊団の奴らに、簡単に騙されてるところを見ると……
ラノベ知識を鵜呑みにして、ちゃんとこの世界の常識習ってないのかも。 」


あり得るなぁ…ワタヌキ君の言動を見る限り、ラノベのハーレム主人公のテンプレ行動だったし。


「ところでハインツの旦那…追いかけなくていいんですか?」

「大丈夫…すぐ追いつくから。後は任せるよ…… 」


そう言って、ハインツの旦那は目にも止まらぬ速さで走って行った。
そういや旦那は【神速】の上位互換スキル【】持ってたな。


「で…そこの姉ちゃんは何処に行くつもりだ?」

「あっ…… 」


俺とハインツの旦那が喋っている間、ずっと放置してた女盗賊【オーガのマーサ】はこっそり逃げようとしてた様だが、そうは行くか!!


「皆んな、はぁ出て来てええぞ!」


俺が呼びかけると建物の影からバターケの領主ヤッさんや住民達が、それぞれの武器を持ってやって来た。
皆んな見た目が893っぽいが、普通の漁師と町の衛士達だ。


「へぇ~コレがうち領地しまを荒らしに来ちょった女盗賊か?」

「ほうよ。コイツ一人で金貨3枚する♪」

「金貨3枚ありゃあ、もう一隻魔道高速船が買えるんじゃないかのぉ♪」

「いやいや、それより診療所を建てて【聖女】様は無理でも【治療師】様に来てもらおうや!」


皆んな臨時収入が入って嬉しそうだ。


「まぁ直ぐにゃぁ金にならんけぇ、その前に…… 」


そう言って住民はすっかり怯えている、女盗賊マーサを取り囲む。


「「「「よくもうち領地しまを荒らしてくれたのぉ……
女じゃけん言うて、容赦してもらえると思っとらんじゃろうのぉ~?」」」」


うわぁ~悪い顔。
あの【オーガのマーサ】が真っ青になって震えてるじゃないか。


あ…俺を見て助けを求めても無駄だからな!
何しろ賞金の条件は《生死を問わず。証言、または証拠が有れば良い。》だから、ギルドのサブマスである俺の証言が有れば良いって事だ。


「ひっ!た…助け…… 」

「「「「寝言は寝て言えやぁ~!!」」」」


ドカッ!バキッ!


「ぎゃ~!!」


因果応報……
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