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第3章 噂の真相

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(後日談…… )


あの後…大谷さんは散歩にも出ずに、部屋に籠って仕事をし始めた。


「コレよ、コレ!私が求めていたのは、コレなのよ♪♪」


と言いながら、凄い勢いでPCに文章を打ち込んでいた。
どうやら大谷さんの職業は、ドラマの脚本家だったらしい……


結局、何のドラマの脚本を書いているかは、教えてくれなかったけどね。


そして私達の中間試験が終わった頃、大谷さんは東京に帰る事になり、私達【オカルト研究同好会】と徳さんと満月は、空港まで送って行く事になりました。


「あなた達のおかげで、良い脚本が書けたから今日は奢りよ♪」


と皆んなにランチを奢ってくれた。更に、帰りの交通費までくれたの。
私達、そこまで感謝される様な事したかなぁ?


「また、来るからねぇ~♪♪」


そう言い残し、大谷さんは上機嫌で東京に帰って行った。


「そう言えば薫ちゃん、この前ずいぶんと大谷さんと話が盛り上がってたけど、何の話してたの?」


すると薫ちゃんは、バツが悪そうな顔をしながら、大谷さんとの話の内容を教えてくれた。


「この前の《スクモ塚事件》の話…… 」

「えぇっ!?アレ内緒って言ったじゃない!」

「だってせっかく私達で解決したのに、世に出ないの悔しいじゃない!それに大谷さん、ネタに詰まっていて見てて気の毒だったんだもん!

私…アクションシーンとか書くの苦手だから、プロの大谷さんが書いたらどうなるか見たかったし…… 」

「気持ちはわかるけどねぇ。」

「それにアヤメさんも《謎の暴走族事件》の事話してたわよ。」

「そ…そうなんだ…… 」


《謎の暴走族事件》は、まぁ仕方ないかぁ……
アレはこの町じゃ有名な話だから。
て…アレ?大谷さんってまさか???


「あのさ…薫ちゃん、大谷さんが書いてるって、もしかして?のだったりするの??」

「えっ?そうだよ。メインライターの【大谷愛子】さん。知らなかったの?有名じゃない!」

「知ってる訳ないでしょ!!有名なのってごく一部の人達限定だよね!?」

「あははは♪」


だから徳さんと満月の事、観察してたのか。


数ヶ月後…東京にいる大谷さんから私達に、新幹線の切符との映画のプレミアム試写会のチケットが届いたの。


『県立H高校【オカルト研究同好会】の皆さんへ

皆んなのおかげで良い脚本が書けました。
お礼に【映画オニレンジャーVSジクウレンジャー】(前期と今期のヒーローのコラボ映画)のプレミアム試写会のチケットと新幹線の切符を送ります。
皆んなで観に来てね!待ってます。』


「やった~♪【オニレン】のプレミアム試写会のチケットゲット♪♪」

「えーマジかよ……
大谷さん、コレの脚本家だったの?
出来れば遠慮したい…だが東京には行きたい!う~ん悩むなぁ…… 」


まぁ薫ちゃんはファンだから嬉しいだろうけど、坂野君は複雑だよね。
私?私は行くわよ…だって徳さんと満月が行く気になってるんだもの……


私達とは、別口でストロベリームーンウチ宛にチケットが届いてたのよね。


結局皆んなで行く事になった。
引率はアヤメさんがしてくれる事になりました。
りくは試験があるから、無理なんだって。
残念……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(新幹線駅……  )


「で…何で田口さん達まで居るの?」


駅の待合で皆んなを待ってたら、何故か稲荷狐キツネの集団と遭遇した。


「たまたまだよー♪僕達は前から楽しみにしてた、ツアーのチケットが当たってね!奥さんと一緒に京都に行くんだ♪」

「えっ?田口さんって結婚してたの!?」

「そうだよ。彼女が僕の奥さんの花ちゃん♡」

「はじめまして…花です。」

「あ…どうもはじめまして。山根理子です。田口さんにはお世話になってます。」


田口さんの奥さんは、小柄で可愛いらしい和風美人?だった。どうやら稲荷狐キツネではないらしい。


「じゃあ、僕らは先に行くね。」

「では皆さん、お見送りありがとうございました。山根さんお先に失礼します。」


ペコリ


そう言って田口さんは、奥さんと改札を通って行った。他の稲荷狐キツネ達は、見送りだって。


その後直ぐに皆んなが来て、東京に向けて出発!車内では田口さん達に会わなかったから、1本前の便だったみたいね。


4時間程で東京駅に到着。一旦、大谷さんが予約してくれたホテルに、荷物を預けてチェックインの時間まで、近くを散策。


徳さんと満月は『都内に住んでいる知り合いに、お土産を持って行く。』と言って別行動に……


なんだか私より、東京に慣れてるのがなんかモヤっとする。
ところで、『都内に住んでいる豆狸タヌキの知り合いって誰?


夜は大谷さんに、ホテルのレストランで夕食をご馳走して貰いました。東京のホテルだけあって凄く美味しかった。


翌日は、いよいよ【オニレン】のプレミアム試写会。
パンフレットによると、来期のヒーローが出るらしい……


「VS映画の場合、だいたい中盤ぐらいに出てくるのが、定番よね。」

「今度の戦隊も楽しみね♪」


薫ちゃんとアヤメさんは、既に盛り上がっている。坂野君は帽子を目深に被って俯いていた。


「やっぱ、来るんじゃ無かったかも…… 
居心地が悪過ぎるぜ!」

「大丈夫よ。男性が居ない訳じゃないんだから。」

「けど、圧倒的に少ないだろ。しかもほとんど映画関係者じゃないか……
それにしても、なんで俺まで呼ばれたんだろ?」

「そう言えばそうだよね。薫ちゃんとアヤメさんは、ファンだからわかるけど……
徳さんと満月が、呼ばれた理由もわからないわ。」


その徳さんと満月は、【オニレン】のファンの女性に囲まれて、まんざらでもなさそう。


皆んな騙されないで!ソイツらの正体は、中見ジジィの豆狸タヌキよ!!


会場に入る前に大谷さんから『【藤映】のお偉いさんも来るから、何があっても騒がない様にね!!』と念を押された。


コレはなんかあるわね……


そして、薫ちゃんとアヤメさんの予想通り、映画の中盤に差し掛かった頃、来期のヒーローが登場した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

劇場版【オニレンジャーVSジクウレンジャー】


ドカーン!!


オニレンジャーの必殺技が決まり、敵の西洋妖怪怪人が吹き飛んだ。


「手強い相手だったな!」

「だが、俺達は勝った!」

「これ以上は、もう無理…… 」

「早く帰って、ご飯食べようよ♪」

「……………………  。」


画面には、オニレンジャーが立ち去った後も暫く怪人と戦った場所が写されている。


やがて場面は夜のシーンに切り替わり、吹き飛んだハズの怪人が、ビデオの逆再生の様に復活した。


「クックックー!バカめ!私には再生能力があるのだ。コレでヤツらの弱点がわかった。魔王デービルド様にご報告だ!!」
 

と言って立ち去ろうとしたところに、来期のヒーロー登場。


「マジカ帝国の怪人発見!」


チャラレッドが現れた。


「な、なんだ貴様らは!?」


突然現れた、新ヒーローに驚く怪人。


「レッド…ソレ違うんじゃないか?」


とクールブルー。


「えっ?そうなんですの?悪玉反応はありますのに?」


テンネンホワイトは、お嬢様口調で不思議そうに首をかしげる。


「どうでもいいから、早くぶっ倒して帰ろうぜ!」


ヤンチャブラックはちょっと単純思考らしい。


「世界の平和のために、サッサと倒してあげるのが世のため人の為よ。」


コモンピンク…どこら辺が常識なのか意味がわからない……


「「「「「まぁとにかく、倒せばいいんだよな(ね)?」」」」」


新ヒーロー【ジクウレンジャー】は、あっという間に怪人を倒して颯爽と帰って行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

えぇっ!?何アレ??
もしかして、私達をモデルにしてるの?


左隣りを見ると坂野君は、くちを開けてポカンとしてた。右隣りにいる薫ちゃんとアヤメさんは、凄く嬉しそう。


徳さんと満月は…とっくに飽きて寝ている……


だから大谷さん、私達を呼んだのね。モデルが私達だって、皆んなにバレたら恥ずか死ぬ!!


こうして私達の東京ツアーは、なんとも言えないモヤっと感を残して終了した。


「ところで、徳さんと満月が会いに行った東京の知り合いって誰だったの?」

「あぁ、大物妖怪の【狸穴まみあな※1の狸】じゃ。」

「こっちに来た時には、必ず挨拶しに行っとる。地方の土産を持って行くと、喜ばれるんじゃ。」

「へぇ~そうなんだぁ。」


そう言えば、コイツら妖怪だったわ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※1

麻布の【狸穴まみあな


狸穴の地名の由来については諸説あるが、この地に生息していた猯(まみ=アナグマ)に因んで『まみあな』という地名がついたのだが、後に狸の字と混同されてしまい、狸穴(まみあな)と書かれるようになったとする説が有力である。

長い坂下に雌狸の棲む大きな洞穴があったのが、地名の起こりとされる。
寛永21年(1644年)には、三代将軍・徳川家光がこの穴の視察を命じたという話も残っている。


(参考・引用文献 ウィキペディア)
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