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シナリオと現実 編

【閑話】婚約者との顔合わせ

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(リクside)10歳

俺には婚約者がいる。
我が国の神、ブリーダー様のお告げで決まった婚約者だ。


その婚約者は高位貴族の娘ではあるが、アヌイーではなく、アキタという犬種だった。


父親の公爵はアヌイーだったから、期待していたのだが顔合わせに現れた婚約者はアヌイーではなかった様だ。


しかも男の俺よりも背が高く、薄っすらと茶色がかっていた。


母上に『アヌイーはアヌイー同士で結婚するのが正しい』と幼い頃から言い聞かされていたので、酷くガッカリした。


元騎士団長だという婚約者の祖父、老侯爵は更に大きく、側近候補で親友のアラシの父親である現騎士団長が小さく見えるくらいだった。
(犬種が違うからね。)



現騎士団長は老侯爵が怖いのか、いつもはキリリと巻いている尻尾が下がっている。


現役時代、よほど怖かった様だ。
俺は怖くて、尻尾を股に挟んでしまった。


そんな中、父上だけはいつもの様に尻尾をキリリと巻いていた。
流石は父上だ!!


王太子として俺も見習わなくてはいけない。


暫くして、大人同士の話し合いになったので、俺は婚約者を庭に案内する事になった。


同い年なのに、俺よりも頭一つ大きな身体。(大型犬だからね。)
俺は小柄な娘が好みなのだ!!
(アヌイーは中型犬)


令嬢らしく、俺の少し後ろを歩いているがどうも落ち着かない。
案内と言いながら、一言も喋る事なく庭を歩き周り、疲れたのでお茶の用意をしてあった四阿に向かった。


黙ったまま、向かい合いでまっ茶と茶菓子の練り切りを食べた。
それにしても、こいつ何故一言も口を聞かないのだ?


結局、話しをしないまま時間切れになり、婚約者は前騎士団長の侯爵と共に帰ってしまった。


数年後、女の扱いが上手いコウにその見合いの事を話したら、『きちんとしたご令嬢なら当たり前の事で、殿方から話しかけられて初めて口をきく物です。』と言われた。


思えばこの時、彼女ときちんと話しをしていれば後々起こる悲劇は免れたのかもしれない。


しかし、俺はこの時点でその事に気づかなかったのだ。








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