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23話 第四騎士団西へ
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皆さん再びお目にかかりましたね。
取り調べ官Aこと、第四騎士団団長のベルツリーです。
現在、我々第四騎士団は先日逮捕した『マリー・フォルラン』の実家フォルラン家の前に来ています。
王都から西へ馬車で8日。
いやぁ、最近魔道車の方に乗り慣れているので腰に来ますね。
今回は特別にエミール殿下とサイド家からアドバイザーとして、ハーシー殿にもお越し頂きました。
え?副団長ですか?
彼は王都で留守番ですよ。
団長も副団長も、両方来る訳にはいかないでしょう。
そういえば地方出張する事を、やけに羨ましがっていましたね。
副団長には名物のマジックバイパーの干物でも買って帰りましょう。
さて、お仕事しますか!
「現在の時刻は午前5時。
皆さん準備は整ってますね。」
部下達に問いかけると
「はい!」
と密やかな声がした。
大声を出して気づかれたら、元も子もないありませんから。
行動部隊隊長が確認の為にガサ状を読み上げます。
「まず、中に居る対象ですが、マリー・フォルランの父親65歳、弟夫婦共に36歳、16歳の長男、15歳の長女。
コレから家財を選別し差押える。」
『何故こんな早朝から?』とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
理由は早朝だと起きたてで、相手の頭がまだちゃんと働いていないからです。
「エミール殿下とハーシー殿も宜しいでしょうか?」
と行動隊長と後ろを振り返ると、お二人共凄く期待した目でフォルラン家を見つめておられました。
う~ん、コレは興奮して寝てない、とかかなぁ?
大丈夫ですかね?
「では、手筈通りお願いしますね。」
「了解しました。」
事前の打ち合わせ通り、部下達が対象の家を包囲していきます。
では、行きますかね……。
あ、私が直接行く訳じゃありませんよ。
団長の私は後方で、指揮を執るのがお仕事です。
今回は後ろのお二人の護衛も兼ねてますしね。
第一部隊長がフォルラン家に突入し、暫くして家から五人の人間が出て来ました。
あれがマリーの実家の家族ですか。
どうやら、抵抗はしなかったみたいですね。
事前の調査によると、『フォルラン家』というのはかなり古くからこの地にある家で、かつては『呪術師の家』と言われこの地方を支配していたそうですよ。
その能力をちゃんと受け継いだのはマリーだけだったようで、今は細々と『占い師』をしているのだそうです。
さて、何が出て来ますかね?
待っていると、家の中から沢山の荷物を持った部下達が出て来ました。
本陣にしているテントに、次々と運び込まれる魔道具の数々……。
それを嬉々として仕分けていくお二人。
いやぁ~、本当に嬉しそうですね~。
中には、現在『フォルラン家』の人達が、商売道具として使っている物もありました。
彼等は知らなかったようですが、お二人によれば結構強力な魔道具だそうですよ。
ただ、禁止されている魔道具ではないので、今後も使用して問題ないそうです。
良かった良かった。
大事な商売道具ですから、この家族から取り上げるようなことにならなくて、本当に良かったですね。
軽く事情聴取したところ、彼等は『占い師』をしている普通の平民で、随分と前に家を出たマリーが、今まで何をしていたか、我々が来るまで全く知らなかったそうです。
『地下室の更に奥に隠し扉発見。』
と報告を受け、ハーシー殿と共に向かうと、棚を退かせた後ろに、如何にもな扉がありました。
ハーシー殿に調査してもらいましたが『特に仕掛けはない。』
との事、扉を開けると中は意外にも綺麗で、とても長い間開けていなかったようには見えないですね。
ハーシー殿の話しによると、それは【状態保存の魔法】という古代魔法が使われているからだそうです。
なるほど、王城の宝物庫や禁書庫などにかけてある魔法ですか。
どうやら、フォルラン家の先祖は相当腕の良い魔導師だったらしいですね。
中は狭いので、私達は一旦外に出て待っていると、隠し部屋の中にあった物が次々と運び出されて来ました。
中でもお二人が興味を引いたのが【危険な魔道具図鑑Ⅴ】だそうです。
何でも『あるという噂』はあったのに、現物を見た人が誰もいなかったそうです。
他にも【人を呪い殺す人形】とか【鞘から抜いたら殺人鬼になる剣】とか【魅了のペンダント】とかありました。
軽く馬車2台分はありますかね?
まぁ、よくこれだけ収集していたものです。
今回は、悪用されなくて良かったですね。
おそらく、かつてのフォルラン家はこれらの魔道具を使って、この地方を支配していたのでしょう。
そうこうしている間に、お二人がまた興味深い物を見つけたみたいですよ。
【例の指輪】が入っていたと思しき、金属の箱です。
エミール殿下の説明によるとこの箱は【魔力遮断機能】が付いていて、王城で殿下が使った物は空箱だけあった物を応急処置で使ったのだとか。
その空箱が結構あった、というのがちょっと不安ですね。
箱の蓋の内側に何か文字が書かれていますが、私には読み取れませんね。
それもそのはず、【王家にしか伝わってない文字】だそうですよ。
なんとかエミール殿下に読み取って頂いた結果
《親愛なるサリーへ
俺と君との出会いを記念して、この【入れ替わりの指輪】を贈ります。
ユイナダ トオル
追伸 :いつか君を迎えに来ます。》
【ユイナダ トオル】というのは【ユイナーダ王家】の始祖【トール王】の事ですよね?
あー、これはもしかして【王家の始祖トール・ユイナーダ】様によるやらかしですか?
文字を読み終えたエミール殿下は、
『暫く一人にして欲しい。』
とおっしゃって荷物を運び出し、空になった隠し部屋に入り扉を閉め、思いきり叫ばれておられます。
「ご先祖様の馬鹿~!!こんな面倒な事になったの、全部アンタの所為じゃないか!!」
「あんな危険な魔道具、記念に置いてくなよ!
ちゃんと回収しろ!」
などと叫んでいらっしゃいました。
他の方に聞かれたら、流石にマズイ御発言ですね。
もちろん、私は誰にも言いませんよ。
フォルラン家に何人か部下達を残し、私達は王都へ帰還することにしました。
ここで詳しく調査するのは難しいですからね。
それに押収品が多すぎて乗れなくなったのと、関係の無い家財道具を戻す作業もありますし。
何処かの国みたいにそのまま帰る、なんて事はしませんよ。
帰りの馬車の中で、エミール殿下はある宣言をされました。
「学園を卒業したら小説を書きながら、他にもあるだろう御先祖様のやらかしを、片っ端から潰して行く!」
ハーシー殿も丁度その頃、妹さんが卒業するので学園を辞めてエミール殿下の補佐として同行する約束をされています。
お二人共、許可が下りると良いですね。
我がベルツリー侯爵家にも、何かあるかもしれません。
帰ったらすぐに調査してみますか。
では皆さん、またどこかでお会いしましょう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ちょっと某番組のサブタイトル風にしてみました。
※1 マジックバイパーの干物は、フォルラン家のある地方の名産。
主に酒のあて。
そのまま焙って食べてもMPは上がるが、近年マジックポーションの材料としても優秀である事が解った。
ただしこれを入れるとMPの回復力は格段に上がるが、味は格段に不味くなる。
取り調べ官Aこと、第四騎士団団長のベルツリーです。
現在、我々第四騎士団は先日逮捕した『マリー・フォルラン』の実家フォルラン家の前に来ています。
王都から西へ馬車で8日。
いやぁ、最近魔道車の方に乗り慣れているので腰に来ますね。
今回は特別にエミール殿下とサイド家からアドバイザーとして、ハーシー殿にもお越し頂きました。
え?副団長ですか?
彼は王都で留守番ですよ。
団長も副団長も、両方来る訳にはいかないでしょう。
そういえば地方出張する事を、やけに羨ましがっていましたね。
副団長には名物のマジックバイパーの干物でも買って帰りましょう。
さて、お仕事しますか!
「現在の時刻は午前5時。
皆さん準備は整ってますね。」
部下達に問いかけると
「はい!」
と密やかな声がした。
大声を出して気づかれたら、元も子もないありませんから。
行動部隊隊長が確認の為にガサ状を読み上げます。
「まず、中に居る対象ですが、マリー・フォルランの父親65歳、弟夫婦共に36歳、16歳の長男、15歳の長女。
コレから家財を選別し差押える。」
『何故こんな早朝から?』とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
理由は早朝だと起きたてで、相手の頭がまだちゃんと働いていないからです。
「エミール殿下とハーシー殿も宜しいでしょうか?」
と行動隊長と後ろを振り返ると、お二人共凄く期待した目でフォルラン家を見つめておられました。
う~ん、コレは興奮して寝てない、とかかなぁ?
大丈夫ですかね?
「では、手筈通りお願いしますね。」
「了解しました。」
事前の打ち合わせ通り、部下達が対象の家を包囲していきます。
では、行きますかね……。
あ、私が直接行く訳じゃありませんよ。
団長の私は後方で、指揮を執るのがお仕事です。
今回は後ろのお二人の護衛も兼ねてますしね。
第一部隊長がフォルラン家に突入し、暫くして家から五人の人間が出て来ました。
あれがマリーの実家の家族ですか。
どうやら、抵抗はしなかったみたいですね。
事前の調査によると、『フォルラン家』というのはかなり古くからこの地にある家で、かつては『呪術師の家』と言われこの地方を支配していたそうですよ。
その能力をちゃんと受け継いだのはマリーだけだったようで、今は細々と『占い師』をしているのだそうです。
さて、何が出て来ますかね?
待っていると、家の中から沢山の荷物を持った部下達が出て来ました。
本陣にしているテントに、次々と運び込まれる魔道具の数々……。
それを嬉々として仕分けていくお二人。
いやぁ~、本当に嬉しそうですね~。
中には、現在『フォルラン家』の人達が、商売道具として使っている物もありました。
彼等は知らなかったようですが、お二人によれば結構強力な魔道具だそうですよ。
ただ、禁止されている魔道具ではないので、今後も使用して問題ないそうです。
良かった良かった。
大事な商売道具ですから、この家族から取り上げるようなことにならなくて、本当に良かったですね。
軽く事情聴取したところ、彼等は『占い師』をしている普通の平民で、随分と前に家を出たマリーが、今まで何をしていたか、我々が来るまで全く知らなかったそうです。
『地下室の更に奥に隠し扉発見。』
と報告を受け、ハーシー殿と共に向かうと、棚を退かせた後ろに、如何にもな扉がありました。
ハーシー殿に調査してもらいましたが『特に仕掛けはない。』
との事、扉を開けると中は意外にも綺麗で、とても長い間開けていなかったようには見えないですね。
ハーシー殿の話しによると、それは【状態保存の魔法】という古代魔法が使われているからだそうです。
なるほど、王城の宝物庫や禁書庫などにかけてある魔法ですか。
どうやら、フォルラン家の先祖は相当腕の良い魔導師だったらしいですね。
中は狭いので、私達は一旦外に出て待っていると、隠し部屋の中にあった物が次々と運び出されて来ました。
中でもお二人が興味を引いたのが【危険な魔道具図鑑Ⅴ】だそうです。
何でも『あるという噂』はあったのに、現物を見た人が誰もいなかったそうです。
他にも【人を呪い殺す人形】とか【鞘から抜いたら殺人鬼になる剣】とか【魅了のペンダント】とかありました。
軽く馬車2台分はありますかね?
まぁ、よくこれだけ収集していたものです。
今回は、悪用されなくて良かったですね。
おそらく、かつてのフォルラン家はこれらの魔道具を使って、この地方を支配していたのでしょう。
そうこうしている間に、お二人がまた興味深い物を見つけたみたいですよ。
【例の指輪】が入っていたと思しき、金属の箱です。
エミール殿下の説明によるとこの箱は【魔力遮断機能】が付いていて、王城で殿下が使った物は空箱だけあった物を応急処置で使ったのだとか。
その空箱が結構あった、というのがちょっと不安ですね。
箱の蓋の内側に何か文字が書かれていますが、私には読み取れませんね。
それもそのはず、【王家にしか伝わってない文字】だそうですよ。
なんとかエミール殿下に読み取って頂いた結果
《親愛なるサリーへ
俺と君との出会いを記念して、この【入れ替わりの指輪】を贈ります。
ユイナダ トオル
追伸 :いつか君を迎えに来ます。》
【ユイナダ トオル】というのは【ユイナーダ王家】の始祖【トール王】の事ですよね?
あー、これはもしかして【王家の始祖トール・ユイナーダ】様によるやらかしですか?
文字を読み終えたエミール殿下は、
『暫く一人にして欲しい。』
とおっしゃって荷物を運び出し、空になった隠し部屋に入り扉を閉め、思いきり叫ばれておられます。
「ご先祖様の馬鹿~!!こんな面倒な事になったの、全部アンタの所為じゃないか!!」
「あんな危険な魔道具、記念に置いてくなよ!
ちゃんと回収しろ!」
などと叫んでいらっしゃいました。
他の方に聞かれたら、流石にマズイ御発言ですね。
もちろん、私は誰にも言いませんよ。
フォルラン家に何人か部下達を残し、私達は王都へ帰還することにしました。
ここで詳しく調査するのは難しいですからね。
それに押収品が多すぎて乗れなくなったのと、関係の無い家財道具を戻す作業もありますし。
何処かの国みたいにそのまま帰る、なんて事はしませんよ。
帰りの馬車の中で、エミール殿下はある宣言をされました。
「学園を卒業したら小説を書きながら、他にもあるだろう御先祖様のやらかしを、片っ端から潰して行く!」
ハーシー殿も丁度その頃、妹さんが卒業するので学園を辞めてエミール殿下の補佐として同行する約束をされています。
お二人共、許可が下りると良いですね。
我がベルツリー侯爵家にも、何かあるかもしれません。
帰ったらすぐに調査してみますか。
では皆さん、またどこかでお会いしましょう。
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ちょっと某番組のサブタイトル風にしてみました。
※1 マジックバイパーの干物は、フォルラン家のある地方の名産。
主に酒のあて。
そのまま焙って食べてもMPは上がるが、近年マジックポーションの材料としても優秀である事が解った。
ただしこれを入れるとMPの回復力は格段に上がるが、味は格段に不味くなる。
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