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五台山
五台山-デートの約束
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高知市の町外れに五台山という山があり、そこでデートしたカップルは必ず別れることになるという都市伝説のような噂話がある。
そんな事を信じていない僕達の初めてのデートは五台山だった。
大学に入学した時、僕には高校時代から付き合っていた地元の彼女がいて、遠距離恋愛をしていた。彼女の事は大好きだったんだけれども、なかなか会えないので寂しくて、浮気性の僕は周りにいる女の子達に気持ちがいっていた。
実際に浮気のようなこともしてしまった。
そんな僕の浮ついた心を許せなかったのか、ついに彼女から「好きな人ができた」と言われてしまった。
「しゅうくんの事も好きなんだよ」と言われたんだけれども、プライドの高い僕は彼女の事が許せなかった。そして、本当は納得いっていなかったんだけれども、僕は自ら彼女に別れを告げた。
それからの僕は大いに荒れた。飲めない酒を浴びるようにのみ、喧嘩をし、自らを傷つけた。
僕は何度か死にそうな目にあい、ボロボロになった。この寂しさと悲しさを引きずったまま生きていくことはできないと思った。忘れるために何かしようと思った。悩んだ末に僕はクラスで一番の可愛い子にアタックする事にした。
普段の僕はとてもじゃないが、そんな行動ができるタイプではない。どちらかと言うと様子を見て慎重に事を運ぶタイプなのである。脈があるかないか慎重に見極めて脈がありそうだったらようやくアタックするタイプなのだ。
しかし、この時は自暴自棄になっていて、ダメならダメで次に行けばいいやという気持ちになっていた。振られるの上等、振られた時には駄目な自分を再認識すればいい。周囲の目なんか気にしない。そんな自傷行為的な、特攻隊のようなアタックを決断した。
6月のある日、最終講義を終えたあと、僕はこのクラスで一番好みのみっちゃんに近づいた。みっちゃんは美人でスタイルもよく、笑顔が可愛いくてクラスでも一目置かれている存在だ。
「今日、一緒にご飯食べに行かない?」
「ええ?二人で?」
「うん」
僕は僕に似合わず、ズケズケと切り込んだ。君の事がタイプなんだもっと知りたいという好意を丸出しにして。
すると意外にも彼女は嬉しそうにOKをしてくれた。
僕は特にイケメンでも無く、見た目でもてるといった要素はほとんど無い。それでもこんな可愛い子と食事に行く事が可能なんだと有頂天になった。
世の中の美人は、近寄り難い雰囲気のためにその美貌ほどはチヤホヤされてないのかもしれない。そして、美人の自覚があるから褒められることに弱い。僕は勇気を持って素直に気持ちを伝えることはとても大事だとこの時悟った。
夕方に待ち合わせして、彼女を大学の近くの喫茶店に連れて行き、その店のお勧めメニューを食べた。彼女はチキンカレーを頼み、僕はドライカレーにした。僕達はお互いに少しずつシェアをして味わった。チキンカレーはよく煮込まれていてとてもジューシーな味わいで、ドライカレーはホクホクご飯の上にうま辛いルーの塊が乗っていた。
食後のコーヒーは無料だった。大学周辺のお店は良心的な店が多い。僕達はこの店のサービスにとても満足しながら雑談をした。この時、僕は頭をフルパワーで働かせて今まで見聞きした話を面白おかしくするように務めた。
それが功を奏したのか、みっちゃんはとてもリラックスしてよく笑ってくれた。
食事を終えて外に出ると、梅雨の夜空には今にも雨が降り出しそうな雲が漂っていた。僕は雨が降らないことを祈りながら、彼女を女子寮まで歩いて送って行った。
その道すがら、とうとう雨が降り始めた。
小走りで女子寮に向かう途中、僕はどさくさに紛れて次の週末、彼女とデートする約束を取り付けた。
そんな事を信じていない僕達の初めてのデートは五台山だった。
大学に入学した時、僕には高校時代から付き合っていた地元の彼女がいて、遠距離恋愛をしていた。彼女の事は大好きだったんだけれども、なかなか会えないので寂しくて、浮気性の僕は周りにいる女の子達に気持ちがいっていた。
実際に浮気のようなこともしてしまった。
そんな僕の浮ついた心を許せなかったのか、ついに彼女から「好きな人ができた」と言われてしまった。
「しゅうくんの事も好きなんだよ」と言われたんだけれども、プライドの高い僕は彼女の事が許せなかった。そして、本当は納得いっていなかったんだけれども、僕は自ら彼女に別れを告げた。
それからの僕は大いに荒れた。飲めない酒を浴びるようにのみ、喧嘩をし、自らを傷つけた。
僕は何度か死にそうな目にあい、ボロボロになった。この寂しさと悲しさを引きずったまま生きていくことはできないと思った。忘れるために何かしようと思った。悩んだ末に僕はクラスで一番の可愛い子にアタックする事にした。
普段の僕はとてもじゃないが、そんな行動ができるタイプではない。どちらかと言うと様子を見て慎重に事を運ぶタイプなのである。脈があるかないか慎重に見極めて脈がありそうだったらようやくアタックするタイプなのだ。
しかし、この時は自暴自棄になっていて、ダメならダメで次に行けばいいやという気持ちになっていた。振られるの上等、振られた時には駄目な自分を再認識すればいい。周囲の目なんか気にしない。そんな自傷行為的な、特攻隊のようなアタックを決断した。
6月のある日、最終講義を終えたあと、僕はこのクラスで一番好みのみっちゃんに近づいた。みっちゃんは美人でスタイルもよく、笑顔が可愛いくてクラスでも一目置かれている存在だ。
「今日、一緒にご飯食べに行かない?」
「ええ?二人で?」
「うん」
僕は僕に似合わず、ズケズケと切り込んだ。君の事がタイプなんだもっと知りたいという好意を丸出しにして。
すると意外にも彼女は嬉しそうにOKをしてくれた。
僕は特にイケメンでも無く、見た目でもてるといった要素はほとんど無い。それでもこんな可愛い子と食事に行く事が可能なんだと有頂天になった。
世の中の美人は、近寄り難い雰囲気のためにその美貌ほどはチヤホヤされてないのかもしれない。そして、美人の自覚があるから褒められることに弱い。僕は勇気を持って素直に気持ちを伝えることはとても大事だとこの時悟った。
夕方に待ち合わせして、彼女を大学の近くの喫茶店に連れて行き、その店のお勧めメニューを食べた。彼女はチキンカレーを頼み、僕はドライカレーにした。僕達はお互いに少しずつシェアをして味わった。チキンカレーはよく煮込まれていてとてもジューシーな味わいで、ドライカレーはホクホクご飯の上にうま辛いルーの塊が乗っていた。
食後のコーヒーは無料だった。大学周辺のお店は良心的な店が多い。僕達はこの店のサービスにとても満足しながら雑談をした。この時、僕は頭をフルパワーで働かせて今まで見聞きした話を面白おかしくするように務めた。
それが功を奏したのか、みっちゃんはとてもリラックスしてよく笑ってくれた。
食事を終えて外に出ると、梅雨の夜空には今にも雨が降り出しそうな雲が漂っていた。僕は雨が降らないことを祈りながら、彼女を女子寮まで歩いて送って行った。
その道すがら、とうとう雨が降り始めた。
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