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落ちてくる
落ちてくる3 深夜と登校中
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直道はびしょびしょに濡れた体で頭にはシャンプーを泡立てさせながらパニクっていた。
いくら山に近いところに家があるからと言ってあれだけのゴキブリが排気口の中に潜んでいるなんて信じられない。
何とかゴキブリがバスルームから出てこないようにきっちりと扉を閉めた。
すりガラスの向こうでカサカサと黒い物体がうごめいているのが分かる。
母親がそれを見ると
「キャー」と悲鳴をあげた。
父親が帰ってきて食器用洗剤と熱湯を駆使して対処してくれたが、バスルームは無残な状態であった。一度害虫駆除の業者を呼んで消毒してもらうことになった。
直道は今日一日上から落ちてくるものに神経を使っていたので疲れ果てて早めに寝はじめた。
夜中に頭の辺りをモソモソとうごめく者がいる。
目が覚めた直道が反射的に払いのけると頭に激痛が走った。
次の瞬間には右腕にも激痛が走った。
何かに噛まれたみたいだ。
急いで立ち上がり電気を付けると布団の上には五、六匹のムカデがモソモソとうごめいていた。
みるみるうちに右腕が赤く腫れ上がった。
急いで部屋を出て鏡で顔を見ると、おでこも腫れ上がり、ムカデがはった跡が右目から頬にかけてみみず腫れのようになっていた。
寝ている父親を起こしてムカデを駆除してもらったが、まだいるかもしれないと思うと同じ布団の中で寝る気にはならなかった。
その後は一睡も出来ずに朝を迎え、登校した。
翌朝、
「どうしたのその顔」
と近藤歩が声をかけてきた。
「寝ていたらムカデが落ちてきて噛まれた。ほら右腕も」
赤く腫れ上がった中央には噛まれた牙の跡が二つ黒ずんでいる。
「痛そう。ムカデのはった跡って残るんだね」近藤は興味深そうに噛まれた跡を観察している。
「いきなり噛まれてめちゃくちゃ痛かったよ。昨日はやたらめったら上から何かが降ってくる一日だった」
「今日は大丈夫?」
「今のところ」と直道が答えた時、上から大きな物体が落ちてきた。
近藤歩は直道の隣を歩いていてその物体が直道の頭に直撃する瞬間を見てしまった。
その物体は長い髪の毛を風でばたつかせながら直道に一直線に落ちてきていた。
しかも、その髪の奥の方から一瞬見えた顔は近藤歩が二度と忘れられないような恐ろしい鬼の形相であった。
目の周りはどす黒いくまで覆われており、目ん玉は血管が赤く稲妻のように走っていた。鼻からは何かしらの粘っこい液体が顔に糸を引き、唇は真っ青で、唇の内側から覗いている歯はなんであろうとも噛み砕いてしまいそうな勢いで、その中には真っ赤な舌がユラユラとうごめいていた。
「ゴツッ」と大きな音がした瞬間、血が飛び散った。
辺り一面は血が飛び散り、裂けた動脈からは血が吹き出していた。
何よりも、その女の頭と親友の頭がぶつかった衝撃で割れて中身が見えていることが衝撃的だった。
脳を損傷した二人の体はまだビクビクとうごめいていた。時々、大きく動いている様はネジ仕掛けのおもちゃがガシャガシャと騒いでいるようであった。
近藤歩はどうしていいか分からず、携帯電話を取り出したが、焦って落としてしまった。
その落とした携帯が親友の脳にぴちゃりと落下した。
「プルップルプル」とタイミング悪く振動し始めた。
おしまい
いくら山に近いところに家があるからと言ってあれだけのゴキブリが排気口の中に潜んでいるなんて信じられない。
何とかゴキブリがバスルームから出てこないようにきっちりと扉を閉めた。
すりガラスの向こうでカサカサと黒い物体がうごめいているのが分かる。
母親がそれを見ると
「キャー」と悲鳴をあげた。
父親が帰ってきて食器用洗剤と熱湯を駆使して対処してくれたが、バスルームは無残な状態であった。一度害虫駆除の業者を呼んで消毒してもらうことになった。
直道は今日一日上から落ちてくるものに神経を使っていたので疲れ果てて早めに寝はじめた。
夜中に頭の辺りをモソモソとうごめく者がいる。
目が覚めた直道が反射的に払いのけると頭に激痛が走った。
次の瞬間には右腕にも激痛が走った。
何かに噛まれたみたいだ。
急いで立ち上がり電気を付けると布団の上には五、六匹のムカデがモソモソとうごめいていた。
みるみるうちに右腕が赤く腫れ上がった。
急いで部屋を出て鏡で顔を見ると、おでこも腫れ上がり、ムカデがはった跡が右目から頬にかけてみみず腫れのようになっていた。
寝ている父親を起こしてムカデを駆除してもらったが、まだいるかもしれないと思うと同じ布団の中で寝る気にはならなかった。
その後は一睡も出来ずに朝を迎え、登校した。
翌朝、
「どうしたのその顔」
と近藤歩が声をかけてきた。
「寝ていたらムカデが落ちてきて噛まれた。ほら右腕も」
赤く腫れ上がった中央には噛まれた牙の跡が二つ黒ずんでいる。
「痛そう。ムカデのはった跡って残るんだね」近藤は興味深そうに噛まれた跡を観察している。
「いきなり噛まれてめちゃくちゃ痛かったよ。昨日はやたらめったら上から何かが降ってくる一日だった」
「今日は大丈夫?」
「今のところ」と直道が答えた時、上から大きな物体が落ちてきた。
近藤歩は直道の隣を歩いていてその物体が直道の頭に直撃する瞬間を見てしまった。
その物体は長い髪の毛を風でばたつかせながら直道に一直線に落ちてきていた。
しかも、その髪の奥の方から一瞬見えた顔は近藤歩が二度と忘れられないような恐ろしい鬼の形相であった。
目の周りはどす黒いくまで覆われており、目ん玉は血管が赤く稲妻のように走っていた。鼻からは何かしらの粘っこい液体が顔に糸を引き、唇は真っ青で、唇の内側から覗いている歯はなんであろうとも噛み砕いてしまいそうな勢いで、その中には真っ赤な舌がユラユラとうごめいていた。
「ゴツッ」と大きな音がした瞬間、血が飛び散った。
辺り一面は血が飛び散り、裂けた動脈からは血が吹き出していた。
何よりも、その女の頭と親友の頭がぶつかった衝撃で割れて中身が見えていることが衝撃的だった。
脳を損傷した二人の体はまだビクビクとうごめいていた。時々、大きく動いている様はネジ仕掛けのおもちゃがガシャガシャと騒いでいるようであった。
近藤歩はどうしていいか分からず、携帯電話を取り出したが、焦って落としてしまった。
その落とした携帯が親友の脳にぴちゃりと落下した。
「プルップルプル」とタイミング悪く振動し始めた。
おしまい
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