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落ちる
落ちる1
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岩のかけらが落ちてくる。
冴子の鎖を握る手に力が入る。
初心者でも簡単に登山が楽しめると聞いてきた四国の剣山であるが、冴子が思っていたよりも険しい。
鎖を掴んで登らないといけない岩場があるなんて聞いていない。
登山経験者の健太郎と美香はスイスイと登っているが、運動不足の冴子にはとてもきつい。
だけれども冴子はやめる訳にはいかない。
それは健太郎に恋をしているからだ。
もし、ここで登山を諦めてしまうと、健太郎と美香を二人っ切りにしてしまう。それだけは何とかして避けなければならない。
そもそも冴子と健太郎は二人で登山に来る予定だった。
なのに、
なのに、
なのに、
二人で登山をする事を知った美香が急に参加することになった。
美香は健太郎と同じゼミで健太郎を追いかけ回しているらしい。
健太郎はそれを嫌がっている。
そして、健太郎は剣山の頂上まで登ることが出来たら、プレゼントをくれると約束してくれた。
だから、冴子はどうしてもこの剣山を登りきりたい。
冴子はここで登山を諦めたら健太郎を諦めてしまうような気がした。
「はぁ、はぁ、はぁ」
どうしても乗り越えられない岩場に突き当たった。
お尻が重くてどうしても持ち上がらない。
休憩を挟んで三度もトライしたが、どうしても超えられない。
「どうしたー。冴子」健太郎の声が聞こえる。心配して戻って来てくれたみたいだ。
岩の上から健太郎が顔を覗かせる。
「この岩がどうしても登れないの」
「後ろから押してあげようか?」
健太郎が押してくれれば登れるかもしれない。
だけれども、この大きなお尻を間近で見られるのは恥ずかしい。
「健太郎。早くー」上から美香の声が聞こえる。
「先に行っててもいいよ」
冴子は健太郎を少し試すつもりで言ってみた。
先に行ってしまうかドキドキした。
「押してやるよ」
健太郎は素早く下まで降りてきた。
「私のお尻に触りたいんでしょ」
「そんな事言うんなら押さない」
「下心なし?」
「下心なし」
「じゃあ押して」
冴子は下から健太郎に押してもらってようやく岩場をよじ登った。
地球の引力が憎らしいような嬉しいのような気がした。
岩を超えると風景が急に変わった。
視界が開けて別世界だった。
「ありがとう」
「よし、あと少しで頂上だ」
「うん」
少し先から美香が憎らしそうにこちらを見ている。
冴子の鎖を握る手に力が入る。
初心者でも簡単に登山が楽しめると聞いてきた四国の剣山であるが、冴子が思っていたよりも険しい。
鎖を掴んで登らないといけない岩場があるなんて聞いていない。
登山経験者の健太郎と美香はスイスイと登っているが、運動不足の冴子にはとてもきつい。
だけれども冴子はやめる訳にはいかない。
それは健太郎に恋をしているからだ。
もし、ここで登山を諦めてしまうと、健太郎と美香を二人っ切りにしてしまう。それだけは何とかして避けなければならない。
そもそも冴子と健太郎は二人で登山に来る予定だった。
なのに、
なのに、
なのに、
二人で登山をする事を知った美香が急に参加することになった。
美香は健太郎と同じゼミで健太郎を追いかけ回しているらしい。
健太郎はそれを嫌がっている。
そして、健太郎は剣山の頂上まで登ることが出来たら、プレゼントをくれると約束してくれた。
だから、冴子はどうしてもこの剣山を登りきりたい。
冴子はここで登山を諦めたら健太郎を諦めてしまうような気がした。
「はぁ、はぁ、はぁ」
どうしても乗り越えられない岩場に突き当たった。
お尻が重くてどうしても持ち上がらない。
休憩を挟んで三度もトライしたが、どうしても超えられない。
「どうしたー。冴子」健太郎の声が聞こえる。心配して戻って来てくれたみたいだ。
岩の上から健太郎が顔を覗かせる。
「この岩がどうしても登れないの」
「後ろから押してあげようか?」
健太郎が押してくれれば登れるかもしれない。
だけれども、この大きなお尻を間近で見られるのは恥ずかしい。
「健太郎。早くー」上から美香の声が聞こえる。
「先に行っててもいいよ」
冴子は健太郎を少し試すつもりで言ってみた。
先に行ってしまうかドキドキした。
「押してやるよ」
健太郎は素早く下まで降りてきた。
「私のお尻に触りたいんでしょ」
「そんな事言うんなら押さない」
「下心なし?」
「下心なし」
「じゃあ押して」
冴子は下から健太郎に押してもらってようやく岩場をよじ登った。
地球の引力が憎らしいような嬉しいのような気がした。
岩を超えると風景が急に変わった。
視界が開けて別世界だった。
「ありがとう」
「よし、あと少しで頂上だ」
「うん」
少し先から美香が憎らしそうにこちらを見ている。
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