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第一章 運命の人
陸上部には可愛いあけみちゃんとワタナベ君
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放課後になるとともみは早速陸上部の練習に参加した。
新入部員は全部で10人。
簡単な自己紹介をした。
同じクラスのあけみちゃんがいた。あけみちゃんは明るくて話しやすい。すぐに仲良くなれそうだった。それから、同じ中学出身のワタナベ君もいた。ワタナベ君は同じ長距離走をしているし、同じ高校になったし、何かと縁がある。まあ、顔見知りが同じ部活にいるというのは心強い。
簡単な準備体操と基礎練習が終わると、長距離の選手は先輩の後についてグランドを走った。グランドは野球部やサッカー部、ラグビー部と共同で使うため、空いたスペースを邪魔にならないように走らなければならない。時々飛んでくる野球のボールやサッカーボールに気をつけなければならない。
ともみは「ハッ、ハッ、ハッ」とリズミカルに呼吸をしながら、後ろに束ねたポニーテールを弾ませた。
受験勉強で体を動かしていなかったので、久しぶりに走るのはとても気持ちよかった。ただ、さすがに高校の先輩方は速かった。体がなまっているというのもあるが、ついていくのがやっとである。最後はバテバテになって遅れた。先輩方はみんな余裕で走っていた。悔しいが誰ひとりとして勝てそうにもなかった。
それでも負けず嫌いなともみはいつか勝ってやると心に誓った。
練習が終わると、女子の部室でジャージから制服に着替えた。ともみはあけみちゃんの体に見とれてしまった。
「あけみちゃん、スタイルいいねえ」とついつ言ってしまった。
「え、そんなことないよ。最近太ってきたし、しぼらないと」
「出るところは出て、しまるところはちゃんとひきしまってるじゃない」
「そんなにジロジロ見ないでよ」とあけみちゃんはスポーツブラとお腹を手でかくしながら、頬を赤らめた。本気で恥ずかしがっている。
「ごめん、ごめん」
ともみは自分が貧相な胸をしているからとても羨ましいのだが、彼女にしてみれば女としての体が目立つのは恥ずかしいのだろう。
しかし、あけみちゃんは可愛いし、スタイルもいいし、男どもはほってはおかない。絶対モテるだろうなあと思った。
着替えが終わるとあけみちゃんと自転車置き場に向かった。
そこにはワタナベ君がいた。
「ともちん、一緒に帰ろ」
「う、うん」
あけみちゃんは、なにか察したように動き出した。
「じゃ、私帰るね。バイバイ」
「うん、私たち帰る方向同じだから。同じだからだからね」なんだか早口言葉みたいになってしまったが、なにか誤解されてはまずいと必死になった。
「うん。バイバイ」
ともみは自転車のカゴに荷物を乗せて
「変な誤解されなきゃいいけど」と呟いた。
「そうだね」ワタナベ君はポーカーフェイスで応える。中学の頃から一緒だ。
ワタナベ君は練習熱心だし、真面目で勉強もできて誠実な人なんだけど、正直一緒にいても楽しいとは思はない。自分からは全然喋ってこないので、気を使ってしゃべりかけるのはいつもともみの方である。
「練習どうだった?」
「きつかった」
「先輩達速かったね」
「うん」
「野球のボール怖いね」
「そうだね」
おいおい。話をふくらませる気持ちはないのかな。全く。なんだかつまんない。と、ともみは心の中でつぶやく。口は少しとんがっている。
ワタナベ君はともみの自転車のすぐ後をポーカーフェイスでついてくる。坂を下って登って下ったところでバイバイした。
ともみは家までの最後の坂道を登っていてふと思い出した。
そういえば隣の席のボサボサ頭君が女の子に「しゅん」と呼ばれていた。ワンチャン彼が元幼馴染くんかもしれないのだ。だからと言って別段どうということは無いのだが、少しは昔話が出来るかもしれない。坂道に向かってともみは力強くペダルを踏み込んだ。
新入部員は全部で10人。
簡単な自己紹介をした。
同じクラスのあけみちゃんがいた。あけみちゃんは明るくて話しやすい。すぐに仲良くなれそうだった。それから、同じ中学出身のワタナベ君もいた。ワタナベ君は同じ長距離走をしているし、同じ高校になったし、何かと縁がある。まあ、顔見知りが同じ部活にいるというのは心強い。
簡単な準備体操と基礎練習が終わると、長距離の選手は先輩の後についてグランドを走った。グランドは野球部やサッカー部、ラグビー部と共同で使うため、空いたスペースを邪魔にならないように走らなければならない。時々飛んでくる野球のボールやサッカーボールに気をつけなければならない。
ともみは「ハッ、ハッ、ハッ」とリズミカルに呼吸をしながら、後ろに束ねたポニーテールを弾ませた。
受験勉強で体を動かしていなかったので、久しぶりに走るのはとても気持ちよかった。ただ、さすがに高校の先輩方は速かった。体がなまっているというのもあるが、ついていくのがやっとである。最後はバテバテになって遅れた。先輩方はみんな余裕で走っていた。悔しいが誰ひとりとして勝てそうにもなかった。
それでも負けず嫌いなともみはいつか勝ってやると心に誓った。
練習が終わると、女子の部室でジャージから制服に着替えた。ともみはあけみちゃんの体に見とれてしまった。
「あけみちゃん、スタイルいいねえ」とついつ言ってしまった。
「え、そんなことないよ。最近太ってきたし、しぼらないと」
「出るところは出て、しまるところはちゃんとひきしまってるじゃない」
「そんなにジロジロ見ないでよ」とあけみちゃんはスポーツブラとお腹を手でかくしながら、頬を赤らめた。本気で恥ずかしがっている。
「ごめん、ごめん」
ともみは自分が貧相な胸をしているからとても羨ましいのだが、彼女にしてみれば女としての体が目立つのは恥ずかしいのだろう。
しかし、あけみちゃんは可愛いし、スタイルもいいし、男どもはほってはおかない。絶対モテるだろうなあと思った。
着替えが終わるとあけみちゃんと自転車置き場に向かった。
そこにはワタナベ君がいた。
「ともちん、一緒に帰ろ」
「う、うん」
あけみちゃんは、なにか察したように動き出した。
「じゃ、私帰るね。バイバイ」
「うん、私たち帰る方向同じだから。同じだからだからね」なんだか早口言葉みたいになってしまったが、なにか誤解されてはまずいと必死になった。
「うん。バイバイ」
ともみは自転車のカゴに荷物を乗せて
「変な誤解されなきゃいいけど」と呟いた。
「そうだね」ワタナベ君はポーカーフェイスで応える。中学の頃から一緒だ。
ワタナベ君は練習熱心だし、真面目で勉強もできて誠実な人なんだけど、正直一緒にいても楽しいとは思はない。自分からは全然喋ってこないので、気を使ってしゃべりかけるのはいつもともみの方である。
「練習どうだった?」
「きつかった」
「先輩達速かったね」
「うん」
「野球のボール怖いね」
「そうだね」
おいおい。話をふくらませる気持ちはないのかな。全く。なんだかつまんない。と、ともみは心の中でつぶやく。口は少しとんがっている。
ワタナベ君はともみの自転車のすぐ後をポーカーフェイスでついてくる。坂を下って登って下ったところでバイバイした。
ともみは家までの最後の坂道を登っていてふと思い出した。
そういえば隣の席のボサボサ頭君が女の子に「しゅん」と呼ばれていた。ワンチャン彼が元幼馴染くんかもしれないのだ。だからと言って別段どうということは無いのだが、少しは昔話が出来るかもしれない。坂道に向かってともみは力強くペダルを踏み込んだ。
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