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ディナーで口論

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その日のディナーでは、さっそくリディア嬢が昼間の事をジャルジャンへ告げ口した。

「ジャルジャン様、エドワルド王子ったら私達を狩場に置いてけぼりにして、アスカ嬢の元へ駆けつけたのですよ。どう思われます?」

「あはははは。エドワルド王子はアスカ嬢に大分心を奪われているようだわね。だけど、アスカ嬢はエドワルド王子には興味がないわ。だってこのジャルジャンの魅力に首ったけなんですもの」

「それもそうね。アスカ嬢はジャルジャン様の寝室に毎晩通っていますものね」

 王子はそのことについては忌々しく感じていたが、戦争で金儲けを行っているジャルジャンの事をアスカが好いているはずがない事が分かってから、多少は心の平静が保てた。100日間さえ我慢すれば、アスカの心は自由になれる。そうすればジャルジャンの元から離れられるのだ。

「リディア嬢、アスカ殿は好き好んでジャルジャンの元へ通っている訳ではないのですよ」

「そうかしら、それにしては熱心に通っておられるようで」

「それはジャルジャンの命令の元、仕方なく行っているのです。ですよね。アスカ殿」

「そ、それはそうです」

「命令されているけれども、どうせ喜んで行っているのでしょう。もはやジャルジャン様の事が忘れられない体になっているのじゃないかしら。はしたない。あはははは」

「私はそんなふしだらな女ではありません」

「さあどうかしら。エドワルド王子もこのような淫乱な女の事は忘れて、私と付き合ってみたらどうですか? 王子のためにすべてを捧げますよ」

そう言って、リディア嬢は豊満な胸を強調するように突き出した。

「有難いが、今はアスカ殿の事しか見ていません」

「きー」と言いながらリディア嬢はハンカチを噛んで悔しがった。アスカは嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ちだった。

王子はブロンドの髪を振りながら、ジャルジャンの方を向いた。

「ジャルジャン殿、そろそろ人の心をもてあそぶのはおやめになった方がよろしいかと思います。アスカ殿に好かれていないのはお分かりになっているでしょう。無理やり束縛して体を奪っても心は得られません」

「王子、私はアスカ嬢のために120万ゴールドも出したのですよ。100日間は毎晩お相手して貰っても悪くは無いでしょう。」

「しかし、ジャルジャン殿、その120万ゴールドですが、まともな方法で得た金ではありませんよね」

「武器売買の事かしら。あれは彼らが欲しているから売ってあげているだけだわ」

「それだけではなくて、麻薬も売りさばいているでしょう」

「そうね。誰に聞いたか知らないけれど、商売は需要と供給があって成り立つのよ。特に問題ないでしょ」

アスカが耐えかねて口を挟んだ。

「ジャルジャン様。武器と麻薬はやめてください。大勢の人が不幸になります。儲かればあとは知らないでは済まされません」

「あなたがジャルジャン様に意見するなんて100年早いわよ」
リディア嬢が素早く口を挟む。

「いいわよ。アスカ嬢がそこまで言うなら武器と麻薬の売買はやめるわ。ちょうど潮時だと思ってたのよ」

ジャルジャンがあまりにもあっさり承諾したので、王子とアスカは驚いて顔を見合わせた。

「本当ですか」

「本当よ。だけど、今晩からはたっぷりとサービスしてくれないと怒るから」
そう言ってジャルジャンは席を立ち去った。

王子はアスカがジャルジャンにサービスする姿を想像して悔しがった。

午後10時、アスカは恐る恐るジャルジャンの寝室に向かった。

今はまだジャルジャンの屋敷に来てから30日目である。
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