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ジャン=ジャック・ルソー
ママンの新しい恋人
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ルソーがママンの家に急いで戻ると、いつものような歓迎を受けなかった。
それどころか、ルソーが帰って来ることを女中が知らなくて驚いた。こんな事は今までになかった事だった。
ルソーはショックを受けた。
ママンを見つけてその足元に駆け寄った。
「おら、おかえり坊や!」と言ってママンはルソーに接吻をした。
「旅行はどうだった? 体の調子は?」
「ママン、僕の手紙を受け取らなかったの?」
「受け取ったわよ」
「受け取っていないみたいだ」
「そんな事ないわよ」
ルソーは以前のように歓迎されていない事を悟った。
そして、それが何故なのかすぐにわかった。
この家には、一人の青年が住み着いていた。
女たらしの平凡な男で、体格はいいが、面白みもなんにもない金髪野郎だった。
二枚目のようなキザな口のきき方をして、歯の抜けた婆さん女中にまで手を出す始末で、ママンはそのことをたいへん嫌がったが、その女中を首にする訳にもいかなかった。
ママンはその青年と上手くいかない時はルソーに愚痴を言ったが、上手くいっている時にはルソーは全く相手にされなかった。
その青年の前では、ルソーはいないのも同然だった。
つまり、ルソーの立場は青年に完全に横取りされてしまったのだ。
ルソーはそれでも何とかママンの幸福を願って、自分の快楽やよろこびを犠牲にすることを誓った。
ママンのために青年を立派な男に仕立てあげようと教育を試みたが、無駄だった。
ルソーはママンを抱かないと決めて、その通りにした。その事は余計にルソーとママンとの距離を大きくしていった。
青年はママンのことをこれっぽっちも考えることなく、財産を浪費していった。
ママンの家は財産がつき果てて、もはや年金も止められるのは目に見えている状況となった。それでもママンはルソーの言葉に耳を傾けない。
ママンはルソーに対して冷たい態度をとるようになった。
もっとも愛するママンと心が全く通わない状況をルソーが耐えられる訳もなく、家を出ていくことにした。
リヨンに家庭教師の口があり、住み込みで兄弟二人を教えることになった。しかし、その子供たちは飲み込みが悪く、ルソーは苛立った。
飲み込みが悪いと怒鳴り散らし、イタズラをされると殺すのではないかというほどのけんまくで怒った。
これでは、良い教育もできるはずがなかった。
さらに、ママンの家では潜めていた盗み癖が再発した。ママンの家ではなんでも自由に使って良かったので何も盗む必要がなかったのだ。
しかし、家庭教師の家で酒蔵の管理を任されたルソーはワインを盗んで飲むようになってしまった。
それがばれて居ずらくなってしまったルソーは色々な事に失望して放浪の旅に出ることになった。
それどころか、ルソーが帰って来ることを女中が知らなくて驚いた。こんな事は今までになかった事だった。
ルソーはショックを受けた。
ママンを見つけてその足元に駆け寄った。
「おら、おかえり坊や!」と言ってママンはルソーに接吻をした。
「旅行はどうだった? 体の調子は?」
「ママン、僕の手紙を受け取らなかったの?」
「受け取ったわよ」
「受け取っていないみたいだ」
「そんな事ないわよ」
ルソーは以前のように歓迎されていない事を悟った。
そして、それが何故なのかすぐにわかった。
この家には、一人の青年が住み着いていた。
女たらしの平凡な男で、体格はいいが、面白みもなんにもない金髪野郎だった。
二枚目のようなキザな口のきき方をして、歯の抜けた婆さん女中にまで手を出す始末で、ママンはそのことをたいへん嫌がったが、その女中を首にする訳にもいかなかった。
ママンはその青年と上手くいかない時はルソーに愚痴を言ったが、上手くいっている時にはルソーは全く相手にされなかった。
その青年の前では、ルソーはいないのも同然だった。
つまり、ルソーの立場は青年に完全に横取りされてしまったのだ。
ルソーはそれでも何とかママンの幸福を願って、自分の快楽やよろこびを犠牲にすることを誓った。
ママンのために青年を立派な男に仕立てあげようと教育を試みたが、無駄だった。
ルソーはママンを抱かないと決めて、その通りにした。その事は余計にルソーとママンとの距離を大きくしていった。
青年はママンのことをこれっぽっちも考えることなく、財産を浪費していった。
ママンの家は財産がつき果てて、もはや年金も止められるのは目に見えている状況となった。それでもママンはルソーの言葉に耳を傾けない。
ママンはルソーに対して冷たい態度をとるようになった。
もっとも愛するママンと心が全く通わない状況をルソーが耐えられる訳もなく、家を出ていくことにした。
リヨンに家庭教師の口があり、住み込みで兄弟二人を教えることになった。しかし、その子供たちは飲み込みが悪く、ルソーは苛立った。
飲み込みが悪いと怒鳴り散らし、イタズラをされると殺すのではないかというほどのけんまくで怒った。
これでは、良い教育もできるはずがなかった。
さらに、ママンの家では潜めていた盗み癖が再発した。ママンの家ではなんでも自由に使って良かったので何も盗む必要がなかったのだ。
しかし、家庭教師の家で酒蔵の管理を任されたルソーはワインを盗んで飲むようになってしまった。
それがばれて居ずらくなってしまったルソーは色々な事に失望して放浪の旅に出ることになった。
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