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ジャン=ジャック・ルソー
農村での出来事
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ヴァランス婦人の消息が分からないルソーはアヌシーで婦人からの連絡を待つしか無かった。
その間、ルソーは割と可愛らしい顔をしていたので、若い娘からモテるようになっていた。
馬に乗った2人組のお嬢さんから誘惑を受けたり、音楽教室のお嬢さんから誘惑を受けた。
しかし、性的に疎いルソーは男女の関係を持つことも無く過ごしていた。
ちなみに、ルソーは男女関係なく、才能ある人を好きになるようで、ヴァンチュールと言うおしゃべり上手な歌声の良い青年を気に入った。
ルソーという人間は人に愛着を持ちやすい人間なんだと思う。
そして、誰かを陥れるとか、誰かの利益を奪い取るとかそう言った気持ちがないため、愛嬌があって気に入られることも多いのだろう。ただ、相手が自分を利用しようとしたり、無理やり何かをやらせようとしたり、不当な扱いをする事には反抗した。
この時のルソーはとにかくヴァランス婦人を母親のように慕っていたし、結ばれたいとも思っていた。なので、他の女性とは深い中にはならずにいた。何よりも心の中にあるのはヴァランス婦人だった。
待ってもヴァランス婦人からの便りがないので、ルソーは婦人の消息を追ってフランスへ旅に出る。
この頃のルソーは本当に貧乏で、放浪者だった。田舎の農村地帯を放浪しながら、様々なことを夢想して空腹に耐えた。
道がわからなくなって、農家に入った。
農村の人に声をかければ、ジュネーヴの時と同じように食うに困らない者は、放浪者に食べ物を恵んでくれるものと思っていた。
「すみません。なにか貰えませんか。喉がカラカラで、腹が減って動けません」
農民は怪訝そうにルソーを一瞥した。
「君は何者だい。どこから来たんだ」
「アヌシーから来ました。人を探してパリに向かっているのですが、迷子になってしまいまして」
「悪いがこれしかないんだ」
農民は薄い牛乳と粗末な大麦のパンを差し出した。
ルソーは久しぶりの食べ物に人目も気にせずがっついた。美味しそうに薄い牛乳を飲みほし、パンに付いたワラクズまで食べ尽くした。
それを見た農民は部屋に戻って、ハムと上等な小麦のパンとワインを持ってきてくれた。久々のご馳走にルソーの胃はびっくりしている。
「どうやら君は役人ではないようだ」
「はい。ただの旅人です」
「いや、フランスでは税金がきつくてな、贅沢品を持っていることが役人にバレると税として持っていかれてしまう」
「ぜ、贅沢品? 食べ物がですか?」
「ああ。役人は食べ物を持っていると容赦なく税として持っていくから、隠しているんだ」
「あなた方が一生懸命働いて作った農作物ではないですか。なぜ、役人に持っていかれるんですか」
「あいつら酒蔵ネズミ共は自分たちの身分を守るために容赦ねえんだ。餓死するとまではいかねえが、干からびる手前だよ」
「そ、そんな。真面目に働いているあなた方が食うに困るだなんて」
「まあ、仕方ねえよ。役人に逆らうのは王様に逆らうことになる」
「そ、そんな。王なら何をやっても構わないなんて許せない」
「若いの。滅多なことを言うもんじゃないよ。役人に知られたらとんでもない事になるぞ」
くそ!
真面目に生きている人達が損をしているなんて許せない。
ふつふつと怒りが込み上げてきた。
この出来事を経験して、ルソーは世界を見る目が変わった。
今まで、その現実を知らなかった事が恥ずかしかった。
その間、ルソーは割と可愛らしい顔をしていたので、若い娘からモテるようになっていた。
馬に乗った2人組のお嬢さんから誘惑を受けたり、音楽教室のお嬢さんから誘惑を受けた。
しかし、性的に疎いルソーは男女の関係を持つことも無く過ごしていた。
ちなみに、ルソーは男女関係なく、才能ある人を好きになるようで、ヴァンチュールと言うおしゃべり上手な歌声の良い青年を気に入った。
ルソーという人間は人に愛着を持ちやすい人間なんだと思う。
そして、誰かを陥れるとか、誰かの利益を奪い取るとかそう言った気持ちがないため、愛嬌があって気に入られることも多いのだろう。ただ、相手が自分を利用しようとしたり、無理やり何かをやらせようとしたり、不当な扱いをする事には反抗した。
この時のルソーはとにかくヴァランス婦人を母親のように慕っていたし、結ばれたいとも思っていた。なので、他の女性とは深い中にはならずにいた。何よりも心の中にあるのはヴァランス婦人だった。
待ってもヴァランス婦人からの便りがないので、ルソーは婦人の消息を追ってフランスへ旅に出る。
この頃のルソーは本当に貧乏で、放浪者だった。田舎の農村地帯を放浪しながら、様々なことを夢想して空腹に耐えた。
道がわからなくなって、農家に入った。
農村の人に声をかければ、ジュネーヴの時と同じように食うに困らない者は、放浪者に食べ物を恵んでくれるものと思っていた。
「すみません。なにか貰えませんか。喉がカラカラで、腹が減って動けません」
農民は怪訝そうにルソーを一瞥した。
「君は何者だい。どこから来たんだ」
「アヌシーから来ました。人を探してパリに向かっているのですが、迷子になってしまいまして」
「悪いがこれしかないんだ」
農民は薄い牛乳と粗末な大麦のパンを差し出した。
ルソーは久しぶりの食べ物に人目も気にせずがっついた。美味しそうに薄い牛乳を飲みほし、パンに付いたワラクズまで食べ尽くした。
それを見た農民は部屋に戻って、ハムと上等な小麦のパンとワインを持ってきてくれた。久々のご馳走にルソーの胃はびっくりしている。
「どうやら君は役人ではないようだ」
「はい。ただの旅人です」
「いや、フランスでは税金がきつくてな、贅沢品を持っていることが役人にバレると税として持っていかれてしまう」
「ぜ、贅沢品? 食べ物がですか?」
「ああ。役人は食べ物を持っていると容赦なく税として持っていくから、隠しているんだ」
「あなた方が一生懸命働いて作った農作物ではないですか。なぜ、役人に持っていかれるんですか」
「あいつら酒蔵ネズミ共は自分たちの身分を守るために容赦ねえんだ。餓死するとまではいかねえが、干からびる手前だよ」
「そ、そんな。真面目に働いているあなた方が食うに困るだなんて」
「まあ、仕方ねえよ。役人に逆らうのは王様に逆らうことになる」
「そ、そんな。王なら何をやっても構わないなんて許せない」
「若いの。滅多なことを言うもんじゃないよ。役人に知られたらとんでもない事になるぞ」
くそ!
真面目に生きている人達が損をしているなんて許せない。
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