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第3章 ファーストライブ!
ファーストライブは突然に
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放課後、四人が一緒に部室へ向かう。
「ついに正式部員での活動初日だね!」
「うん。今までも仮入部って気持ちはなかったから多分昨日までと変わらない気もするけど」
佑香と美空がそんな会話を交わす。
「早く三人のための曲を作りたいわー」
「亜紀はそのために入ったんだもんね」
亜紀の言葉に玲が返す。一週間経って、玲はこのメンバーの中では緊張せずに話せるようになっていた。
「失礼しますっ」
「あ、みんなこんにちわ」
部室にはすでに紗夜香が居た。
「ねえみんな、ちょっと話があるから座って聞いてもらえるかしら? あ、飲み物は今入れるからね」
そう言って席を立ち、ポットの方へ向かう紗夜香。四人はとりあえず部室の真ん中にある机に座る。
「はい、今日はプーアル茶。といってもいつものようにティーパックだけどね」
「あ、私プーアル茶大好きです」
「あら良かった。プーアル茶のティーパックたくさんあるからどんどん使ってね」
美空と談笑する紗夜香に対し、佑香が声を掛ける。
「さやか先輩、お話って何ですか?」
「正式部員になったやから、『アイドル同好会・鉄の掟』を叩き込まれるとか」
「ふふ、そんなのないわよ」
亜紀の冗談を笑って否定し、自分も席に座る紗夜香。あらためて四人を見渡し、口を開く。
「あのね、実はアイドル同好会にライブ出演のオファーが来たの」
その言葉にきょとんとする四人。
「おふぁー?」
すごく間の抜けた声でオウム返しをする佑香。玲が口を開く。
「ライブ出演って、どこかのライブ……?」
「ええ、H大学の学祭で、声優のトークショーの前座として地元のアイドルのライブを何組か行うらしいわ。そのうちの一組としてうちに声が掛かったの」
「声優トークショー! 誰ですか!?」
「そこまではまだ聞いてないけど」
声優という言葉に目を輝かせる佑香に紗夜香が苦笑しながら返す。その時、美空が紗夜香に質問をする。
「でも、どうして私達なんですか? まだ何も活動してないから、知名度どころか存在自体知られていないんじゃ」
美空の疑問はもっともだった。佑香もそういえば、という顔をする。その疑問に紗夜香が答える。
「実はね、そのライブステージの企画をしているのが、うちのOGの美樹先輩、キャンストの赤色の人なの」
そう言われて四人はPC横に立て掛けてある写真に視線を向ける。いつもダンスの手本として見ていた赤色の人こと美樹先輩は、美空とはまた違った感じのボーイッシュで快活そうな人に見えた。
「なるほど、それで私達に声が掛かったんですね」
「わぁ、初ライブかぁ、楽しみだなぁ」
「ただね、ひとつ問題があるの」
佑香が浮かれていたところに、紗夜香が話し始める。
「今回の一グループの持ち時間は十五分。間にMC、あ、自己紹介とかのトークのことね。MCを入れても二曲はやらないといけないの」
「二曲……」
「ええ。キャンストは今練習しているから良いとして、本番が六月上旬だからあと一ヶ月ちょっとでもう一曲マスターしないといけないわ。けっこうきついスケジュールになるけど、みんなやる気はある?」
そう紗夜香に聞かれる三人。一瞬の沈黙の後、真っ先に口を開いたのは佑香だった。
「せっかくのチャンスだし、私はライブやってみたいですっ!」
「私も目標があった方が練習に身が入るのでやりたいです」
美空も続く。玲が、その後少し間を空けてから決意を込めた表情で話す。
「アタシも、頑張ってみんなの足を引っ張らないようにします……!」
三人の言葉を聞いた紗夜香が、三人を見つめて話す。
「わかったわ。それでは依頼を受けるということで先輩に返事をするわね」
「あ、さやさや先輩!」
その時、亜紀が紗夜香に話し掛ける。
「何、亜紀ちゃん?」
「二曲のうち一曲がキャンストということは、まだもう一曲は決まってへんのですよね?」
「ええ。先輩達の曲をもう一曲やるか、プロのアイドルのコピーをやるかになると思うけど」
「もう一曲の方をウチが作ってもいいですか? 三人だけデビューしてウチは何もやらないのは寂しいし悔しいです。ウチも一緒にデビューしたいです!」
その亜紀の提案に少し驚く紗夜香。すぐに冷静になって聞く。
「曲ができた後に振り付けを作ってみんなが練習することを考えると、長くてもこれから二週間以内に完成させなくては厳しいわよ。大丈夫?」
「大丈夫です。一週間もあれば一曲作れます」
きっぱりと答える亜紀。亜紀に援軍というつもりではなかったが、佑香も話に加わる。
「わたしも先輩たちの曲だけじゃなくて、自分たちの曲でデビューしたいですっ」
その言葉に全員を見回す紗夜香。美空や玲もやる気に満ちた顔をしているのを見て、決心をする。
「わかったわ。ただし再来週の月曜日で目処が立たなかったらはっきり無理と言って。先輩達の曲に切り替えるから。ライブまでに二曲マスターは絶対条件だから」
「わかりやした!」
亜紀が元気よく返事をする。
「よかったね、あきちゃん!」
「三人のために最高の曲作ったるさかい、楽しみにしててな」
「ではキャンストと新曲の二曲で参加ということで先輩に返信するわね」
「はい!」
★
その後、通常の練習に戻り、佑香、美空、玲の三人は川沿いをランニングしていた。
「初ライブ決まったね! 練習にも気合いが入るねっ」
「うん、試合とは違うかもしれないけど、やっぱり目標があると練習にも身が入るね」
「アタシは、なんとか二人の足を引っ張らないようにするから」
「ううん、歌はれいちゃんが一番上手だもん、自信をもって!」
「うん……」
ランニングを終えた後、河川敷でのダンス練習を行う三人。亜紀はいつものように紗夜香と一緒に三人の練習を見ていた。
「亜紀ちゃんいいの? 作曲しないで練習を見ていて」
「いいんや。作曲ちゅうのはインスピレーションや。三人の姿を見ながら、作曲のイメージを作るんや」
美空の問いかけに答える亜紀。その瞳は燃えていた。
「ついにきた生アイドルへの作曲。ウチはやるでえ!」
「ついに正式部員での活動初日だね!」
「うん。今までも仮入部って気持ちはなかったから多分昨日までと変わらない気もするけど」
佑香と美空がそんな会話を交わす。
「早く三人のための曲を作りたいわー」
「亜紀はそのために入ったんだもんね」
亜紀の言葉に玲が返す。一週間経って、玲はこのメンバーの中では緊張せずに話せるようになっていた。
「失礼しますっ」
「あ、みんなこんにちわ」
部室にはすでに紗夜香が居た。
「ねえみんな、ちょっと話があるから座って聞いてもらえるかしら? あ、飲み物は今入れるからね」
そう言って席を立ち、ポットの方へ向かう紗夜香。四人はとりあえず部室の真ん中にある机に座る。
「はい、今日はプーアル茶。といってもいつものようにティーパックだけどね」
「あ、私プーアル茶大好きです」
「あら良かった。プーアル茶のティーパックたくさんあるからどんどん使ってね」
美空と談笑する紗夜香に対し、佑香が声を掛ける。
「さやか先輩、お話って何ですか?」
「正式部員になったやから、『アイドル同好会・鉄の掟』を叩き込まれるとか」
「ふふ、そんなのないわよ」
亜紀の冗談を笑って否定し、自分も席に座る紗夜香。あらためて四人を見渡し、口を開く。
「あのね、実はアイドル同好会にライブ出演のオファーが来たの」
その言葉にきょとんとする四人。
「おふぁー?」
すごく間の抜けた声でオウム返しをする佑香。玲が口を開く。
「ライブ出演って、どこかのライブ……?」
「ええ、H大学の学祭で、声優のトークショーの前座として地元のアイドルのライブを何組か行うらしいわ。そのうちの一組としてうちに声が掛かったの」
「声優トークショー! 誰ですか!?」
「そこまではまだ聞いてないけど」
声優という言葉に目を輝かせる佑香に紗夜香が苦笑しながら返す。その時、美空が紗夜香に質問をする。
「でも、どうして私達なんですか? まだ何も活動してないから、知名度どころか存在自体知られていないんじゃ」
美空の疑問はもっともだった。佑香もそういえば、という顔をする。その疑問に紗夜香が答える。
「実はね、そのライブステージの企画をしているのが、うちのOGの美樹先輩、キャンストの赤色の人なの」
そう言われて四人はPC横に立て掛けてある写真に視線を向ける。いつもダンスの手本として見ていた赤色の人こと美樹先輩は、美空とはまた違った感じのボーイッシュで快活そうな人に見えた。
「なるほど、それで私達に声が掛かったんですね」
「わぁ、初ライブかぁ、楽しみだなぁ」
「ただね、ひとつ問題があるの」
佑香が浮かれていたところに、紗夜香が話し始める。
「今回の一グループの持ち時間は十五分。間にMC、あ、自己紹介とかのトークのことね。MCを入れても二曲はやらないといけないの」
「二曲……」
「ええ。キャンストは今練習しているから良いとして、本番が六月上旬だからあと一ヶ月ちょっとでもう一曲マスターしないといけないわ。けっこうきついスケジュールになるけど、みんなやる気はある?」
そう紗夜香に聞かれる三人。一瞬の沈黙の後、真っ先に口を開いたのは佑香だった。
「せっかくのチャンスだし、私はライブやってみたいですっ!」
「私も目標があった方が練習に身が入るのでやりたいです」
美空も続く。玲が、その後少し間を空けてから決意を込めた表情で話す。
「アタシも、頑張ってみんなの足を引っ張らないようにします……!」
三人の言葉を聞いた紗夜香が、三人を見つめて話す。
「わかったわ。それでは依頼を受けるということで先輩に返事をするわね」
「あ、さやさや先輩!」
その時、亜紀が紗夜香に話し掛ける。
「何、亜紀ちゃん?」
「二曲のうち一曲がキャンストということは、まだもう一曲は決まってへんのですよね?」
「ええ。先輩達の曲をもう一曲やるか、プロのアイドルのコピーをやるかになると思うけど」
「もう一曲の方をウチが作ってもいいですか? 三人だけデビューしてウチは何もやらないのは寂しいし悔しいです。ウチも一緒にデビューしたいです!」
その亜紀の提案に少し驚く紗夜香。すぐに冷静になって聞く。
「曲ができた後に振り付けを作ってみんなが練習することを考えると、長くてもこれから二週間以内に完成させなくては厳しいわよ。大丈夫?」
「大丈夫です。一週間もあれば一曲作れます」
きっぱりと答える亜紀。亜紀に援軍というつもりではなかったが、佑香も話に加わる。
「わたしも先輩たちの曲だけじゃなくて、自分たちの曲でデビューしたいですっ」
その言葉に全員を見回す紗夜香。美空や玲もやる気に満ちた顔をしているのを見て、決心をする。
「わかったわ。ただし再来週の月曜日で目処が立たなかったらはっきり無理と言って。先輩達の曲に切り替えるから。ライブまでに二曲マスターは絶対条件だから」
「わかりやした!」
亜紀が元気よく返事をする。
「よかったね、あきちゃん!」
「三人のために最高の曲作ったるさかい、楽しみにしててな」
「ではキャンストと新曲の二曲で参加ということで先輩に返信するわね」
「はい!」
★
その後、通常の練習に戻り、佑香、美空、玲の三人は川沿いをランニングしていた。
「初ライブ決まったね! 練習にも気合いが入るねっ」
「うん、試合とは違うかもしれないけど、やっぱり目標があると練習にも身が入るね」
「アタシは、なんとか二人の足を引っ張らないようにするから」
「ううん、歌はれいちゃんが一番上手だもん、自信をもって!」
「うん……」
ランニングを終えた後、河川敷でのダンス練習を行う三人。亜紀はいつものように紗夜香と一緒に三人の練習を見ていた。
「亜紀ちゃんいいの? 作曲しないで練習を見ていて」
「いいんや。作曲ちゅうのはインスピレーションや。三人の姿を見ながら、作曲のイメージを作るんや」
美空の問いかけに答える亜紀。その瞳は燃えていた。
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