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5章
2話
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永瀬が二人の様子をたっぷり楽しんだ頃授乳は終わり、最近ではベビーシッターも兼任してもらっている家政婦の佳代がやってきた。
永瀬が幼いころは実家に勤めていたという佳代は和也の誕生をそれはそれは喜んでくれた。
「いってきます。和也を頼みますね、佳代さん」
そんな佳代に抱かれて玄関に見送りに来た和也の柔らかな頬にキスを落として二人は仕事に向かった。
ユキは永瀬の車の助手席に滑り込んだ。最近では随分と乗るのに慣れた左ハンドルのその車は、後部座席にチャイルドシートが設置されていた。
「ユキは今日は帰りは何時だ?」
「今日は外来だけなので、終わったあと雑用して3時くらいには帰ります。夕飯リクエストありますか?」
「そうだな……鍋がいいな。俺も今夜は早く帰ろう」
「先生、昨日も早かったですよ?脳外はそんなに暇じゃないでしょう」
「来週はオペの予定が詰まってるからな。今週は出来るだけ早く君がいる家に帰りたい」
クールな眼鏡の向こうにある瞳を優しく細めてそんなことを言われると、ユキの心臓はとくとく脈を速める。
どんなに完璧な美貌でもいい加減慣れても良さそうなほど一緒にいるのに慣れないな、と熱くなった頬を隠すために下を向くと
「ユキ………」
少し掠れた色っぽい永瀬の声が思ったより近くから聞こえて、ユキがびくりと背を波立たせると、
唇に柔らかいものがそっと触れた。柔らかさを確かめるようにふにふにと何度か押し付けられて、名残惜しそうにちゅ、と啄んでから唇は名残惜しそうに離れた。そして漸く車はゆっくりとガレージから出て行った。
永瀬が幼いころは実家に勤めていたという佳代は和也の誕生をそれはそれは喜んでくれた。
「いってきます。和也を頼みますね、佳代さん」
そんな佳代に抱かれて玄関に見送りに来た和也の柔らかな頬にキスを落として二人は仕事に向かった。
ユキは永瀬の車の助手席に滑り込んだ。最近では随分と乗るのに慣れた左ハンドルのその車は、後部座席にチャイルドシートが設置されていた。
「ユキは今日は帰りは何時だ?」
「今日は外来だけなので、終わったあと雑用して3時くらいには帰ります。夕飯リクエストありますか?」
「そうだな……鍋がいいな。俺も今夜は早く帰ろう」
「先生、昨日も早かったですよ?脳外はそんなに暇じゃないでしょう」
「来週はオペの予定が詰まってるからな。今週は出来るだけ早く君がいる家に帰りたい」
クールな眼鏡の向こうにある瞳を優しく細めてそんなことを言われると、ユキの心臓はとくとく脈を速める。
どんなに完璧な美貌でもいい加減慣れても良さそうなほど一緒にいるのに慣れないな、と熱くなった頬を隠すために下を向くと
「ユキ………」
少し掠れた色っぽい永瀬の声が思ったより近くから聞こえて、ユキがびくりと背を波立たせると、
唇に柔らかいものがそっと触れた。柔らかさを確かめるようにふにふにと何度か押し付けられて、名残惜しそうにちゅ、と啄んでから唇は名残惜しそうに離れた。そして漸く車はゆっくりとガレージから出て行った。
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