とろけてまざる

ゆなな

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5章

1話

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 そして、季節は巡って……

 永瀬家に新しい命がやってきた────

 リビングに置かれたライトブルーのベビーラック。
すやすやと眠る小さな男の子の赤ん坊。
 ユキとそっくりな栗色の毛と白い肌を持ち、永瀬にそっくりな瞳と鼻筋のラインを持つその子をクールで素敵と看護師に囁かれる永瀬とは思えないほど蕩けた表情で見つめていた。
「先生!いつまで和也と遊んでると遅れちゃいますよ!朝ごはんも途中じゃないですか」
 洗濯機から出したばかりの洗い立ての洗濯物がたっぷりと入ったランドリーバスケットを抱えてリビングを横切るユキに叱られて永瀬は苦笑いする。和也の柔らかなほっぺを突っついてから永瀬はコーヒーの残りを喉に流し込み、パンの欠片を飲み込むと食器をキッチンに運んだ。食洗機にシンクに置いてあったユキの朝食の皿と二人分入れてスイッチを押すと、和也の泣き声が聞こえて永瀬は急いで和也が寝ていたベビーラックの傍らに舞い戻る。
 ユキが週に二度ほど出産前に勤務していた小児科の外来を手伝いに行く日の朝は共働きの忙しい朝そのものだが、それさえも幸せで顔が綻んでしまう。
 泣いている和也のおむつを変えてやってもまだぐずぐずと泣くので、永瀬はその柔らかくて小さな体を抱き上げた。甘えん坊の和也は永瀬が抱っこしてやればすぐ泣き止むのに、それでも泣き止まない。これは……と思ってユキを呼ぶ。洗濯物を庭に干し終えたこともありパタパタと戻ってきたユキは永瀬から和也を慣れた手付きで受け取った。
「出勤前に授乳かな?と思ってたんでちょうどいいです」
とソファに座ると腕の中の和也に優しく笑いかけて、それから、シャツのボタンをぷつり、ぷつりと3つほど外す。
 それは聖母のように母性に満ちて美しい光景なのに、ほんの少し柔らかそうに膨れた愛らしい果実のような胸の先を出すと永瀬は少しばかり……いや、かなり邪な思いを持って眺めてしまう。赤ん坊の和也がぱくりと上手に口に含み、「んく、んく、」と一生懸命吸い付く様子も可愛らしい。
 向かい側のソファに座って悠然と一連の様を眺める永瀬に気付いて
「もう、先生……あんまり見ないで下さい」
とユキは頬を膨らます。
「全部、俺のものなんだ。幸せを噛み締めさせてくれ」
と永瀬が言うと、ユキは
「……恥ずかしいです……」
 小さく呟く。
「そ……それにもうすぐ時間ですよ、先生は準備いいんですか?」
 まるで永瀬にまで母のようであるユキに永瀬はくすくす笑いが止まらない。医局でもすっかり結婚してからは笑顔が多くなったと言われてなんだか面映ゆいが、幸せで笑ってしまうんだから仕方ない。
「あぁ、大丈夫だ。佳代さんが来てくれたらすぐに出られるよ」
 そう言って永瀬は膝の上に片肘をついて、授乳の様子を眺めている。平らだった胸が僅かに膨らんでいるのが何だかとても……
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